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HD時代のホームシアター作法麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/4 ページ)

» 2009年12月02日 08時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 フロントプロジェクターと複数本のスピーカーで迫力ある映像とサウンドを楽しむ、ホームシアターには根強いファンが存在する。確かに大画面テレビ(ディスプレイ)での鑑賞に比べると、スクリーンとスピーカーの配置、プロジェクターとプレーヤー、AVアンプの接続など手間はかかるが、それでも映画館のような空気感と大画面を家庭内で楽しめる感動性は圧倒的だ。

 デジタル・メディア評論家の麻倉怜士氏もそうした映像を愛好するファンのひとり。自宅シアタールームには150インチのスクリーンを用意し、ソニー「QUALIA 004」、JBL「Project K2/S9500」など最高級の機材で映像を楽しんでいる。最近ではHD映像をパッケージングしたBDソフトも数多く登場しており、HD時代のプロジェクター環境を見つめ直すにはよい時期に差し掛かっているためか、近著「ホームシアターの作法」(ソフトバンク新書)も好調だ。

 今回は「HD時代のホームシアター環境」をテーマに、BDソフトやプロジェクター、AVアンプ、スピーカーなど注目すべきアイテムとその理由を挙げてもらった。

photo 麻倉氏の自宅シアタールーム。150インチのスクリーンと最新のAV機器が常に準備されている
photo 近著「ホームシアターの作法」と麻倉氏。「コンテンツを楽しむためには何をすればいいか、という観点で“オーディオの作法”と同方向の内容でまとめました。映像と音声の中にいかにディレクターズ・インテンションを見つけ、それをハイフィディリティに再生するかについてのノウハウを73の作法でまとめています。基本的な製品の選び方からセッティングまで紹介しています」(麻倉氏)

素晴らしきBDソフトの世界

麻倉氏: 近年のホームシアター関連製品の品質向上はめざましいものがありますが、まず特質すべきはソフト(BDソフト)に良質な作品が非常に多く登場してきたことでしょう。昨年では「眠れる森の美女」が突出していましたが、今年の作品では「崖の上のポニョ」に注目ですね。

 実にジブリ的――アナログ的な感触や筆致を上手に再現――しており、ヒューマンで微細な表現も見事です。一般にMPEG-4 AVCの映像は細部までクリアですが、それが行きすぎると冷たい感じになることもあります。本作品ではそうした方向に行かないよう、実に気を配ってエンコードされています。

 BDソフトの販売が本格化してから4年ほど経過していますが、DVDのころも本格化4年後ぐらいで映像・音声ともに良質といえる作品が登場してきました。BDのタイトル数はまだまだDVDに及んでいませんが、作品力が向上してきたと感じました。

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 過去の名作映画にも、優れたBD化がなされたものが登場しました。例えば「オズの魔法使い」です。これは1939年上映作品のBD化ですが、圧倒的な高品質映像でまった古さを感じさせません。モノクロ映像からスタートし、途中からカラー映像に変わる有名な演出では、その素晴らしさに息をのみます。カラー映像のテクスチャの素晴らしさには筆舌尽くしがたいものがありますね。

 元がフィルム作品ですから、BD化に際してはフィルムからのスキャニングを行っていますが、これは8K×4Kのスーパーハイビジョン解像度でオリジナルネガからスキャンされました。そして、取り込んだデータをコンピュータ処理を施し、フィルムのキズや汚れ、退色に対応するとともにコマの欠落までも補修しています。そうした処理によって、BD版の映像は、劇場公開時にも映し出されなかった門外不出の“本物のコンテンツ”といえるものとなっています。

 「風と共に去りぬ」のBD版も素晴らしいですね。2004年にNHKが修復版を放送したことがありますが、BD版も大層な出来栄えです。世界的な名作・大作がBD化され、かつ、本来の姿で、ハイビジョン解像度で楽しめる。ここにきて、BDの芸術性が高まったと感じています。

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