コラム

小寺信良の現象試考:暴走するネット規制 、あるいは「ネットで婚活」終了のお知らせ (2/2)

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 元の法律(「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)を当たってみると、第二条の二として、以下のような記述になっている。

 「インターネット異性紹介事業 異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信(電気通信事業法 (昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号 に規定する電気通信をいう。以下同じ。)を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう。」

 これはつまり、「異性交際とはなんぞや」というところと、この法律が規制する目的のところが、しっくり噛み合っていないのだな、ということが分かってくる。

 そもそも異性交際という言葉は、落ち合ってすぐラブホ直行のようなものだけを指す言葉ではない。確かに性交を目的としない、ただのデートも、異性交際と言うには違いない。一方、この法律が規制したいと思っているところは、児童売春・買春である。こちらはモロに性交およびそれに準ずる行為を目的としたものだ。この2つを合体させると、「とにかく理由目的に限らず知らぬ者同士の男女が出会う可能性のあるありとあらゆるものを規制」、という珍妙なことになってしまうわけである。

 これはどう考えても、法文内で使われる文言の選び方がまずい。こういうことになると誰も予想しなかったのか、あるいは誰かが恣意(しい)的にこういう表現にしたのか。これによって、法の運用上そのスロットルを警察が自在に握ることが出来る、典型的な悪法となってしまったわけである。

根絶やしにされる日本人

 この運用に対して、ミクシィを初めとするサービスプロバイダは、厳しい立場に立たされた。ミクシィを例に説明すると、同ガイドラインでは、インターネット異性紹介事業者には届け出を出すよう求めているが、これはミクシィが届け出を出せばいいという問題ではない。ミクシィはサーバー管理者に過ぎず、コミュニティの運営主体はコミュニティを立ち上げたユーザーであるからである。

 したがってこの法を警察のガイドラインにあるように運用しようとすれば、コミュニティの管理人1人1人が届け出を出さなければならなくなる。さらにやっかいなのは、ミクシィは昨年、入会可能な年齢を15歳に引き下げていることだ。現在はまだ入会するのに他者からの招待が必要だが、これも招待制から自己登録制に切り替える方針を打ち出している。

 現在15歳から17歳のユーザーは、コミュニティ機能が使えないという制限が加えられているが、自己登録制となると、入会時にどれぐらい厳密に年齢確認ができるのか、ということが問題になってくる。免許証やパスポート、クレジットカードなど年齢を証明するものを持たない未成年者の年齢確認は、真面目にやろうとすれば親の承諾が必要になるだろう。だがそうまでして子供たちはミクシィに参加するだろうか。それだったら他のケータイサービスのほうが手軽である。

 元の法文の定義によれば、自分の情報を広く掲載する機能+それを元に1対1のメールで連絡が取れる方法を提供しているサービスが、対象事業となる。多くのケータイSNSサービスは、登録IDを元にした疑似メール機能を停止せざるを得なくなるだろうし、アドレスを交換しようとする書き込みを今まで以上に厳しく監視しなければならなくなる。ガイドラインでは、実際に会わない「文通」ですら、「交際」に該当するとしているからである。

 社会、そしてコミュニティとは、親以外の大人も、子供を指導したり見守ったりしながら育てていくのが普通であったのに、いつの間に子供が接触する大人は親と教師だけに限定されてしまうようになったのだろうか、と思う。さらには異性の知り合いを増やすという、人類の繁栄にとってものすごくベーシックな部分さえもが、ネットでは監視下に置かれることになる。それは軍靴の響きより、よっぽど恐ろしいことではないのか。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は小寺氏と津田大介氏がさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社) amazonで購入)。

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