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圧倒的な頭脳に見合う“音”とは? 「Cell REGZA」のスピーカー(1/2 ページ)

» 2009年10月14日 12時41分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 「CEATEC JAPAN 2009」開幕前日に発表され、展示ブースでも大いに注目を集めた東芝「Cell REGZA」(→圧倒的な“頭脳”で何をする? 「Cell REGZA」詳報)。録画機能やメガLEDパネルなど、見るべきところが非常に多い機種だが、薄型テレビの課題といわれてきたスピーカーにメスを入れたところにも注目したい。設計を担当した東芝デジタルメディアエンジニアリングの桑原光孝氏に展示ブースで話を聞いた。

 桑原氏といえば、「VARDIA」が「RDシリーズ」と呼ばれていたころから同社製レコーダーのアナログ回路などを担当し、業界では“こだわりの技術者”の1人として知られている。いわゆるスピーカー技術者ではないが、専門技術者顔負けの知識と経験をかわれ、テレビ担当部署からの要請を受けたという。「テレビ部の要望は“音をなんとかしたい”というものでした」(桑原氏)。

photophoto 東芝の「Cell REGZA」と東芝デジタルメディアエンジニアリングの桑原光孝氏。桑原氏は、趣味もオーディオビジュアルという生粋のAVファン。歴代のXシリーズが、「リアパネルはステンレス、端子は金メッキ」という仕様を貫いてきたのも桑原氏による部分が大きい

 先進的な録画機能や画質面で地歩を固めてきたREGZAシリーズだが、ゲームプレイ時の応答性能とスピーカーに関しては評判がいまひとつだった。このうちゲームについては、新製品の「ZX/Z9000」シリーズから採用した「ゲームダイレクトモード」で対応し、残る音の部分を改善するために製品の壁を越えて招かれたのが桑原氏というわけだ。

2つのコンセプト

 薄型テレビの音は、テレビ本体の狭額化やデザイン性重視の風潮に起因する、業界全体の問題ともいえる。実際、スリムに見せるためにキャビネットの容量はどんどん削られ、スピーカーの存在すら感じさせなくなった製品も多い。そうした状況をかんがみて、桑原氏は最初に2つのコンセプトを決めた。

 1つは、スピーカーを「外に出すこと」。2つめは「エレクトロニクス」の活用だ。

 まずディスプレイ本体からスピーカーを外し、専用のキャビネットを確保する。当初はサイドスピーカータイプを検討していたというが、デザイン的な統一感に配慮して、Cell REGZAの画面サイズ(55V型)に合わせた幅1.3メートルの横長キャビネットを採用。もちろん専用のキャビネットになっても容量が少ないことは否めず、オーディオ用スピーカーに比べて不利である点は変わらない。「制約はあります。でも、せっかくなので徹底的にやろうと」。

photophoto スピーカーの内部構造。ウーファーとツィーターを合わせて7ユニット搭載している。右はブースで展示されていたカットモデル。「CEATECに薄型テレビのスピーカーをカットして展示するのは珍しいでしょう?」と桑原氏

 キャビネットはアルミ引き抜き材として剛性を高め、グリルの中にはスピーカーメーカーとして知られるフォスター電機と共同開発した8センチウーファーと3センチツィーターを収めている。「フォスター電機のユニットは以前から使っていましたが、本格的なものは初めて。とくにウーファーに関しては、何十本も試作機を作ってもらい、試行錯誤を繰り返しました」。

 そのウーファーは、フォスター独自の“二重抄紙コーン”を採用したもの。二重抄紙コーンは、2種類の音速の異なる素材を組み合わせた構造で、「単独素材の抄紙コーンに比べると、固有のクセを抑え、ハリのある中高域再生を実現できる」という。もちろん低域についても、強力なネオジウムマグネットを採用した反発型磁気回路や大口径ボイスコイルなどの採用によって十分な駆動力を確保。またキャビネットのバッフル幅をウーファー口径ぎりぎりに設定することでバッフルによる音の乱反射を抑え、音離れを改善している。

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