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「計画停電」を理解するために(2/2 ページ)

» 2011年03月15日 22時24分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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本当に停電するか直前まで分からない理由

 初日の混乱を招いた原因の1つに、準備期間があまりに短かく、一般市民に周知できなかったことが挙げられる。改めて振り返ってみると、まず東京電力サイトの情報掲載が遅かった。テレビやラジオで「詳細はホームページで」とさかんに言っているにもかかわらず、深夜にならないと情報が掲載されず、掲載されてもアクセスが集中してダウンロードできない時間が続いた。

 ようやくダウンロードした資料は、電力会社の内部資料をそのまま見ているようだった。電気の供給エリアが変電所など送電設備によって決まるため、県境など一般的な区分とは異なる。その事情を知らない人は、どうしてこのようなグループ分けになるのかが分からなかっただろう。

 また、対象エリアでは「本当に停電するか」が分からずに不満を募らせる場面もあった。実際に停電するかどうかが直前まで分からないのは、電力需給の予想が難しいためだ。「電気は貯めておくことが非常に難しく、その瞬間の需要と供給力をバランスさせていかなければならない。実施までの時間をあければあけるほど、予測の精度は落ちてしまう」(東電)。

 なるべく実際の停電には踏み切りたくなかった東電側だが、それが混乱を招く一因にもなった。初日の14日は、鉄道会社をはじめとする節電の効果が大きく、結果として夕方のピーク時まで停電を回避できた。駅の混乱に巻き込まれた人は、「停電していないのに、なぜ電車が走らない」と不満に感じたかもしれないが、電車が走っていないからこそ停電がなかったというのが実際だ。

 認識という点でもう1つ触れておきたいのが、実際の停電がなかった場合のこと。普通なら「計画停電を回避できた」と思うが、東電側の認識は少し違い、「停電量ゼロの計画停電が実施された」という。“へりくつ”にも聞こえるが、この言葉からは計画停電の本質も伺える。つまり、その時は停電していなくても計画停電は進行中であり、需要が供給を上回ると予測された場合には即座に送電がストップされるということだ。

 事実、15日には国からの要請もあって交通機関への供給を優先したために電力需要予測が3700万キロワットと逼迫(ひっぱく)。停電した世帯数が一気に500万まで増えたという。また16日は同じ時間帯に2グループが停電になるうえ、1日で2回停電するグループも出てくる見込み。同グループでも異なる地域を対象にするなどの対策が望まれるが、停電対象になる地域の負荷は大きくなっている。

 今後、火力発電所の復旧などに伴って電力供給は徐々に増えるはずだが、東京電力では当面計画停電を続けなければならないとしており、計画停電は日常化することは確実。東電エリアに住んでいるわれわれは、さらなる節電を心がけるとともに、電気が使えるオフィスにいるときや混雑した電車に乗っているときでも、停電を引き受けている地域があることを忘れないようにしたい。

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