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新たな高音質CD、「Blu-spec CD」を聴き比べるお勧めタイトルも紹介(2/2 ページ)

» 2008年11月20日 16時19分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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実際のサウンドをチェック

 さて、論より証拠、実際のサウンドをチェックしよう。

photo 今回技術説明&試聴スペースとして提供されたのがSME乃木坂スタジオのレコーディングルーム

 今回の試聴は、SMEがデモンストレーションを行ったレコーディングスタジオ(SACDプレーヤー「SCD-XA777ES」、モニタースピーカーはTEC:ton「TTH-1s」)のほか、提供してもらったBlu-spec CDとマスター音源が同じ通常版CDがセットとなったサンプル盤を、自宅のオーディオシステム(ユニバーサルプレーヤーとしてデノン「DVD-A11」、パワーアンプはヤマハ「101M」、スピーカーにTAD「TD-4001」+「Tl-1601B」)とPCによるヘッドフォン再生(ソニーのMDR-CD1700)で試聴。両者の音質的な違いをチェックするとともに、再生環境によってどのような音質的変化が感じられるかも確認した。

 まず全体的な印象をいうと、一聴して音量レベルと音数の多さが向上しているのがすぐ分かる。通常版CDでは荒さの感じられた録音も、Blu-spec CDでは細やかな音にまで目がいくようになるため、勢いのある演奏として聴こえるようになったから面白い。さらに顕著なのが低音のボリューム感で、バスドラやベースの音などはアタックをさらに強調しつつ、付帯音もしっかり再生されるようになるため、印象的でリズム感の良い演奏となる。

 また絶対的な音量レベルが上がったことに連動して階調表現も豊かになり、細やかなニュアンスも伝わってくるようになった。例えば五嶋みどりはバイオリンのサウンドフォーカスが途中ころころと変化するのだが、それがBlu-spec CDでは彼女の向き、演奏中に体が揺れているために録音したホールの反響音が大きくなったり小さくなったりしていたことが分かるようになる。

 いっぽうでピアノのニュアンスが向上している点も特筆したい。微妙なタッチの変化から録音の質、ピアノメーカーの違いまで手に取るように分かるようになり、演奏者の感情がより強く伝わってくるため、さらに音楽に没頭できる。

 音数が多くなったことは、空間表現の正確さにも寄与している。リバーブやエコー要素などがよく聞き取れるようになったため、一部の曲では録音の行われたスタジオやライブ会場の広さまで感じられる。曲によっては、録音現場に自分がいるかのようだ。こういう音楽を身近に感じられるサウンドは、音楽好きとしてはうれしい限りだ。

 ただし、楽曲によっては思わぬ弱点も露見する。それは現在多用されている多重録音、パートごとに演奏を録音する形式に限ってのことだが、楽器によって録音している場所やクオリティーが変わると、その音質的な差をストレートに表現してしまうのだ。いままではマスター音源からCDになる際にクオリティーダウンしていたため、それがある程度の“なじみ効果”を生み出していたのだが、そういった変化が限りなく押さえ込まれたために、違和感を感じてしまう曲が生まれてしまっている。

 このあたりは、アルバム制作者側、とくにエンジニアにとっては怖い話となるだろうが、音楽CDは制作時のアラも含めて作品として愛でられるのも事実。ヴォーカルのニュアンスなどは明らかに良くなっているので、録音が一発か多重かはあまり気にせず、好きなミュージシャンを自由に選ぶのが得策だろう。

 いっぽうオーディオシステムの差によるクオリティーの変化はどうだったかというと、ほかの高音質CDと同様に、PCなどチープなシステムのほうが両者の差を感じやすいのは確か。しかしSHM-CDのようにあからさまな変化はなく、レコーディングスタジオのシステムや自宅のオーディオシステムでも十二分にその差を感じ取ることができた。どの環境でも、誰が聴いてもBlu-spec CDが優位であるのは、幅広いユーザーに勧められるという意味で大きなアドバンテージとなるだろう。

 確実に音質が向上するBlu-spec CDだが、せっかくなので今回サンプル盤に収められていた10曲を参考に、お薦めできそうなアルバムをピックアップしてみた。以下に紹介するタイトルは、Blu-spec CDとなることで音質向上はもちろん、音楽表現まで豊かになるので、是非とも購入をお勧めしたいものばかりだ。

マイルス・デイビス/カインド・オブ・ブルー

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SICP-20001 2500円

ピアノ、管楽器、ドラムのハイハットなど、すべてのパートにおいてBlu-spec CDのアドバンテージが感じられる1枚。CDでここまでの音を楽しませてくれれば充分納得できる


五嶋みどり/アンコール!

SICC-20016 2500円

ヴァイオリンやピアノの細やかなニュアンスまで明瞭(めいりょう)に伝わってくるようになり、まるで目の前で演奏してくれているかのよう。ファンとしては是非手に入れてほしい逸品だ


サイモン & ガーファンクル/卒業

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SICP-20022 2500円

彼らのウィスパーボイスが、遜色(そんしょく)なく存分に楽しめるアルバム。また、同じくサイモン & ガーファンクルの「明日に架ける橋」は、1990年代に発売された名盤と呼ばれるベストアルバムよりも数段上のクオリティーを持ち合わせていた


ボブ・ディラン/追憶のハイウェイ61

SICP-20024 2500円

これまで荒々しさばかり目立っていた演奏が、Blu-spec CDのハイスペックによって勢いのあるサウンドへと昇華。ボブ・ディランの真骨頂をより強く感じられる1枚


ビリー・ジョエル/ニューヨーク52番街

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SICP-20033 2500円

今回のサンプル盤には収められていなかったため残念ながら未試聴だが、期待したいアルバムの1つがこれ。アナログレコードで録音の素性の良さは充分感じているので、Blu-spec CD版には大いに期待したい


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