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「リフレッシュレート」――3D液晶テレビに「240Hz」は欠かせない?デジモノ家電を読み解くキーワード

» 2010年01月20日 21時37分 公開
[海上忍,ITmedia]

フレームレートとリフレッシュレート

photo International CESに展示されたパナソニックの3D対応テレビ

 フレームレートとは、1秒間に表示される画像の枚数(Frame Per Second、fps)のこと。地上波テレビ放送(NTSC)であれば1秒につき30枚(正確には29.97枚)、フィルム映画なら24枚の画像が1秒間に表示される。29.97fpsや24fpsという数値がこのフレームレートを意味することは、ご存知の方も多いはずだ。

 一般的に、フレームレートは高いほうが有利。パラパラ漫画ならば、ページを速くめくったほうが動きが滑らかなように、1秒あたりのフレーム数が多い、すなわちフレームレートが高い方がチラつきの少ない映像となるからだ。表示装置の分野では、近い領域にある言葉として、単位時間あたりに何回画像を書き換えるかを示す「リフレッシュレート」があり、単位にヘルツ(Hz)を使用する。

 ソニーの研究結果報告※によれば、人間が動画に劣化を感じる知覚限界は240Hzとのことだが、現在の販売されている液晶テレビは「120Hz駆動」タイプが多い。この「120Hz駆動」や「倍速」などという表現は、液晶パネルがテレビ放送の表示に対して、一般的に求められるリフレッシュレートである60Hzの2倍で画面を書き換える能力を持つことを意味し、人間が感知できる応答速度を数値で表すMPRT(Moving Picture Response Time)の改善をも含んでいる。

※:The Journal of the Society for Information Display(vol15.1 pp61-68)に掲載された、ソニー Y.Kuroki氏らの研究結果報告「A psychophysical study of improvements in motion-image quality by using high frame rates」による。

3D対応液晶では「さらに倍」が望ましい

 今年から本格的な普及期に入ると見込まれている家庭用3D対応テレビは、このリフレッシュレートと浅からぬ関係がある。そのキーワードとなる技術が、家庭用テレビ向け3D表示方式の1つ「フレームシーケンシャル」だ。

 フレームシーケンシャル方式では、画面へ左右両眼用に分離された映像を交互に表示し、そのタイミングにあわせ3Dメガネのシャッターを開閉し、必要な映像を片目づつ見せることで映像を立体的に見せる。ということは、60Hzの表示装置では片目あたり30Hzということになり、残像感どころか左右の映像が重なり二重に見える現象(クロストーク)が発生する。

 3D液晶テレビでは少なくとも120Hzが必要、という理由のひとつはここにある。この応答速度を達成した3D液晶テレビであれば、フレームシーケンシャルによる3D表示(片目あたり60Hz)を楽しめるはずだが、さらに残像感の少ないクッキリした映像を求めるならば「さらに倍」、4倍速(240Hz)以上が望ましい。3D時代の液晶テレビは、この「240Hz」がひとつの指標になるはずだ。

3Dメガネの改良も必要

photo CEATEC JAPAN 2009に参考出展された、パナソニックの3Dメガネ

 前述したクロストークの問題を解決するためには、3Dメガネの改良も不可欠だ。しかし、シャッターが開く時間をより短くすれば画面の輝度が落ちてしまう。レンズを通して見た映像は裸眼のときより暗くなるので、より高い光透過率も求められる。装着時の違和感低減とあわせ、今後の課題といえるだろう。

執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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