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東芝“REGZA”「55ZX8000」が描くBD「コッポラの胡蝶の夢」の厳かな枯淡山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.35(1/2 ページ)

» 2009年05月13日 17時16分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 これまで液晶テレビの弱点の1つとされてきた暗所コントラスト。それを飛躍的に向上させようという手法が、LEDバックライトを用いたローカルディミング(局所減光)である。昨秋、シャープ、ソニーが先行して商品化したこの手法を、この春東芝が“REGZA”の最上位モデル「ZX8000シリーズ」に採用、大きな注目を集めている。

photo 55V型の「55ZX8000」(7月上旬発売)。ZX8000には、ほかに46V型の「46ZX8000」(6月下旬発売)が用意されている

 ここ数年、趣味性の高い映像モード「映画(プロ)」を磨きあげ、専門家筋から画質のよさで高い評価を得ていた東芝“REGZA”だが、55V型と46V型の2モデルが用意されたこのZX8000を「映画を楽しむ大画面液晶テレビのスペシャリティ・モデル」と位置づけ、絵がらに応じてLEDバックライトの明るさをエリアごとに変えることで業界最高値のダイナミックコントラスト200万:1を実現した。

 実際にその映像をチェックしてみたが、本シリーズの画質は、今日すべての大画面テレビの中で間違いなくナンバーワンといえるものだと思った。個人的にはパイオニアのプラズマテレビ「KRP-500A」に出会って以来の衝撃といっていい。

 バックライトに白色LEDを複数個配置(個数は明らかにされていない)、画面を多分割し、入力信号を解析してエリアごとにLEDの発光レベルを変えて映像を表示するというのがZX8000の特徴である。闇を表示するエリアはLEDを点灯しないのだから、黒が黒く見えて当たり前ともいえるわけだが、CCFL(冷陰極管)を光源に使って画面全体を一律に光らせてきた従来製品の、光漏れによる黒浮きを見慣れた目でZX8000の映像を見ると、誰もがその見事な黒に言葉を失ってしまうに違いない。

 ZX8000のハイコントラスト化の取り組みは、LEDのローカルディミングだけではない。本機は液晶テレビで指摘されることの多い動画ボヤケを抑えるため、昨年モデル同様フレーム数を2倍にして映像を表示するが、それに加えて上下8分割した画面エリアの1つのバックライトを1/120秒ごとに完全に消す「Wスキャン倍速」が採られている。

photo Zシリーズに採用された「Wスキャン倍速」の概要。CCFLバックライト搭載のZ/ZHシリーズは上記のように画面を3分割してバックライトのオン/オフを実施するが、LEDバックライトのZX8000シリーズだけは8分割とより細かく制御する

 これによって動画再生時によりいっそう締まったキレのある黒の再現が可能となったわけだが、これは、次のフレーム画像が入力されるまで現画像を表示し続ける「ホールド表示」の液晶テレビ(だからこそ動画ボヤケが目立つ)を「インパルス表示」のブラウン管映像に近づける手法と考えてもいいだろう。

photophoto ZX8000シリーズの「メタブレイン プレミアム」には、LEDバックライト制御のために基板が1枚追加されている(左)。超解像処理「レゾリューションプラス2」も搭載(右)

 それから、今回のREGZA春夏モデルは、ZX8000を含めてすべて全光沢パネルが採用されている。従来の液晶テレビは、映り込みの少ないノングレア・タイプが使われるケースが多かったが、パネル表面での外光の拡散がなく、見た目の精細感と明所コントラストに優れる光沢パネルこそが、新REGZAの魅力をもっとも引き出すパネルだと認識し、その採用を決断したのだろう。確かにこのパネルを採用したことによる映像品位の向上は著しい。明るい部屋でも暗い環境で見ても、その映像につやと繊細さの魅力が加わった印象を受ける。

 さて、先述したようにZX8000は白色タイプのLEDが使われている。フルカラーを生成するRGB(赤・緑・青)それぞれのLEDで構成されたバックライトに比べて、色の魅力に乏しいのではないかと考える向きもあるかもしれないが、実際にチェックしてみると、本機の色再現能力はとても素晴らしい。とくに朱、紅、あかね色など赤系統の描き分け能力は抜群だ。

 同社技術陣に聞くと、本機で再現できる色域は、国際HDTV規格で定められたそれを完全にクリアし、デジタルシネマの規格にほぼ準拠しているという。それ以上むやみに色域を広げると、元信号から大きくかけ離れた色が再現されることになりかねない。同社技術陣は、映画制作者の意図に忠実に、なおかつ家庭用テレビとしての色の魅力を発揮させることを考えて白色LEDを選択して色のチューニングに挑んだのである。

 余談だが、LEDのRGB完全独立駆動を実現しているシャープの「XSシリーズ」も、「映画」モードに限っていえばRGBのLEDでまず白色をつくって、本シリーズ同様フィルターを用いてフルカラーを生成している。RGB完全独立駆動では色域が広がりすぎて作品が本来意図したものから大きくかけ離れた色表現になってしまうという危惧があるからだろう。

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