以上の検証で明らかなように、FIRECODER Bluは圧倒的なMPEG/H.264変換の速さとアップコンバートの美しさが強烈な魅力を放っており、SpursEngineの威力を簡単かつ十分に体感できる。
ただし、完成度に不満を覚える部分もある。例えば、読み込んだ素材のプレビュー再生ができないのは惜しい。SpursEngineは1ストリームしか受け取れない仕様のため、EDIUSシリーズでのリアルタイムプレビューに利用できないのは納得できるとしても、専用変換ソフトでならプレビュー再生に利用できたのではないかと期待してしまう。
付属ソフトがシンプルなFIRECODER WRITERだけに限られる点も評価が分かれるに違いない。今回試したFIRECODER WRITERのVer.1.01では、アスペクト比16:9のHD素材をDVD-Videoでディスク保存すると、アスペクト比4:3にスクイーズされてしまう現象が発生した。これだけでも早期のアップデートで解消してもらいたいところだ。
FIRECODER Bluの利点はSpursEngineに依存しているので、少なくとも現時点では独自の特徴を見出しにくいのも事実。特に「AVCHDビデオカメラの素材をいくらかでも編集しやすいMPEG-2に変換しておくために使う製品」ととらえると、ライバル製品との機能面での差がなくなってしまうので、2万円ほども高価な本製品はがぜん分が悪くなる。
こうして考えると、FIRECODER Bluがライバル製品に差を付けるには、トムソン・カノープス製品ならではの機能を追加することが必須といえるが、この点に関しては同社も把握しているようで、早々に手を打ってきた。発売当初の不満はSpursEngine対応のアプリケーションがFIRECODER WRITERだけに限られていたことだったが、12月12日にEDIUSシリーズ用動画変換ソフトの最新版「Canopus AVCHD converter Ver.3.00」が公開され、SpursEngineがサポートされたのだ。
これにより、AVCHDからCanopus HQへの変換にSpursEngineが利用可能となったのは大きな意味を持つ。トムソン・カノープスから発売されるカードと聞けば、EDIUSシリーズとの連携を真っ先に想像するだけに、HD映像を高画質かつ低負荷で編集できるCanopus HQへの高速変換を実現したのは、ライバル機に対するアドバンテージになるはずだ(ちなみに、WinFast PxVC1100はCanopus AVCHD converter Ver.3.00で認識されなかった)。幸い、Canopus AVCHD converter Ver.3.00はプロ向けのEDIUS Pro 5だけでなく、個人向けの「EDIUS Neo」や「エディウスJ」にも対応している。
現状ではEDIUSのタイムラインを直接出力するのにSpursEngineは使えないが、春ごろを目安にEDIUS Pro 5本体のSpursEngine対応も予定しているそうなので、今後もトムソン・カノープス製品ならではの連携機能の強化に期待したい。それによって、FIRECODER Bluに対する最終的な評価はより高まっていく可能性があるだろう。
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