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アナログ停波まで1年余、薄型テレビ天王山のトレンドを予測する(その2)

» 2010年03月19日 16時53分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 前回のコラムでも書いたように、テレビメーカー各社は、今年から来年にかけてアナログ停波に向けた最後の追い込みをかける。前回は高機能・高画質モデルの動向について触れたが、今回はもう少し市場を俯瞰(ふかん)してみよう。

photophotophoto 東芝のBD内蔵“REGZA”、シャープの“LED AQUOS”Sシリーズ、日立製作所の超解像技術搭載“Wooo”など、2010年は春から薄型テレビが大豊作

 このコラムを読んで、慎重にテレビの情報を集めている方は、それなりに自分で製品を選んで購入していることだろう。一般的な購買層よりも、購入する製品の平均単価も高い(より上位のシリーズを選ぶ)のではないだろうか。言い換えると、自ら良い製品、好みの製品を選ぼうという消費者は、価格・画質・機能などを理解し、自分の評価基準に当てはめて選択する。価格は重要だが、それ以上に全体のバランス、購入した後の満足度が重要になる。

photophoto 3Dテレビもパナソニックとソニーから登場。ソニーは別売のオプションを足して3D機能を追加できる“3Dレディーモデル”も投入する

 これに対してアナログ停波ギリギリのタイミングまで、薄型テレビに買い換えないと頑張ってきた方々は、とても慎重で理性的なのか、それともテレビそのものにあまり興味がないか。いずれにしても、あまり積極的にテレビの買い換えを望んでこなかった。もちろん、価格重視の消費者が割合として増えると考えられるため、平均単価は下がる。

 その一方で、パナソニックやソニーの3Dテレビ、あるいは昨年の東芝「CELL REGZA」の成功などもあって、ハイエンド需要も見込めるとなれば、価格帯は例年よりも縦に伸びた、つまり上位モデルと普及モデルの価格差が大きくなると予想できる。

 この際、消費者側が意識しなければならないのは、ほとんどのテレビラインアップにある“境目”だ。

 各社とも最上位にイメージを牽引するモデルを設定し、機能などを削減しながら中位モデル、下位モデルを作っているが、上から下までが一直線に並んだアーキテクチャになっているわけではない。あるシリーズから下は、他モデルとは異なるプラットフォーム(LSIの世代が古かったり、自社設計ではない回路を搭載しているODM製品であるなど)になっている。加えて使用している部品の質感も落ちてくるので、見た目の雰囲気も急に安っぽさを増してくることが多い。

 メーカーごとに境目は異なるが、そこを見極めることができれば、コストを重視した選択をする上でも、かなりアクティブに、自分の目で製品を選べるようになると思う。

 例えば、寝室用なので視野角の広さはなにより重要だからIPS液晶にしたいが、画質や質感はどちらでもいいと割り切ってIPSで業界一安いモデルを選ぶとか、セカンドルーム向けだから低価格なものを選びたいが、質感やリモコンの操作感は重視したい、などなど。とくに価格重視で選ぶ際、”境目”の上下を見極める目利きができれば良い買い物ができるだろう。

 メーカー側はというと、気の利いたところならば、価格重視のユーザーが増えることを見越して、”境目の上”に魅力の多い製品を置いてくるなど、アナログ停波まで最後の年末商戦で、少しでも単価の高いテレビを買ってもらえるように力を入れてくるはずだ。

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