コラム

小寺信良の現象試考:「ケータイ持たせない論」に見る大人教育の困難 (1/3)

「学校への携帯持ち込み禁止」が話題となったが、禁止か許可かだけの議論は意味を持たない。見当違いの議論をする前に、やらなければならないことは山積している。

 総務省が行なっている「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」が、最終取りまとめに入った。12月17日までパブリックコメントを募集している。

 地方自治体の取り組みなどはまだ把握できていないが、行政と企業の取り組みという点では網羅性が高く、良くまとまっていると言えるだろう。これから違法有害関係の取り組みを行なう部署にいる人などには、いい資料となるはずだ。

 ただ、これからの具体的な取り組み策がここに書かれているわけではない。個別の取り組みは、これから民間ベースで具体化していかなければならない問題である。

 個人的にはこれまでどおり、規制よりも先に教育があるべきという考え方に揺らぎはないが、実際に教育へ着手してみると、いろいろなことが分かってきた。MIAUとして学校教材としてのリテラシー読本「”ネット”と上手く付き合うために」を作成したが(リンク先PDF)、これは当初、親に向けた内容になるはずだった。しかし学校で子供たちの実態をヒアリングしていく課程で、学校での教育がまず先に困っているという現状が分かった。

 具体的にはまず、情報教育のカリキュラムが古すぎるということ、そして問題に対しての対処を求められるのが、常に学校であるということである。

 実際に学校に出向いて授業をやって分かったことは、現在の学校教育のスタイルは、我々の行なった出張授業のような「パッケージ型教育コンテンツ」が入れ込みやすいということである。子供たちの学習能力にはばらつきがあるが、教育システムはレベルの高い子にも低い子にも、一定レベルの情報をインプットし、一定のアウトプットを求めることで習熟度を測る。「みんなが知っておくべきこと」を一元的に教えるには、便利な仕組みだ。

 学校教育に関しては、制度やシステムで対応できる。しかし親に対しての啓発で、このような手法は通用しない。大人を教育するということは、次元の違う話であることを実感させられる動向が目に付くようになってきている。

持たせない選択の落とし穴

 そもそも「親」という集団には、特徴的な属性がほとんど存在しない。唯一の共通項は「子供を学校にやっている」というだけであり、職業、年収、家族構成などがバラバラで、教育方針すらも微妙に(最近は大きく)異なる場合が多い。それらの集合体に対して、一元的に何かを教えるというようなことは、非常に難しい。

 唯一のよりどころは、学校をハブとした地域性である。県、市、町と単位を小さくしていくことで、現状把握が可能になる。例えば県単位や市町村単位で存在する「青少年健全育成条例」は、その地域において成立したコンセンサス内で、子供の育成を図るための取り決めを独自に決めることができるわけである。

 青少年健全育成条例の限界は、対象が人の目に触れる「物理物」しか制御できないということだ。例えばエロ本の販売規制やゾーニング、子供の深夜徘徊といったことは制御可能でも、ケータイやパソコン内で行なわれるネットの情報までは、大人や店舗が協力しようにも、やりようがない。協力を求める対象が全然違うわけである。

 しかし、これも物理物規制でやってのけようとする動きも出てきている。顕著な例は、携帯電話を子供に持たせないという動きだ。いくつかの町村単位でこの方針を打ち出したところもあり、政府の教育再生懇談会も同様の見解を発表している。これは、情報端末という物理物を制御することで、情報をも制御しようとする例である。

 持たせない活動としては、特定地区など小規模なエリアでは実行可能であろう。少なくとも、「隣近所同じ学校子供はみんな持ってない」という状況であれば、誰も欲しがらなくなる。ある意味、おもちゃと一緒である。

 この方策には、悩ましい点が多い。確かに携帯にはおもちゃ的な要素もあるが、おもちゃだとしても与えない方がいいのか、昔ながらにブランコや縄跳びで遊んでいる方がいいのか、というところが気になる。物心ついた頃からすでに手元に情報機器があって、その経験が人の繋がり方や発想、能力、可能性を広げていくということも考えられるわけだが、不所持規制は、子供たちにそっちの未来への選択権を与えないことになりはしないのか。そこが心配である。

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