「2009 International CES」開幕直前の1月7日、HDMI Lisencing,LLCから次世代HDMI規格の方向性に関するニュースリリースが出た。4K2Kや3Dへの対応を目指してHDMIの伝送速度を向上させるほか、イーサネットのハイスピードデータ伝送を可能にするといった新機能も盛りこまれるという(次世代HDMI規格が今年前半に登場、4K2Kや3Dに対応へ)。
このうち伝送速度の向上については、大方の予想通りだろう。4K2Kディスプレイや3Dパッケージソフトの展開が見えてきた今、インタフェースとなるHDMIのアップデートは必須だ。4K2KモニターにはフルHDの4倍もの情報量が必要となり、仮に4K2Kディスプレイでプログレッシブの3Dコンテンツを楽しもうと思えば、現在の8倍もの帯域が必要になってしまう(4倍×両目用)。問題は、まだ市場にない3Dや4K2Kテレビ(一部除く)に対して、現時点でどこまでコミットするかだろう。
一方、意外な印象を受けるのはネットワーキング機能かもしれない。これは、一般的なイーサネットケーブルや無線LANと同様、物理ネットワークとしてHDMIを活用するというもの。例えばテレビの“壁掛け”が一般化したとき、映像とネットワークのために2つのワイヤレス機能を内蔵するのはコスト高で設定なども煩雑になりがちだ。HDMIが現在の映像や音声と同様にTCP/IPを通すことができるようになれば、テレビに内蔵するワイヤレス機能も1つで済む。
もちろんHDMIでネットワークにつながるメリットはそれだけではない。次世代HDMI規格によってテレビやレコーダーがネットワークに参加するのが“当たり前”の状況になることを見越し、2009 International CESでさっそく新しい技術を提案した企業があった。HDMIのコントローラチップの大手メーカーの1社として知られ、HDMI Lisencing,LLCでも重要な位置を占める米Silicon Image(以下、シリコンイメージ)だ。今回のHDMI新仕様にも、同社の意見が色濃く反映されているとみられる。
同社が提案する「LiquidHD」(リキッドエイチディー)は、テレビなどのCE機器(コンシューマーエレクトロニクス機器)ネットワークを前提としたプロトコルスタックだ。家庭内のAV機器やPCを1つのネットワークでつなぎ、それぞれが再生できるコンテンツはもちろん、その機能までをシェアすることができるという。
LiquidHDでは、例えばリビングルームのBDレコーダーで録画した番組を書斎で視聴したり、PCに保存したデジカメ写真をリビングルームで鑑賞するといったことが可能になる。もちろん、ここまでなら「DLNAで同じことができている」と思うかもしれないが、シリコンイメージのプロダクトマーケティング担当ディレクターのRob Tobias氏によると、「重要なのは、ネットワーク内の機器が持つユーザーインタフェースと機能を、あたかも内蔵機能のように使えること」という。
「CATVのチューナーが良い例だ。リビングルームにCATVのチューナーが1台設置されていれば、寝室や書斎のテレビからチューナーの画面を操作してCATVの番組を楽しめる。現在のように、複数のチューナーを契約するコストや手間がいらない。このためLiquidHDは、CableLabs(米国のCATV業界団体)から“Best New Product Award”をもらい、大手CATV局のcomcastも絶賛している」(Tobias氏)。
もう1つの例を挙げてみよう。「リビングルームに新しいハイエンドテレビを導入したら、ウィジェットなどの新しい機能が付いていたとする。今までは、そのサービスを利用するにはリビングルームに行かなければならなかったが、LiquidHDのネットワークでつながってさえいれば、それを書斎の少し古いテレビでも使えるようになる。いわば機器をタダでアップデートできるようなものだ」。ほかにもゲームの続きをベッドルームのテレビでプレイできたりと使い方は幅広い。
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