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自社パネルはなくても――日立製作所が見いだした方向性本田雅一のTV Style

» 2008年10月27日 11時16分 公開
[本田雅一,ITmedia]
photo 「Wooo」のプラズマ「02」シリーズ

 プラズマテレビの普及黎明(れいめい)期、日立製作所は「Wooo」という新しいブランドを掲げて大躍進した。しかし、その後の液晶テレビの隆盛や他社の画質面での大きな進歩など、さまざまな要因から自社製ディスプレイパネルの生産事業から徐々に撤退した。今年9月末、プラズマパネルの生産から撤退し、パナソニック製パネルを調達することが発表され、自社パネルを持たないテレビメーカーとなった(→日立、プラズマパネル生産から撤退、松下から調達)。

 しかし、必ずしも自社製パネルを持たないことが悪いということではない。また、日立製作所は当面、既存製品に関しても販売を続け、また業務用途ではプラズマパネルの生産を続けるから、必ずしも完全撤退というわけではないようだ。基幹部品を他社依存する不安定さは若干あるかもしれないが、その時点でベストなパネルを選択できるという利点もある。

 反面、プラズマパネルは画質設計を行う上でパネル駆動部の役割は大きい。パネルとそれを駆動するLSI(ドライバー)は一緒に設計しなければ高画質化を行えない。パナソニックのパネルを採用するようになれば、パナソニックのLSIを用いてテレビを設計する必要があるだろう。もちろん、パナソニックの設計するパネルに合わせて、日立製作所が独自にドライバーも開発するという可能性もゼロではないが、現実には非常に難しい。

 どのようなスタイルで開発を進めるのか、まださまざまな可能性を模索している段階のようだ。しかし、今年年末の同社製テレビを見ると、1つの方向性は見いだしはじめているように思う。

 日立製作所は昨年末から今年春にかけて、他社に先駆けて超薄型デザインの「UTシリーズ」へと軸足を移した。機能面でも、新しい提案として提供していた内蔵HDDに加え、インターネット対応という切り口を今年春に加えて訴求している。

photo 「ビデオ de メール」

 PC上で動作する専用アプリケーションを使う必要があった「ビデオ de メール」も、携帯電話で撮影した写真を受信する機能が加わったことで、より手軽に幅広いユーザーが使いこなせるようになった。加えて12月には「アクトビラ」のダウンロード型映像配信サービスに対応するアップデートも一部機種で実施される。

 もともとインターネットを用いた映像配信は、売り切りのパッケージメディアの置き換えではなく、レンタルの置き換えと目されていたから、“ブロードバンドインターネットへにテレビを接続してもらう”という、一番やっかいな障害さえ乗り越えれば、レンタル代わりに利用してくれる人も徐々に増加してくるのではないだろうか。今のところアクトビラビデオダウンロードに対応しているのはパナソニックの「DIGA」シリーズのみで、テレビでは「Wooo」シリーズが初となる。

photo 写真は「UT47-XP770B」。ホワイトボディーの「UT47-XP770W」もラインアップされている

 またこの年末向けに発売された47V型液晶テレビの「UT47-XP770」を試聴したところ、同じUT 770シリーズでもこの春に発売された37V型より、画質面でずっと自然な階調・彩度感にチューニングされるなど、なかり好ましい映像を見ることができた。とくに映画用の「シネマティック」の完成度が高まっている。同様の画質改善は、UT 700シリーズの47V型でも実施されている(47V型以外は従来通り)

 日立は従来から映像の内容を分析し、動的なガンマカーブの制御を行う処理を導入してきた。これまでは輝度分布をヒストグラムで見て制御していたが、新たに平均輝度レベルも参照し、階調の配分を行うよう判断の基準と制御の考え方を変更したという。具体的には、平均輝度レベルから階調の割り振りを可変させるプラズマパネルの制御手法を、考え方として液晶テレビにも持ち込んだ。

 その結果、明るいシーンでも暗いシーンでも、必要な部分に階調が割り振られて表現力が上がっている。UTシリーズの47V型は、45V型以上では珍しくなったIPS液晶パネルを採用したモデルであり、コントラストはハッキリいって現在主流のVA型(シャープ、ソニーなど)より低い。そのため上記のような工夫をしないと見えるものも見えてこないのだが、反面、うまく見せてくれさえすれば、視野角が圧倒的に広いという良さが生きてくる。

 さすがに部屋を暗くすると黒浮きは目立ってしまうが、絵作りは巧妙でナチュラル。視野角の広さは家族で見るテレビにピッタリだ。LEDの局所制御も、派手な売り文句もないモデルではあるが、薄型のデザインとマジメな絵作りの47V型は安心して勧められる製品に仕上がっている。

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