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3Dテレビのあの手、この手FPD International 2009

» 2009年10月29日 11時28分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 フラットパネルディスプレイの総合展示会「FPD International 2009」が10月27日にパシフィコ横浜で開幕した。10月上旬の「CEATEC JAPAN 2009」に続き、今回も「3D」が大きなテーマ。大手メーカーの3Dシアターに加え、パネルメーカー各社の3Dテレビに関する新しいアプローチも見ることができる。

photophoto パナソニックの3Dシアター(左)。シャープは3DテレビのデモにくわえてUV2Aパネルの画質や省エネ性もアピールしている(右)

 大手家電メーカーでは、パナソニックとシャープが3Dテレビのデモンストレーションを行い、長い列ができていた。パナソニックは、今年のCEATECで披露した50V型ではなく、昨年のCEATECなどで使用した103V型を出品。映画「アバター」のトレーラーのほか、オリンピックの競技シーンや風景、103V型では初となる水中の映像など約10分間の3D映像を見ることができる。30人を収容できるシアターを15分単位で回転させているが、整理券は早めに確保しておきたい。

 シャープは、CATECと同じ「UV2A」(ユーブイツーエー)技術を採用した60V型の3D対応液晶テレビでデモを行っている。また、ブースには40V型から60V型までのUV2Aパネルを並べ、従来のVA液晶パネルと比較できるようになっていた。

photophoto 東芝モバイルディスプレイブースは、OCB液晶パネルを使った3Dのデモを多数展示。写真は32V型を使用した3Dシアター

 目新しいところでは、東芝モバイルディスプレイが32インチのOCB(Optically Compensated Bend)液晶パネルを使った「時分割方式」3Dをデモンストレーションしている。左右の目に入る画像を交互に表示し、メガネのアクティブシャッターを同期させる仕組みは他社と変わらないが、OCBの高速応答性は3D映像の画質を大きく左右するクロストーク(2重像)の低減に大きく貢献するという。

 「OCB液晶は表示のリセットが確実で、かつ次の画像を表示するのも速い。クロストークは一般の液晶パネルに比べると100分の1といったレベル」(同社)。120Hz駆動で十分というのもうなずける。

 もっとも、展示機の解像度は1366×768ピクセルで、フルHDの3D映像にはなっていない。これは、同社の生産ラインで使用する第4世代マザーガラスでとれる上限のサイズが32型であるため。“フルHD 3D”のBD視聴にはスペック的に見劣りするものの、同社では「3Dテレビへの応用は、顧客(TVメーカー)の要望次第」と話している。

photophoto LG Displayの47V型「Switchable Lens 3D」ディスプレイ

 一方、LG Displayが展示した47インチ「Switchable Lens 3D」は、2D表示と3D表示をワンタッチで切り替えられるというユニークなディスプレイだ。パネル表面に“液晶レンズセル”と呼ばれる液晶の層を設け、電圧をかけると内部で“かまぼこ状”に変化する。これがレンズの役割をして9視点の裸眼立体視が可能になるという。

「World's Slimmest」競争

 3Dテレビ以外の注目展示としては、サムスン電子とLG DISPLAYの超薄型液晶パネルが挙げられる。いずれもLEDエッジライトシステムによって実現したもので、サムスンは厚さ3.9ミリの40インチ、一方のLGは厚さ5.9ミリながら47インチと、さらに大きなサイズになっている。どちらのブースも「World's Slimmest」(世界一薄い)をうたっており、数年前の「World's Largest」(世界一大きい)競争をほうふつとさせる。またLG DISPLAYでは、47インチの480Hz駆動パネルも展示。動画の表示性能をアピールしていた。

photophoto サムスン電子はLEDエッジライト搭載の40インチを展示。厚さ3.9ミリながら倍速駆動対応、コントラストは5000:1
photophoto LGは厚さ5.9ミリの47インチと42インチを展示
photophoto LG DISPLAYでは、47インチの8倍速に相当する480Hz駆動パネルや55インチでローカルディミング(LEDバックライトのエリア制御)対応のウルトラスリム液晶なども展示(左)。篠田プラズマの「SHiPLA」は、厚さ1ミリの表示フィルムによって曲面や円筒形の壁にも設置を可能にした大画面ディスプレイ。価格はおよそ4000万円(右)

 民生用ではないが、薄さと大きさで他社を圧倒しているのが篠田プラズマ。昨年に続いて独自のPTA(Plasma Tube Array)を用いた145インチの大画面フィルム型プラズマディスプレイ「SHiPLA(シプラ)」を展示している。SHiPLAは、1メートル×1メートルのモジュール6面をつないだ形で、画素数は960×720ピクセル。モジュールをさらに追加してフルHD解像度にすることも可能だ。

 展示機のサイズは昨年の試作機と同等だが、今年は製品として展示されている点が大きく異なる。同社によると、展示機と同じものが11月4日から兵庫県の「明石市立天文科学館」に設置され、国立天文台所有の映像などを放映する予定だという。

 FPD International 2009の開催期間は、10月28日(水)から10月30日(金)まで。入場料は2000円だが、事前登録すると無料になる。

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