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「IrSimple」――進化する赤外線通信デジモノ家電を読み解くキーワード

» 2009年07月02日 19時12分 公開
[海上忍,ITmedia]

赤外線通信のメリット

photo IrSimpleをサポートした赤外線通信対応デバイスは増加中。写真のデジタルカメラ「FinePix Z300」はIrSimpleによって、撮影した画像を対応プリンタや液晶テレビ、デジタルフォトフレームへ送信できる

 現在も第一線で活躍するワイヤレスプラットフォームといえば、「赤外線通信」だろう。テレビやビデオのリモコン用として数十年にもおよぶ実績を持ち、PCやデジモノ家電の分野でも「IrDA」などの規格で長年利用されている。携帯電話でアドレスや写真を交換するときに用いる通信方式も、そのほとんどは赤外線通信だ。

 よく耳にする「IrDA」は赤外線通信とイコールではなく、業界団体の「Infrated Data Association」により定められた赤外線を利用する通信規格であり、数種類の規格が制定されている。最初の規格(SIR)は、ノートPC間のファイル転送を主目的として採用され、やがてPDAなどの携帯端末にも普及した。

 IrDAが普及した理由は3つ、「標準規格」と「ワイヤレス」、そして「低消費電力」だ。IrDAの場合は世界共通の通信手順(プロトコル)が定められており、メーカー間を越えた通信を容易に実現できる。また、通信ケーブルは不要であり、1メートル程度であれば離れた位置でも利用できる。消費電力が少ないことも、ノートPCやPDA、携帯電話など携帯端末での採用に有利に働いたといえる。

プロトコルの改良で高速化した「IrSimple」

 しかしコンテンツの大容量化など状況の変化により、赤外線通信にも一層の高速性が求められるようになった。そこでNTTドコモとシャープ、ITXイー・グローバレッジ、早稲田大学が共同開発した規格が「IrSimple」だ。

 IrSimpleは、従来のIrDAデータ通信方式を見直すことで高速化を実現している。規格のうちソフトウェア層のみ改良をくわえているため、ハードウェアをほぼ変更することなく利用できるのがポイントだ。

 従来のIrDAでは通信を開始する際、相手デバイスを発見し接続を確立するまでに時間がかかり、それを繰り返すことがトータルの速度低下を招いていたが、IrSimpleではその手順を大幅に効率化。特に写真などの大容量データを高速に転送できるようになった。ソフトウェアの変更で対応できることに加え、2005年にはIrDAによって標準規格化されたこともあり、今後も一層の普及が見込まれる。

photo IrDAとIrSimpleの違い(概念図)

 実際、ここ数年でIrSimpleに対応したデジモノ家電は急速に増えた。デジタルカメラに携帯電話、プリンタなど、赤外線通信に対応した機種であれば、IrSimpleをサポートしているどうかチェックしてみよう。

執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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