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IPTVやコンテンツダウンロードはBDのライバルではなく仲間 〜ディズニースタジオ上席副社長インタビュー2009 International CES(1/2 ページ)

» 2009年01月13日 13時28分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 昨年末のブラックフライデーを境に急激に売れ始めたという、北米でのBlu-ray Discソフト。既報のように10月に200万本だった売り上げは11月に300万本超、12月には800万本超と急成長している。もちろん、“売れる季節だから”ということも背景にあるが、その動きはどの業界関係者の目にも急峻(きゅうしゅん)なものと映ったようだ。

 Walt Disney Studios Home Entertainment(以下、ディズニースタジオ)の上席副社長でワールドワイドのマーケティングを担当するゴードン・ホー氏に話を聞いた。同氏はディズニースタジオに17年以上在籍し、VHS版「白雪姫」をはじめ、各種メディアにおける家庭向けコンテンツのマーケティングに携わってきた人物だ。

photo ゴードン・ホー氏

――2008年を振り返るとビジネスは、どのようなものでしたか?

ホー氏:すでにBDAの発表でも明らかになっていますが、年末のブラックフライデー以降、価格が下がったこともあり、急にせきを切ったようにソフトウェアの売り上げが伸びました。もっとも売れたディズニーのタイトルは、ホリデーシーズン向けに発売した「WALL.E」(ウォーリー)でした。

――WALL.Eでは、DVDとBDの比率はどの程度だったのでしょう

ホー氏:現時点の数字は分かりませんが、昨年末に限ってみると50%ぐらいがBDという感覚です。もちろん、これはタイトルにもよりますし、地域性もありますが、BDへのシフトが進み始めているという実感はありますね。

 その理由ですが、DVDよりもBDの方がメディアとして優れていると認知が広がってきているからだと考えています。今後もさらにユーザーの認知を拡げるため、DVDとBDを1つのパッケージにした商品を用意していきます。例えば米国で発売している「ティンカー・ベル」もそうですし、発売が近い「ピノキオ」や、その次に発売を計画している「白雪姫」も同じです。2枚のディスクを、例えばリビングではBDで見て、車の中ではDVDでと使い分けることができます。米国では車の中で子どもたちにおとなしくしてもらうために、DVDなどの映像ソフトを使うことが多いので、リビングと車の中にディズニーの人気タイトルが置いてあるというケースがとても多いのです。

――今年はどのようなタイトルが目玉になるでしょう?

ホー氏:新作についてはまだ発表できないのですが、既存ライブラリーの中からは「バグズライフ」と「モンスターズインク」のBD化を行う予定です。

――直近では「ピノキオ」の修復がすばらしく良いという噂を聞いています。「眠れる森の美女」は確かに良かったのですが、ファンは期待していいでしょうか?

ホー氏:大いに期待してください。今週、最終版のピノキオの映像をチェックしましたが、ものすごく良くなっていました。最新のスキャナーで高解像度の映像としてスキャンし、デジタル技術による修復を行っています。ゴミを取り、色むらや汚れを補正し、カラーバランスを整え、オリジナル映像の雰囲気を再現しています。

――デジタル修復はローリー・デジタルなど専門の会社がありますが、ディズニーもそうした独立系の修復業者と作業をしているのでしょうか?

ホー氏:われわれは過去のすばらしい資産を多く持っています。このため、社内に修復専門のチームがあり、歴史的に重要なフィルムの復元を行っています。フィルムの保管に関しても、一定の環境下で保管を続けてきました。現在、複数のプロジェクトを同時に動かしながら、時間をかけて丁寧に修復をしています。この様子は取材ができると思いますので、担当に私のほうから連絡しておきましょう。

――ディズニーはインタラクティブ機能をとても重視していますが、日本の映画ファンは映像ソフトには機能をあまり求めていないようです。米国市場との違いはどこにあるのでしょう?

ホー氏:北米でもBDソフトに一番重要なのは、画質と音質です。これを最大限に高めることが、まずは重要なことです。まずもとになる映像ソースの質が大切です。質の高い映像マスターを用意し、それを時間をかけてエンコード。最大ビットレートを高く保てるよう配慮する。おかげさまで、ディズニーのBDは高画質だという評価をいただいているので、その評価を守るためにも、品質の高いソフトを作っていきます。ですから、インタラクティブが最優先というわけではありません。

 しかし、別の面でインタラクティブ機能は重要です。多くの人は、映画コンテンツそのものを楽しむためにBDを購入します。好きな映像ならば、何度でも見てくれるでしょう。でも、好きな映画であるほど、何度も見るほど、いろいろな疑問が出てきます。どうやって撮影したんだろう。このシーンの意図はなんなんだろう。そこで、子どもたちにも楽しめるゲームを通じ、コンテンツの中身をさらに深く知ったり、新しく得たトリビアをもとにさらに楽しめる要素を盛り込んだり、といった機能が必要になります。

 インタラクティブ機能は、映像ファンがより深くそのタイトルを楽しむために使うもので、高画質とは異なるアスペクトです。せっかく購入していただけたタイトルを、何度も再生して楽しんでもらうためにとても重要なことなんです。

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