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今年の薄型テレビを占う4つのキーワード2009 Internatiomnal CES

» 2009年01月11日 20時18分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 今年も「Internatiomnal CES」の展示会場には多くの薄型テレビが集った。数年前の「世界最大」が乱立するような状況ではなくなり、東芝のCell TVやビクターのコンセプトモデルに見られるように、メーカーは冷静にそれぞれの方向性を模索しているようだ。ただし、各社の新製品やコンセプトモデルを取材していると、いくつかの傾向は見えてくる。

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LEDバックライト

 LEDバックライトと部分制御は、液晶テレビにとっていくつもの恩恵をもたらす。例えば部分的にバックライトを消灯することで黒浮きを防ぎ、コントラストを飛躍的に向上させる。色域を拡大し、倍速駆動などと組み合わせれば動画表示性能もアップ。省エネや省スペース性といったメリットもある。

 すでにソニーとシャープがLEDバックライト搭載の薄型テレビを発売しているが、今回のCESでは東芝が北米向けモデルながらも搭載製品を発表。またパナソニックは「Neo LCD Eco」という名称で新型のIPS αパネルとLEDバックライトを組み合わせた次世代液晶パネルを展示した。

photophoto Neo LCD Ecoでは、テレビ用に特化した新型IPS αパネルと独自の駆動システム、LEDバックライトを組み合わせ、apdcの動画解像度で1000TV本という、従来のフルハイビジョンPDPを超える動画表示性能を実現する。右は「Neo LCD Eco」と従来の倍速駆動液晶パネルを比較した動画表示のデモ。違いは明らかだ

 海外メーカーでもLG電子やサムスン(→LEDバックライトに本腰を入れるSamsung)がLEDバックライト搭載の液晶テレビを展示しており、広がりが期待できるLEDバックライト。そしてもう1つ、2009年の傾向として見逃せないのが白色LEDを使ったバックライトだ。

 ソニーやシャープはRGBのLEDを制御して色域の拡大も合わせて訴求しているが、一方で色ごとの寿命の違いを吸収する制御機構を別途設けなければならないなど、LEDの価格と合わせてコストを押し上げる要因になっている。そうした仕組みが不要になり、色域拡大以外のメリットはほとんど享受できる白色LEDはハイエンド機以外にもLEDバックライトを浸透させる起爆剤になり得るだろう。事実、東芝が発表したs北米モデル(→LEDバックライトに240Hz駆動、東芝が北米向け「REGZA」ラインアップを発表)やサムスン製品は白色LEDを採用している。

photophoto 「REGZA」北米モデルのハイエンドシリーズ「SV670」(左)。ドルビーのエリア制御技術「Dolby Vision」も白色LEDを前提とした技術。同社ブースには仏メーカーと共同開発した試作機を展示していた(右)

壁かけ/壁はり

 パネルの薄型化は、今回のCESでもっとも目を引いたトピックかもしれない。パナソニックは「Neo PDP」技術を導入した厚さ24.7ミリの「Z1」シリーズを北米市場に投入。国内販売も期待されるところだが、一方でパイオニアの技術を導入して厚さ8.8ミリを実現した次世代PDP「Neo PDP Eco」を披露した(→パナソニック、厚さ8.8ミリの新世代プラズマを披露)。

photophoto Neo PDP Ecoは、残光の少ない蛍光体や新しい駆動方式、動き適応型ベクトル予測技術などの採用によって、最薄部で8.8ミリという超薄型化と高効率化を実現した。また動画解像度が指標の上限となる1080TV本

 JVCは、32V型で最薄部約7ミリ/重量5キログラムという液晶モニター(チューナーレス)のプロトタイプを発表し、磁石の力で壁にはりつけるデモンストレーションを披露(→磁石で壁にはりつきます、ビクターの“世界最軽量”32V型液晶モニター)。ここまでくると“壁掛け”というよりは“壁はり”だ。

 テレビの壁はりは、パネルの薄型化はもちろん、“排熱処理”という技術が伴わなければ実現しない。一方、薄型化で他社に先行していた日立製作所が昨年の「CEATEC JAPAN」と同じ展示内容だったことが残念だ。

photophoto 日立ブースのテレビ関連展示は、北米モデルとCEATEC JAPANで展示されたプロトタイプのみ。なお、同社によるとPDPに関しては次期モデルからパナソニックパネルを採用するとのことで、その味付けに期待したい(左)。LG電子も15型有機ELの薄さを生かしてガラス壁に貼った状態の展示を行っていた(右)

エコロジー

 省エネに関する展示は、さまざまなブースで行われている。パナソニックは、発光効率が3倍になった「Neo PDP Eco」により、「同じ輝度なら消費電力は3分の1になる」とアピール。また東芝ブースでも昨年末の「エコプロダクツ2008」に展示した低消費電力テレビ(プロトタイプ)の北米版を参考出展していた。

photophoto 「Neo PDP Eco」と従来型の消費電力比較。画面によって上下するが、おおむね30%台だった(左)。ソニーBRAVIA「VE5シリーズ」(右)

 ただし、すでに製品化が決まっているという点で、ソニーのBRAVIA「VE5シリーズ」が最もインパクトが強かった。VEシリーズでは、バックライト用のHCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp:熱陰極管)を新開発し、約40%の消費電力を削減。また人の動きを検知して、時間が経過すると自動的に電源を切る「Presense Sensor」や、待機電力を0ワットにする「Eco Switch」もユニークだ。照明スイッチのような形状が、“つけっぱなしは、もったいない”という気にさせてくれそう(ただし国内販売は未定)。

photo LG電子も「Green PDP」と題して省電力PDPを紹介していたが、ワットメーターの数値は国内メーカーに比べて少々見劣りする

ワイヤレス

 ディスプレイとチューナーを別体にして、その間をワイヤレスにしたテレビは日立製作所や三菱電機、ソニーなどが既にラインアップしているが、2009年は他社にも大きく広がりそうだ。

 その要因は、1080pを非圧縮伝送できる「Wireless HD」の離陸。今回のCESでは、パナソニックがNeo PDP採用の北米向けモデル「Z1」シリーズに初めて採用したほか、東芝も「Cell TV」でディスプレイとCell Box(チューナー部)の間をWireless HDでワイヤレス化することを表明している。また日本ビクターもプライベートブースでワイヤレス接続のプロトタイプを展示した。今年はワイヤレス化が大きく広がりそうだ。

photophoto パナソニック「Z1」のデモ(左)と東芝ブースの参考展示。東芝では受信機の改良により、2リンクを可能にしていた。つまりDVDプレーヤーなどのソース機器が2台ある場合でも1つの受信機で切替が可能になっている

 このほかのトピックとしては、別記事で取り上げたネットワーク機能の本格化(→「テレビでネット」本格普及へ)、東芝などが採用したHDMI接続を高速化する「InstaPort」なども挙げておきたい(→HDMIの“切替”を速くする「InstaPort」とは?)。

 さらに今年のCESでは、2010年に向けてパナソニックやソニーが強力に推進する“3D対応テレビ”という新しい潮流も見えてきた(→“3D”に向けて本格始動するテレビ業界)。薄型テレビの進化に終わりは見えない。

関連キーワード

プラズマ | CES | Cell | Neo PDP | BRAVIA | 参考出展 | エコロジー


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