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「SXRD」――HDプロジェクタの新時代デジ物家電を読み解くキーワード

» 2009年12月01日 11時51分 公開
[海上忍,ITmedia]

プロジェクターの表示方式

 現在、市場で流通している主なホームシアター用プロジェクターの表示方式は、大きく分けて3つに分類できる。1つは、光源ランプの光を映像の映った液晶パネルの背面からあて(光を透過させて)、レンズを使いスクリーン上に投射する「透過型」(「液晶プロジェクター」とも呼ばれる)。もう1つは、微細な反射鏡(デジタルマイクロミラー)に光をあて、その反射角度の違いを利用して映像を表示する「DLP型」。そしてもう1つが、シリコン基板上に配置した液晶画素の正面から光をあてて、その反射光で表示を行なう「反射型」だ。

 それぞれの方式には一長一短あるが、一般的な傾向として、透過型は明るく発色に優れるがボディサイズは大きめ。DLP型は応答性に優れ映像の輪郭にキレがあり、小型化もたやすいが、画面は暗くなる傾向がある。反射型は映像に粒状感が少なく、応答性も高いが、他方式に比べると単価が高いといわれる。

 このうち主に国内メーカー主導で技術開発が進められているものが、反射型だ。液晶画素をシリコン基板上に配置することから、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)と呼ばれることが多いが、同技術に基づく映像素子を日本ビクターでは「D-ILA(Direct-Drive Image Light Amplifier)」、ソニーでは「SXRD(Silicon X-tal Reflective Display)」として製品化している。

薄型テレビの技術も導入

photo 30万以下のエントリー市場に衝撃を与えたVPL-VW15後継のSRXD採用機「VPL-VW85」

 ハイエンド製品向けのイメージが強かった反射型の分野で、変化を起こしたのがソニーだ。2007年秋に50万円を切るSXRD採用機「VPL-VW60」を投入。2008年末にSXRD採用の「VPL-HW10」を30万円以下(登場時:実売価格)で提供開始、フルHDかつ2.0ミリ秒以下の高速応答性というスペックが評価されり、エントリー市場の勢力図に大きな変化をもたらした。そして2009年10月に発売された「VPL-HW15」は、その後継モデルであり、コントラスト比が最大6万:1になるなど階調表現力が向上している。

 これら製品の特徴としては、反射型としての技術をベースとしつつ、液晶テレビ「ブラビア」シリーズでの採用で知られる動画応答性改善技術「モーションフロー」など、同社の薄型テレビ向け技術を反映させる開発方針があげられる。モーションフローは上位モデルのVPL-VW80およびVPL-VW85のみの採用だが、ブラビアエンジンやブラビアリンクといった技術は、VPL-HW15にも採用された。

 同社では「SRX-R320」など、フルHDの4倍以上の解像度(4K映像、4096×2160ピクセル)に対応、米RealDの3Dデジタルシネマシステムにも対応可能な可能な業務用モデルも開発している。SXRDというイメージデバイス技術だけでなく、ソニーという企業全体の取り組みを考慮すると、「次のプロジェクター」の姿が見えてきそうだ。

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