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“Z”の品格――LED REGZA「Z1シリーズ」(後編)(1/2 ページ)

» 2010年07月12日 17時50分 公開
[聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]

 映像ファンを中心に高い支持を得ている東芝REGZAの“Z”シリーズは、ほかのシリーズと何が違うのか。前回に続き、この夏の新製品「Z1」が持つこだわりの機能について開発担当者に詳しく話を聞いた。

photo インタビューに応じてくれたのは、東芝でREGZAの商品・マーケティングを担当する本村裕史氏(左)と、「次世代レグザエンジン」開発を担当した住吉肇氏(右)

――Z1シリーズだけの画質向上機能がいくつかあります。まず「オート・ドット妨害とクロスカラー除去」について教えてください

住吉氏: サイドパネルのあるCMや番組(4:3)で多く発生するドット妨害やクロスカラーを除去する機能です。例えば、もともとSDで撮影したCMを拡大して(アプコン)放送するケースがありますよね。元映像がコンポジットビデオで作られていた場合などでは、元の映像に入っていたクロスカラーやドット妨害を放送局側で除去できないまま送られてきているケースが結構多いものです。

 そこで、映像から自動的に黒帯(サイドパネル)を検出し、その信号に対してはドット妨害やクロスカラーを除去する機能が働くようにしました。例えば、Z1シリーズとRE1シリーズで同じCM(SD撮影のもの)を流してみたりすると、画質は圧倒的に違います。

photo 「オート・ドット妨害とクロスカラー除去」の仕組み

――「MPEG圧縮フレーム解析高画質処理」というのはどのような処理ですか?

住吉氏: MPEG圧縮フレーム解析高画質処理は、今回のZ1シリーズで初めて搭載した機能です。デジタル放送で使われるMPEG圧縮は、15フレームを1サイクルとして圧縮しています。この1サイクルには、情報量は多いがノイズの影響を受けやすいIピクチャー、ややぼやけがちなBピクチャー、動きの影響を受けやすいPピクチャーという3タイプのフレームが含まれます。今回、Z1シリーズでは、この3タイプの画質に違いのあるフレームに対して、それぞれ最適な超解像処理を行うことで、レゾリューションプラスの効果を最大限に引き出すことが可能になりました。

photo MPEGのフレームタイプ別情報を比較して3次元ノイズリダクションの制御レベルを調整する

住吉氏: 例えば暗い場所で撮影してノイズが発生すると、MPEG圧縮時にビットレートを食われてしまいます。しかも、Iピクチャーだけはノイズを含むのに、B/Pフレームから作ったフレームには含まれないことがあります。その結果、15フレーム/約0.5秒おきにノイズがパッパッとストロボのようなフラッシングのノイズになって見えてしまう。デジタル放送特有のノイズなので、アナログテレビに慣れた人には非常に不自然に見えるでしょう。そこを改善しようとしたのが、この機能です。

 ノイズが多ければ、3次元ノイズリダクションの効き方を全体的に上げるといった方法で対処するのが普通ですが、そうすると動きがあるときにディティールが見えなくなることがありました。対して、新しく開発したLSIには、MPEGのデコーダーとヒストグラム検出、MePという高画質化処理、超解像、3次元ノイズリダクションが同一チップ上にのっています。つまり、今、デコードしようとしているフレームが、Iピクチャーなのか、Bピクチャーなのかといった情報(デコード情報)を取得できます。さらにヒストグラム検出により、ピクチャーごとのヒストグラムやフレームごとの差分ヒストグラムを見ているため、総合的に対応できます。

――総合的な対応といいますと?

住吉氏: 例えば、Iピクチャーのところだけノイズが多かった場合、Iピクチャーにだけ3次元ノイズリダクションをかけるといったことができます。15フレーム中、かけるのは1フレームだけで残りの14フレームにはかけませんから、動きボケも発生しません。また、ノイズを強調する可能性があるので、Iピクチャーには超解像処理をかけません。そのほかのピクチャーは、ノイズは少ないけど高域成分も少ないので、超解像処理を強めにかけるといった具合です。

 ピクチャーごとに3次元ノイズリダクションと超解像の効果をリアルタイムに変えることができるのは、上記のように同じLSIに3次元ノイズリダクションと超解像機能が入っているためです。これにより、ノイズは低減しながら、細かいディテールもちゃんと出せるのです。

 ただし、ここ(コアLSI)で使用する3次元ノイズリダクションは、先ほど説明した「画像パターン検出型」ではありません。使い方としても、全体が暗いシーンのノイズを抑える程度にとどめています。また超解像も本当に微小な領域での処理だけを行います。

――それはなぜでしょう

住吉氏: 通常の超解像処理やノイズリダクションは、先ほど紹介した別チップで行うからです。それぞれ同じような機能はあるのですが、性能と入ってくる映像の質によって使い分け、最適化することにより、最終的にはS/Nが良くて精細感もある映像が実現できました。

photo MPEG圧縮フレーム解析高画質処理のブロック図。2つの超解像処理が働く

――2つのチップを使って、2段階でノイズリダクションや超解像処理を行うわけですね。しかし製品発表時には、「MPEGのフレームタイプによって最適な超解像処理を行う」としか言っていなかったと思います

住吉氏: そうですね。実は、製品発表の時点では、私の頭の中で「効くはずだ」という理屈のもと、ソフト開発を依頼していた段階でした。実際にやってチューニングしてみたところ、圧倒的な効果があり、採用を決めたという事情があります。このため、まだあまり知られていませんが、ぜひアピールしたい点です。

 基本的には、REGZA側でMPEG-2 TSをデコードするケースに対して働きますから、放送のリアルタイム視聴や放送波を録画したレコーダー/NASからDLNA経由でストリーミング再生するときに動きます。つまり、HDMI入力では使えません。レコーダーで録画した放送番組をなるべく高画質で視聴したいという方は、TS録画して、DLNAを使ってREGZAに映し出すという方法にすると、この機能を利用できます。

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