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「超小型プロジェクタ」――小は大を兼ねるか?デジモノ家電を読み解くキーワード

» 2008年12月11日 18時56分 公開
[海上忍,ITmedia]

 なんらかのパネルに連続して画像を書き込み、それを大型スクリーンに投影することがプロジェクターの基本的なしくみ。その動作方式は、CRTの蛍光面映像をレンズを用いて拡大し投影する「CRT方式」と、光源から届く光の入射角を振り分けることで投影する「ライトバルブ方式」の2系統に大別される。

 さらに、投影デバイスの種類によって「液晶」「DLP」「LCOS」などの方式に分類されるが、近年急速に採用事例を増やしているのがDLPだ。Texas Insturuments(TI)が開発した、数十万から百数十万もの極小のミラーを敷き詰めた光半導体「DMD」(Digital Micromirror Device)を採用、ワンチップでプロジェクタとしての機能を提供する(光をRGBに分ける3チップ型もある)。コンパクトなうえ製造コストを低く抑えられることから、ここ数年の一般家庭向けプロジェクタにおける主流となっている。

超小型を実現した「DLP Pico」

 DMDを採用したプロジェクタはボディを小さく設計できるが、それでもB5版か弁当箱かといったサイズ。「DLP Pico」は、その限界を打ち破るべくTIが開発した新DLPチップセットだ。

photo DLP Picoチップセットを用いた超小型プロジェクタの利用イメージ

 指先程度の大きさのDLP Picoは、イメージングチップとプロセッサの組み合わせで構成される。92%以上の開口率と高い解像度を備え、高いコンストラスト比を実現するほか、光源次第では色域はさらに広くなる。Optomaの「pocket projector PK101」など、小型DLPプロジェクター登場の流れを加速させる存在だといえる。

まだまだ小さくなる?

 超小型プロジェクタはpocket projector PK101だけではない。海連からは「プロジェクタ X Pro920M」、住友スリーエムからは「MPro110」、アドテックからは「AD-MP15AW/AB」などが販売あるいは販売予定されており、こうした小型化のトレンドは、今後も続きそうだ。

photophoto 「pocket projector PK101」(写真=左)、「MPro110」(写真=右)

 9月に開催された「CEATEC JAPAN 2008」では、日本信号がたばこ箱サイズの試作機を展示していた。微小な電子部品を用いたMEMSミラーにより実現されたこのプロジェクタ、製品化される際にはマッチ箱程度にまで小型化される予定だという。こうなると、家庭で映画を楽しむという従来的な用途ではなく、ノートPCや携帯電話などに組み込まれ、外出先で使える“ポータブルディスプレイ”として使われることが増えるのかもしれない。

執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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