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最高峰のサインは“X”――ウォークマン「NW-X1000」シリーズインタビュー(1/2 ページ)

» 2009年05月20日 11時15分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 広く知られるよう、ウォークマンは1979年に“携帯できるオーディオプレーヤー”という製品でスタートした。その後、デジタルの時代に入りNW-A800シリーズでは動画再生、「NA-A910」シリーズではワンセグ受信/録画と高機能化を進めた。そして、最新製品の「NW-X1000」シリーズは、「音質」「操作」「画質」「コンテンツ入手」の4つについて最高を目指したモデルとして登場した。

photo NW-X1000シリーズは、16Gバイトメモリを搭載する「NW-X1050」と32Gバイトメモリを搭載する「NW-X1060」が用意される

 音質については、ステレオのLRを分離する「クリアステレオ」、ゆがみを少なく低音をブーストする「クリアベース」、高域補完技術「DSEE」(Digital Sound Enhancement Engine)、13.5ミリの大口径イヤフォン、イヤフォン内蔵マイクで周囲の騒音を集めその音に相反する波形を生成して騒音を低減する「ノイズキャンセル」と既存製品が備えた5要素に加え、あらたにフルデジタルアンプ「S-Master」を搭載した。

 画質については3型(解像度は432×240ピクセル)有機ELディスプレイ、操作性についてはタッチパネル、コンテンツ入手についてはワンセグ放送の受信/録画に加え、無線LAN機能を搭載し、YouTube視聴とWebサイトの閲覧も行えるようになっている。

 携帯プレーヤーとしてまさしく全部入りともいえる内容だが、“携帯”プレーヤーである以上、画面サイズを大きくすれば本体サイズも大きくなり、多機能化を進めればバッテリー駆動時間が短くなるというジレンマを抱える。そのバランスを見極めるのは至難の業であり、同種製品ではiPod touch(iPhone)ぐらいしか大きなヒットとなった製品が存在しないことも、その困難さを裏づける。その困難へ、どのようなにトライしたのか。開発陣に尋ねた。

“X”に込めた、本能的な“良さ”

 「厳密にいつから企画がスタートしたというのはありませんが、ウォークマンのシリーズを展開していきながらヒアリングを進めていくうち、“音質”に対する大きな要望があることがはっきりしたのです。そこで、“高音質”“高画質”“新たなユーザー体験”を提供できる製品を作れないかとXシリーズの企画がスタートしたのです」(中井氏)

photophoto 製品企画を担当したネットワーク&サービスグループ ニューモバイル企画MK部 企画1課 中井康介氏(写真=左)、プロジェクトリーダーを務めた同グループ ニューモバイル部門 1部1課 大橋篤人氏(写真=右)

 NX-X1000シリーズの製品企画を担当した中井氏は、このように製品企画の意図を語る。同社BDレコーダーや薄型テレビのラインアップを確認してみれば分かるが、同社製品において、「X」は最上位モデルの型番に冠される文字だ。この文字を使う以上、最上の製品を作り出そうという意気込みがあったことが分かる。

 「ただ、高音質だけという訳ではなく。すべてが進化することで、大きな驚きを提供できると考えたのです。本質的な喜びとでも言うのでしょうか。いい音を聞けばうれしいですし、いい映像を見れば綺麗と感じますよね。新製品では、手触りも含めて、本能的、感覚的な“良さ”を提供したかったのです」(大橋氏)

photo 側面と裏面ではザラりとした堅い金属の質感、表面ではガラスのつややかさを表現することで、世の中にある不変な物体のひとつ、鉱石をイメージしたという

 NW-X1000シリーズはタッチパネルの3型有機ELディスプレイを搭載するが、その選択の理由もやはり“感覚的な良さ”を目指したからだった。「まずは大きな画面にしたかったのです。タッチパネルを採用したのは画面を大きくしながら本体サイズを小さくするためでもありますが、多機能と直感的な操作の両立が一番の目的です」(大橋氏)

 確かにタッチパネルを採用することで視覚を利用した直感的な操作は可能になるが、タッチパネルのみでは目で確認するというワンステップが必要になるため、ポケットの中などで操作する状況も想定される携帯プレーヤーでは不利な点もある。そのために、再生/停止や音量調整などといった基本的な操作を行うためのボタンも用意した。「タッチパネルには操作上のデメリットがあることも分かっていましたから、ハイブリッドのインタフェースにしたのです」(中井氏)

 ちなみに表示装置に液晶ではなく、有機ELを採用したのは「やっぱりキレイだから」(大橋氏)というシンプルかつ感覚的な理由によるものだ。ただ、「発生するノイズの抑制には苦労しました(笑)」と実装に関して苦心があったことも大橋氏の口から語られた。

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