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つややかな色が魅力のソニー「VPL-VW85」で観る「それでも恋するバルセロナ」山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.44(1/2 ページ)

» 2010年03月17日 11時00分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 前回の本欄で、ビクターのプロジェクター「DLA-HD950」を購入したてんまつをお伝えしたが、じつはもう1つ購入候補機種があった。ソニーの「VPL-VW85」である。

photo ソニーの「VPL-VW85」。0.61型SXRD(倍速駆動)を搭載。輝度は最大800ルーメン。コントラスト比は最大12万:1

 ビクターは「D-ILA」、ソニーは「SXRD」と呼び名こそ異なるが、どちらも表示デバイスに「LCOS」と呼ばれる自社開発の反射型液晶タイプが用いられている。透過型液晶プロジェクターに比べて、構造上ハイコントラストを実現するのに有利なデバイスだが、正直いってソニー製プロジェクターは、一昨年の「VPL-VW80」までそのコントラスト表現でビクター製品の後じんを拝していた。

 昨年冬に発売されたVPL-VW85は、そのVPL-VW80のマイナーチェンジ・ヴァージョン。それゆえコントラスト表現についてはたいして期待していなかったのだが、実際にその映像を見てたいそう驚いた。オートアイリスを使わないネイティブ・コントラストで、ビクターのDLA-HD950に迫るしっかりとした黒を表現していたからである。0.61型のSXRDパネルや1.6倍電動ズーム・レンズそのものはVPL-VW80から変化はないので、光学系内部の光漏れ対策や入射光のよりいっそうの最適化など、細部の造り込みでSXRDプロジェクター史上最高と思えるコントラスト表現を得たのだと推測できる。しかし、ここまでよくなるとは……というのが正直な感想だった。

 また、ビクター製プロジェクターには装備されていないオートアイリスは、VPL-VW80から明らかに進化していると思った。絞ったときに黒が沈むと同時に画面全体が暗くなって映像に元気がなくなるという弱点が感じられなくなったからである。同社技術陣に聞くと、画像解析のアルゴリズムを変えるとともに、アイリスを絞る場面では同時にランプ輝度を上げて白のピーク感を維持する電気的補正を加えるようにしたのだという。これはたいへんよいアイディアだと思った。

 それからもう1つ、VPL-VW85で興味深いのは、ビクターが一昨年のDLA-HD750で先鞭(せんべん)をつけたフィルム映像をシミュレートした映像モードを新たに設けたことである(「シネマ1」)。暗部と明部を寝かせ、中間調を立たせたフィルムガンマを範とし、フィルムの発色パターンを解析してそれをRGBのマトリックス・パターンに援用したとおぼしきVPL-VW85の「シネマ1」だが、ことフィルムルックの表現力、完成度という点で、第2世代に入ったビクターの絵づくりのほうにぼくはいっそうの魅力を感じて、DLA-HD950の購入に踏み切ったのだった。とくに高彩度部の色ギレと陰影の表現力でビクター機の魅力は際立っていると思う。

 しかし、いっぽうでDLA-HD950以上にVPL-VW85のほうに魅力を感じる画質ファクターがある。それが発色の豊かさだ。

 じつは昨年の1月にビクター「DLA-HD750」を導入するまで、ぼくは3管式の時代から数えて5モデル続けてソニー製プロジェクターを乗り継いできた。その理由はいろいろあるが、その1つにソニー製プロジェクターの色がいちばん好みに合ったからということが挙げられる。

photo VPL-VW85の入力端子。HDMI×2、コンポーネント、Sビデオ、コンポジット、D-sub 15ピンなどを備える。外形寸法は470(幅)×179.2(高さ)×482.4(奥行き)ミリ。重量は約12キログラム

 とくに色の分光特性がブロードで、映画館でもお馴染みのキセノン・ランプを用いたSXRD機の「VPL-VW100」「VPL-VW200」の魅せるつややかな赤、濃厚な黄色は今でも忘れられない。VPL-VW85は、DLA-HD950同様、色分光特性にクセのある(赤の出力が弱い)200ワット高圧水銀系ランプが使われているが、それでもやはりVPL-VW200から色の美味しさを引き継いでいると思う。後述するが、とくに女性の肌色、スキントーンの表現にソニー製プロジェクターならではの魅力、よき伝統を実感する。

 VPL-VW85の映画ソースに対応した映像モードは3種類。先述したフィルム映像に範をとった「シネマ1」の他、デジタル・シネマの標準規格「DCI」の色域に準拠した「シネマ2」、ソニーの誇るマスターモニターBVMの画調をトレースした「シネマ3」である。

 実際に3種類のシネマ・モードをさまざまな映像ソフトでチェックしてみたが、いちばん自分がしっくりきたのは「シネマ3」だった。「シネマ1」は意外なことにじつにダイナミックかつ派手な画調で、われわれがフィルムルックと言われて想像するしっとりした質感とはおおいに異なるところが興味深い。しかし、どんな映画がこの画調にぴったりマッチするのかと問われるとちょっと返答に困ってしまうのだが……。それに比べると「シネマ2」はしっとりした味わい深い画調だが、色温度が6000ケルビンと低めに設定されており、白人の女優さんの肌色がやや黄味がかるところに少し違和感を抱いてしまう。

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