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パイオニア「VSA-LX55」で確認した「フェイズコントロールプラス」の有用性山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2011年08月12日 12時52分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 以前この連載でも触れたが、ぼくは今年の2月にパイオニアのAVアンプ「SC-LX83」を自室に導入した(→関連記事)。それ以前は2006年に発表された同社のトップエンド・モデル「SC-LX90」を使っていたのだが、SC-LX83をさまざまな場所でテストして、これならLX90を超えるサラウンドサウンドが楽しめるはずとニラみ、4年ぶりに乗り換えたわけである。実際、最新映画のBlu-ray Discに収録されたドルビーTrue HDやDTS HDマスターオーディオなどのサラウンド音声を再生すると、SC-LX83はSC-LX90の値段の半分以下ながら、それ以上の緻密で情報量の豊かな立体音響を楽しむことができ、大きな満足感を覚えている。AV機器のハイクオリティー化と低価格化の勢いにはほんとうに驚かされるというしかない。

パイオニアの新型AVアンプ「VSA-LX55」

 そしてこの初夏に同社中堅クラスのAVアンプとして登場してきたのが「VSA-LX55」だ。これまた価格はSC-LX83の半分以下の15万円だが、その内容を吟味し、音を聴いておおいに驚かされることとなった。じつにいいのである。110ワット×7チャンネル構成のパワーアンプ・ブロックはSC-LX83のクラスDのデジタルアンプと異なり、AB級動作のアナログアンプだが、腰の据わった安定感のある力強い音で、Blu-ray DiscのHDオーディオ・サラウンドサウンドのすばらしさを満喫させてくれる。

「トロン:レガシー ブルーレイ」デジタルコピー&e-move付き(VWBS1227)。発売元はウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン。3990円で販売中

 本機で観てその音のよさに感激したのが、BD「トロン:レガシー」だ。最初期のCG導入が試みられた人気作の28年ぶりの続編で、そのプロダクションデザインも1作目を引き継ぎながら2010年的にバージョンアップされていて、古い映画ファンにはタマラナイところだが、その音声はDTS HDマスターオーディオ7.1ch 、Blu-ray 3D作品でもある。サイバーワールドから現実世界をワープしようとするクライマックス・シーンの緻密に張り巡らされた効果音のひとつひとつが、視聴空間に響き渡り、そのダイナミックな映画音響の再現性にドキモを抜かれることとなった。

 昨年くらいまで、15万円台のAVアンプだと、どうしても低音の支えが弱く、表現されるサラウンド音場が全体に薄く感じられることが多かったが、本機にはそんなひ弱さはなく、ホームシアター全体をみっちりと上質な音を埋めつくす快感が得られるのだった。

 機能面で興味深いのは、新設された「フェイズコントロールプラス」で、これは0.1chにあたるLFE(Low Frequency Effect)チャンネルの時間遅れを補正する機能。マルチch収録の音楽作品では、低音楽器を記録したメインチャンネルからローパスフィルターを用いて低音域だけを抜き出して生成することが多いが、このとき群遅延という時間遅れが発生する。この群遅延に発生を考慮しないでつくられたソフトをそのまま再生すると、正しい低音再生ができず、量感の豊かでスピード感のある気持ちいい音が聴けなくなるわけだ。

フェイズコントロールプラスの効果(出典はパイオニア)

 それを補正してあげようという機能がフェイズコントロールプラスということになるが、残念ながらそのソフトのLFEchが何ミリ秒遅れているか、または遅れていないかを現状ではわれわれは知ることはできない。パイオニア技術陣はさまざまなソフトを測定しており、その結果をAV機器販売専門店のAVACのホームページで近いうちに発表されるとのことだ。もちろんすべてのマルチch収録音楽ソフトでこのLFEの時間遅れがなくなれば問題はなくなるのだが、残念ながらそうではない現状では、これはきわめて有用な機能ということができる。

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