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薄型テレビ、夏モデルに見る3つのトレンド麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/6 ページ)

» 2009年05月27日 10時55分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 昨年から続く不況の波は、AVのシンボル的製品である薄型テレビを手掛ける家電業界にとって無関係なものではない。薄型テレビについて言えば、ソニーは販売台数こそ伸びたものの、赤字額が増大するという苦しい状況に陥るなど、全般としては苦境と表現できる状態だが、パナソニックのように「出荷量を1.5倍に」と攻勢に出るメーカーもある。

 ただ、全体として、薄型テレビの製品価格は下落傾向にあるほか、5月15日より開始された「エコポイント」の存在もあり、まだ購入していない、あるいは買い増し/買い換えを検討しているひとにとっては好機ともいえる。

 デジタル・メディア評論家 麻倉怜士氏の月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。大画面テレビの“いま”を誰よりも知り尽くした麻倉氏に、今夏の新製品から見える、注目すべき薄型テレビのトレンドについて、話を聞いた。

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本格化する光沢処理

――実は昨年も同様のテーマでお話を伺っています。その際には「高画質化」「自動画質調整」「プラズマの欠点是正」「液晶の表現力向上」を挙げられていました。今夏はどのような傾向が見えるのでしょう。

麻倉氏: 今夏製品に見る傾向として、大きなものが光沢処理の本格化です。これまでは、プラズマ=光沢、液晶=非光沢ときていましたが、液晶テレビの光沢化を3年ほど前から三菱電機が先行し、それを各社が見守るという状況でした。今夏は東芝が液晶テレビへ全面的に光沢処理を施してきました。

photo 光沢処理を施した液晶テレビ 東芝「ZX8000」シリーズ

 ブラウン管の時代、テレビの表面処理は光沢処理が主流でしたから、「見守る」と述べましたが、これは「伺う」と言い換えてもいいでしょう。

 非光沢処理を表面に施すと、反射光が拡散する一方で映像も同時に拡散してしまい、ふわっとした、のっぺりな印象になります。ただ、自分や照明がはっきりとは映り込まない、映像が主張しすぎないというメリットも非光沢にはあります。

 そもそも、プラズマが反射型できていることを考えると、非光沢にこだわっていたのは液晶の方です。シャープが液晶について、従来のブラウン管テレビと違う存在感を示すために、最初から非光沢で突っ走って大型化し、それを各社がフォローしてきたという経緯がありました。

 仕事用としての液晶ならば非光沢処理が選択されるべきですが、最近のAVノートPCでは光沢処理の施された製品が増えています。ただ、ノートPCの場合は利用時に角度をつけざるを得ませんし、処理そのものの質に問題があるものも散見されます。このように、光沢化についてはメリットとデメリットの双方がありますので、東芝も液晶テレビの光沢化に際してはかなりの調査をしたようです。

 米国でもSamsungが採用を始めていますし、液晶テレビの光沢化は今後は大きな流れになるでしょう。プラズマではパナソニックが非光沢処理を採用したことがありましたが、結果的には失敗に終わり、早々に光沢に戻りました。薄型テレビの光沢化は今後も進むことでしょう。

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