トールボーイ型のFS57.2は、テレビやスクリーンの両脇に設置されることを想定された、シアター用のメインスピーカーと呼べる存在だ。そのためデザイン(左右幅の細いスタイル)もスピーカーユニット構成(145ミリウーファーを2機搭載)も、そういった活用方法に最適な作りが施されている。とはいえ、同時にステレオスピーカーとしての実力も追い求めているのがこの製品の魅力的なところ。上下2つあるバスレフポートは、それをふさぐスポンジが添付されており、低域のキャラクターをある程度コントロールすることが可能だ。
BS53.2で50LINEの実力の高さはある程度把握していたものの、こいつはさらに驚いた。基本的な音色傾向はほぼ同じだが、たっぷりした量感をもつ低域によるものか、表情豊かなバランスの良いサウンドへと変化したのだ。そのぶんBS53.2のようなエネルギッシュさは多少影を潜めたが、音の多彩さ、抑揚表現の細やかさに関しては1枚も2枚も上手。ダブルウーファーになった分、解像度感もかなり向上している。音の広がりのよさも含めて、かなり良質なサウンドだ。
とはいえ、鳴らし方に関してはBS53.2よりも格段に難しくなっている。とくにパワーアンプのチョイスには、細心の注意を払う必要があるかもしれない。エントリークラスのスピーカーだからといって、エントリークラスのAVアンプを持ってきてはダメ。ごく普通には鳴ってくれるが、BS53.2で味わったような、「エラック」ならではのエネルギッシュかつ中域の充実したサウンドを堪能するまでには至らないからだ。奥の奥にある本当の実力を発揮させるためにも、AVアンプ選びやスピーカーセッティングには細やかな注意を払ったほうが得策だろう。いろいろと難しい面も出てくるが、それこそオーディオ趣味の醍醐味ではある。
このようにエラック50LINEは、そのプライスタグからは想像できない、高い実力を持つスピーカーだった。正直な話をさせてもらうと、試聴時の手ごたえの確かさから、思わず50LINEを注文、7.1chシステムを導入する決意をしてしまったほどだ。しかも既存のステレオシステム(TADスピーカー)はそのままに、50LINEも同居させてしまおうという無謀な計画に走らせるほど、このスピーカーのコストパフォーマンスは並々ならぬものがある。とても魅力ある製品の登場を、大いに歓迎したい。
音質評価(FS57.2) | |
---|---|
解像度感 | (粗い−−−○−きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−−○−ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−○−−−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−○−−質感重視) |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR