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「レゾリューションプラス」の割り切りとその効果本田雅一のTV Style

» 2008年09月21日 05時20分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 前回は、テレビからちょっと浮気をしてレコーダーの話をしたが、東芝が“REGZA”ブランドの液晶テレビ製品を一新したので、今回はこちらについて触れたい。

photo 新REGZAシリーズ

 内蔵HDDに記録した映像をイーサネット経由でVARDIAにダビングできるなど、相変わらずネットワークなど機能性に富んだ新REGZAだが、やはり注目点は“超解像処”理だろう。実はこの春に投入した「おまかせドンピシャ!高画質」も、よりチューニングが進んだ「おまかせドンピシャ高画質・プロ」に進化しており(決して名前だけ変えているわけではない)、個人的にはこちらの方が“家庭向けテレビとして重要”だと考えているが、東芝自身が強くアピールしているポイントは超解像処理である。

 東芝はドイツで開催された「IFA2008」(ベルリン国際コンシューマー・エレクトロニクス展)にCell搭載テレビの試作機を展示。9月30日に開幕する「CEATEC JAPAN 2008」では、さらに実用化に近付いた展示を行う予定だ。しかし、Cellテレビの市場への投入は来年。現行のパワーメタブレイン・プロの次の映像処理エンジンでCellを使うとみられる。

 Cellテレビでは、昨年のCEATECなどで展示した超解像処理を採用するとみられるが、これらを現行世代でソフトウェア処理することはできない。そこで東芝は、ソフトウェアで実行していた超解像処理を専用LSIで行うことにした。新REGZAシリーズに搭載された「レゾリューションプラス」は、このLSIを用いた機能である。

photophoto 「レゾリューションプラス」のためにメタブレインに追加されたLSI(左)。超解像技術のデモ。左は従来型のアップスケーリング、右がレゾリューションプラス

 “超解像”という言葉の定義に関してはいろいろな議論がある。量子化ノイズを取り除くことで、ノイズに埋もれていた情報を最大限に引き出し、エッジのスルーレートを上げることで情報量を上げて見せる方法。あるいは時間軸方向に複数枚の映像を参照して映像情報を増やす方法。あるいはその両方を組み合わせた方法などがある。

 レゾリューションプラスでの超解像処理は前者、つまり1枚のデジタル画像に含まれる情報を最大限に引き出して見せるというものだ。超解像技術の中では、もっとも処理が軽いものだが、実際にきれいに見えるかどうかは、処理パラメータの“あんばい”や細かな処理の工夫に依存するところが大きい。レゾリューションプラスは、Cellへの実装時に得られたノウハウを活用してLSI化した。

photophoto REGZAの発表会で展示されたCellテレビのデモ(左)。デジカメで撮影しても違いは分かる(右)

 なお、東芝の製品にはほかにも「VARDIA」に搭載した「XDE」「Qosmio G50」に搭載したSpursEngineといった類似する機能があるが、これらとレゾリューションプラスは全く別。SpursEngineの超解像処理は処理能力が不足する関係で十分な処理が行われてないように見える。またXDEは超解像処理ではなく、エッジエンハンスの一種といえるだろう。これらとレゾリューションプラスは異なるものだ。

 その処理方法などについては、別途、記事にする機会もあるかもしれないが、ここではその“結果”について話をしておきたい。

 まずレゾリューションプラスが最も効果的に効く映像ソースはデジタルハイビジョン放送になる。BSデジタル放送の一部を除き、デジタルハイビジョン放送は横方向の解像度が1440ピクセルしかない。これらの映像は若干あまく、情報量も減って見える。これを横1920ピクセル相当まで高めることで、フルHDパネルの良さを引きだそうというのが、レゾリューションプラスの狙いだ。

 なお、DVDなど標準解像度の映像には超解像処理は直接行われない。これらは一度1440×1080ピクセルにコンバートされてから、レゾリューションプラスが働くようになっている。1440×1080ピクセルへのコンバートは、メタブレインによる通常のアップコンバート処理となる。DVDからの超解像を期待していた向きは、やや残念かもしれない。しかし、個人的にはこの割り切り(地上デジタル放送にフォーカスをあてたチューニング)は悪くないと思っている。

 われわれが普段見ているテレビ放送、あるいはそれらの録画映像などは、その大半が横1440ピクセルだ。ならば、標準解像度の映像を無理にフルHD化して微妙な結果となるよりも、もっとも見る頻度の高い映像を美しくする方が利益を得るユーザーは多い。もちろん、これがDVDプレーヤーならば、標準解像度からフルHDへの超解像処理に挑戦すべきだろうが、REGZAはあくまでも“テレビ”である。テレビ放送画質に特化するというのも1つの見識だ。

 ということで1440ピクセルの放送に対するレゾリューションプラスの効果だが、かなり効果的だ。解像度の割増分が少ないため、パッと見にはちょっとシャープネスが上がっただけのように見えるかもしれないが、よく見るとS/Nの悪化なく情報量が増え、エッジもシャープになっているのが分かる。どこか曇りを感じる1440ピクセルの映像が、クリアで見通しの良い映像になる。

 新REGZAにはレゾリューションプラスの有無による画質差を体験できるデモモードが備わっているので、その効果のほどを自分の目で確かめてほしい。

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東芝 | REGZA | Cell | VARDIA | 地上デジタル放送 | SpursEngine | CEATEC


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