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基本スペックの見直しでさらなる高みへ “iVIS”「HF S10」特集 春のフルHDビデオカメラ(5)(1/2 ページ)

» 2009年02月27日 08時30分 公開
[都築航一,ITmedia]
photo “iVIS”「HF S10」

 キヤノンといえば、SDメモリーカードと内蔵メモリの両メディアに記録可能なAVCHDカメラ「iVIS HF10」「iVIS HF11」が“ダブルメモリー”の愛称でヒットを飛ばしたことは記憶に新しい。その便利さが受けたのはもちろんだが、ワンランク上の精細な画質や高速なオートフォーカスなど、ビデオカメラとしての基本性能が高いレベルでまとまっていたことも、人気を集めた理由だろう。

 今春は、このダブルメモリー仕様を踏襲し、32Gバイトのメモリを内蔵したモデルが2機種発売されている。ひとつは、機能をアップデートしつつ、ボディの小型化を図った「iVIS HF20」で、昨秋モデルの「iVIS HF11」比で約17%のスリム化を達成している。

 そしてもう1台、同社のフラッグシップモデルとして登場したのが、今回取り上げる「iVIS HF S10」だ。こちらは本体の小型化にはこだわらず、定評ある画質のさらなる向上を第一にめざしたカメラで、光学メーカーとしての同社の意地が感じられる。

強烈なデザインのボディが生み出す高精細な映像

 ボディ全体がレンズ鏡筒そのものといったデザインは、高画質を極めるというこのカメラのコンセプトをよく表しているように思える。カメラ部は従来機から完全に一新され、電源スイッチを入れると、人のまぶたのように上下に開くレンズカバーの奥に、大口径の光学10倍ズームレンズが見えてくる。

 58ミリというフィルター径も異例の大きさだが、カメラの心臓部といえるCMOSセンサーも、1/2.6型と大きなものが採用されている。このCMOSは総画素数859万画素、有効610万画素(動画モード時)という膨大な量のデータを吐き出す仕様で、ここからフルHDの映像を生成することにより、従来機よりもさらに精細な映像を生み出す仕組みだ。当然これによって映像処理の方法や、求められる処理能力も大きく変わるため、処理エンジンも世代が新しくなり「DiGiC DV III」となった。

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photophotophoto 鏡胴がそのままカメラになったようなデザインの“iVIS”「HF S10」。上部のホットシューはフタがスライドする格納式だ

 気になる画質について先に述べてしまうと、以前から解像感の高さをウリとする同社の製品らしく、今回取り上げた中でも描写の精細さでは文句なくナンバーワン。色再現性も落ち着いた雰囲気だ。また、最高画質時で24Mbpsという高ビットレートを生かしきった自然な描写も印象的。今回試した限りでは、かなり意地悪なシーンでも、ビットレートの配分が適切で、不自然な圧縮ノイズも抑えられていた。

 なお、24Mbpsモードで撮影した動画は、相変わらず同社のDVDライター「DW-100」でもDVDディスクに保存することができないため、メモリにたまった動画を保存するには、SD/SDHCメモリーカード自体を保存メディアとして買い足していくか、パソコンもしくはAVCHD対応のレコーダが必要となる。

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