日本放送協会(NHK)とシャープは5月19日、現行ハイビジョンテレビの16倍の画素数を持つスーパーハイビジョン対応液晶ディスプレイを公開した。幅1.9メートル、高さ1.05メートルの85V型で、5月26日に開幕するNHK放送技術研究所一般公開で展示される予定だ。
スーパーハイビジョンは、NHKが次世代のテレビ放送として提唱する“超高精細映像システム”。解像度は7680×4320ピクセル(8K×4K)、3300万画素。国内では2020年に衛星を使った試験放送を開始することを目標にしている。
NHKでは、1995年からスーパーハイビジョンの技術開発に取り組んできたが、従来の8K×4K試作機はいずれもプロジェクタータイプで、直視型ディスプレイは初となる。日本放送協会専務理事で技師長の永井研二氏は、「スーパーハイビジョンは、開発当初から家庭で楽しめることを前提にしており、直視型ディスプレイができたことは大きな意義がある」と話す。
項目 | 画素数 | アスペクト比 | フレーム周波数 | ビット深度 | 表色系 | 音響 |
---|---|---|---|---|---|---|
パラメータ値 | 7680×4320 | 16:9 | 120Hz | 12/10 | 広色域 | 22.2ch |
NHKは、国際標準規格を策定するITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)でスーパーハイビジョンに関する複数の提案を行っており、すでに「ITU-R勧告 BT.1201-1 超高解像度映像」など4件の国際標準が成立済み。現在はフレーム周波数や色域に関するパラメータ値が審議されており、フレームレートは倍の毎秒120フレームにすることも検討されている。
ディスプレイを共同開発したシャープの水嶋繁光常務(研究開発本部長兼知的財産権本部長)は、「視野を埋め尽くす大画面でありながら画素が見えない緻密(ちみつ)さ、豊かな表現力でこれまでになかった“リアリティー”が提供できる。これまでに経験したことのない映像の世界。われわれもスーパーハイビジョンの価値を(ディスプレイを)作って、改めて知った」と話している。
開発にあたり、シャープは大画面液晶テレビの生産技術にくわえ、中小型液晶の高精細パネル技術や高密度実装技術など、これまで培ってきた技術を多く投入したという。液晶パネルには、独自の光配向制御技術“UV2A”を採用。RGBのLEDバックライトと組み合わせてコントラストや色再現性の向上に一役買っている。なお、液晶パネルは既存生産ラインで製造されており、将来的に商品化する場合でも大きなコスト上昇要因にはならないという。
一方、水嶋氏が今回の「開発の中心」として挙げたのが、高解像度の大画面液晶パネルを駆動するための配線技術だ。スーパーハイビジョンで飛躍的に増えた情報を各画素に素早く伝達するため、抵抗値が低く、容量負荷の小さい新しい配線技術を開発したという。詳細は語られなかったものの、「従来のテレビとは異なる技術だが、現在のテレビにも適用できる」としている。「この技術は、遅かれ早かれ現在のテレビにも採用する。より明るく、より消費電力の低いテレビができるだろう」(水嶋氏)。
NHKとシャープは、5月26日(木)から29日(日)まで開催予定の「NHK放送技術研究所一般公開」(技研公開2011)でスーパーハイビジョン対応85V型液晶ディスプレイを展示する。なお、今年は節電のため展示終了時刻が16時に変更されているので注意してほしい。
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