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小寺信良の現象試考:見直しが求められる、番組と広告の関係 (1/2)

テレビ番組の最中、本編と広告の区別がつきにくい事が増えてきている。果たして問題なのか、問題であればなにが争点となるのか、考えてみたい。

 特撮番組「仮面ライダーディケイド」の最終回のあり方を巡って、テレビ朝日社長の早河洋氏が「表現方法として不適切だった」と謝罪した(早河洋社長 定例記者会見(10月29日)の要旨)。番組最終回では、クライマックスの戦闘シーンから「ライダー大戦は劇場へ」というテロップとともに映画の予告編が接続され、その後、新番組予告へとつながっている。この終わり方に関して、第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)にも多数の批判が寄せられ、審議されていたようだ。

 社長の謝罪を以て、一応この表現方法は不適切であるということになったわけだが、これを巡って世論は「やっぱり」という声と、「何が問題なのか」という声に二分されているようだ。今回は、番組と広告(CM)の関係について、いろいろと考察してみたい。

 「仮面ライダーディケイド」で問題となったのは、番組本編とCMの区別がつかず、まるで番組内にて映画の露骨な宣伝を行なったように見えたことであろう。筆者も初見では、どこまでが番組本編でどこからが映画CMなのか、区別できなかった。もう一度意識して見直すと、ラストシーンはヒロインのストップモーションとなり、それが変身ベルトをイメージしたアイキャッチと合成されたのち、カットつなぎで映画のCMとなっている。

 確かにストップモーションやアイキャッチにより、番組の区切りを表現していると言えなくもない。しかし「完」や「END」の表示もなく、番組が終わったことを明示するものはない。さらにストーリー展開を追うと、一端は悪役の爆発により、特撮ものらしいラストシーンが展開されているが、その後にもう一度、別次元の話として戦闘が始まったところで番組終了となっている。その別次元の戦いは映画で、という流れである。

どのように広告を差し込むか

 番組が、そのキャラクターに関係する商品のCM展開を行なうのは、子ども向け番組ではおなじみの手法である。おもちゃ会社がスポンサーとなり、キャラクター商品を扱うわけである。またおもちゃ会社の意向で、半年に一度は無理矢理メンバーが増えるとか、変身アイテムが変わるとかいった「お約束」も番組内に見られるようになっており、おもちゃをねだられる親としては大変である。

 キャラクタービジネスということでは、アニメの世界では製作委員会制度により、ライセンスをシェアすることでマルチな商品展開が可能になっている。したがって番組とCM、商品、イベントなどが連動することは珍しくない。アニメになじんだ人は、メディアを越えてキャラクター展開することに関して、寛容な態度を示す傾向にあるようだ。

 視聴者を引きつけておいてCMに入る手法を、業界では「ひっぱる」と言う。アニメの場合は大きいお友達が対象なことがあり、その場合、購買するのも本人である。しかしディケイドの場合は購買するのは視聴者の親なので、この「ひっぱる」手法にあまり耐性のない保護者層が、その露骨さに対して不満を募らせたということであろう。

 筆者がバラエティ番組を編集していた1980年代から徐々に、「ひっぱる」手法が定着していった。番組制作者にとって、語りたいストーリーの中にどこにCMを挟むかは、悩み多き問題である。今多くの人はこの「ひっぱる」手法を、「スポンサーのCMを見て欲しいから」やっていると受け止めているようだが、そもそもの発祥は違っていた。

 それは、「引き続き興味を持って番組を見ていて欲しいから」という理由で生まれた手法だったのである。その結果としては、もちろん番組に続くCMを見るということもあるが、どちらかというと、そこよりも番組視聴率を下げないようにするという工夫だった。番組視聴率というのは株価のようなもので、そこに絡んでいるみんなが幸せになる。努力目標として非常に単純化できる仕掛けなのである。

 番組スポンサーの意向が反映するケースがあるならば、それはテレビ局プロデューサーの意向という形で伝えられる。番組制作の現場では、実際に制作進行を行なうのはテレビ局外の番組制作会社であり、演出を行なうのはそこのディレクターである。彼らにとってのクライアントは放送局であり、番組スポンサーではないという事情もある。そのため、番組内で競合他社の商品を使わないとかいった配慮はあるものの、明確にスポンサーを意識することはあまりないし、そもそも番組制作時には、特定のCMブランクでどのCMが差し込まれるのかは、わからないのである。

 「ひっぱる」と時を同じくして出現したのが、「巻き戻し」である。これはCM開けの本編で、CM前のシーンをもう一度見せる手法を指す。この手法の出現は、ストーリー展開の演出論からすれば「ひっぱる」とセットの関係となる。

 ストーリーの山場とは、直前から積み上げてきた疑問や緊張感といった助走部分がないと、うまくインパクトを与えることができない。CM前でこの助走部分だけを見せておいて、CM開けでいきなり山場を持ってくると、ちっとも山場に見えないという問題が出てきたのである。そこでCM開けに少し話を前に戻して、視聴者の意識を番組に引き戻し、助走を付けてから山場を見せる必要があったのだ。

 最初の頃はこの巻き戻しも、今のようなスタイルではなかった。せいぜい直前の話を10〜15秒程度で振り返るぐらいのことで、しかも前ロールの最後のシーンをそのままくっつけるということはしていなかった。当時は、ストーリーは戻すが、編集ポイントや使用するカットを変えていた。つまり巻き戻し部分も、いちいち編集し直していたのである。

 実はテレビ番組の編集セオリーとして、「同じ番組内で同じ編集を2度やらない」という暗黙のルールがある。もちろんクイズ番組や解説・検証番組の問題部分など、ちゃんと理由があるケースは別にして、である。すでに視聴者に見せた同じシーンを丸ごともう一回見せるという手法は、放送事故と取られる可能性があり、編集論として「そりゃやっちゃダメだろう」とされていたのである。

 これが今のように相当の時間分、しかも丸ごとコピーした状態で巻き戻すようになったのは、主としてザッピング対策である。1980年代半ばから、テレビのチャンネルリモコンが普及した。もちろんリモコン自体はもっと前から存在するものだが、昔はテレビなど一度買ったら10年ぐらいは買い換えなかったので、普及のタイミングは登場よりもずっと遅れるのである。

 リモコンによってCM中に別のチャンネルを見るという行為が一般化すると、一周して最初の番組に戻ってきたときには、ストーリー進んでしまって、分からなくなってしまう。そうなると番組の続きを見る意欲が減退し、見なくなる傾向が現われた。それを救うために、大きく巻き戻す必要が出てきたわけである。

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CM | 広告 | モラル | 小寺信良


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