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「プロフ」の何が問題か小寺信良の現象試考(2/3 ページ)

» 2008年10月15日 08時30分 公開
[小寺信良,ITmedia]

出すものが自分しかない年齢

 プロフとよく比較されるサービスがSNSだ。プロフィールを入力することで個人のページが持てるという点では似ているが、大きく異なるのは、SNSが会員のみで一般には非公開であることに対し、プロフはブログなどと同様、公開サイトであるということだ。そのプロフに入会しなくても、プロフサイトのトップページからキーワード検索やタグをたどって個人のプロフまでたどり着ける。多くの大人が「出会い系」を心配するのは、この点である。

 さらにプロフの問題を加速させる要素の1つに、「ネタ」があるように思う。プロフにもアクセスカウンターがあり、ゲストブックもある。中にはアクセス数に応じてポイントを付加するサービスもあるようだ。もちろんそもそもは自己紹介するために作るモノなので、多くの人に見られたいという自己顕示欲があって当然である。

 SNSでもブログでも、多くの人に見られたいという思いは変わらないとは思うが、人を集めるコンテンツの内容が違う。SNSやブログで多くの人を集めるのは、面白いネタが書ける人である。面白いことを書くには文章力も必要だし、そもそもモノを多く知らなければ、さまざまなテーマについて語れない。日記ひとつでも、その人の経験や知識、人生観がにじみ出るからこそ、個性が立ち、面白いわけである。

 しかし中高生にはそれらの人生経験が圧倒的に少ないし、文章力も怪しい。そもそもプロフには、日記機能のようなものもない。では人を集めるにはどうするか。それは体を張って自己をギリギリまで露出するしかない、ということになるわけである。ここで男女の差が出てくる。

 女の子の場合、顔出しぐらいは特に違法とは言えないが、下着姿や裸の写真を自分で撮ってアップするとなると、親としてはいい顔はできない。バカな大人が大挙して押しかけてくることになり、ゲストブックで根掘り葉掘り、個人情報が引き出されることになる。例えば「モバゲータウン」のように、年間数億円の資金を投入して書き込みの監視を行なっているようなサイトは別だが、多くのプロフサイトはそのような自主取り組みを行なう体制になっていない。

 男の子で困るのが、勇気を示すことの意味を勘違いして、社会的あるいは道徳的に問題のある写真をアップすることである。制服、顔出しでたばこを吸っている写真、チューハイを飲んでいる写真などがアップされると、当然それを学校側に通報する者が出てくる。学校側としては写真が公開されているとなると、なんらかの対応をしなければならなくなる。

 プロフの問題で難しいのは、ここで妙な逆転現象が起きることである。仮に先生がトイレでたばこ吸っている生徒を現行犯で見つけた場合、まあ今どきゲンコツをくらわす先生などはいないだろうが、厳重注意にとどめるなどその場で穏便に済ませるといった、先生の裁量の中での処分が可能である。しかしプロフで写真が公開され、すでにそれを同校の生徒が多く見ているとなると、重い処分をしなければならなくなる。

 ここで実際には、ネジレが起こっている可能性がある。たばこを吸っているところを現行犯で抑えたならば、もう間違いなく違法と言える。だが写真の場合は、もしかしたら吸っているフリをしただけかもしれない。事実か事実でないかは、本人の申告でしか分からない。ところが「そのような写真を掲載した」という違法性が問えるか微妙なことで、本当にたばこを吸った生徒よりも重い処分にせざるを得なくなるわけである。

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