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「映画館並みの迫力」は本当か!? ソニー「HMZ-T1」を体験(2/2 ページ)

» 2011年10月28日 14時48分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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2Dにも奥行き感、有機ELならでは黒と階調性

 「約20メートルの距離で750インチスクリーンを見ていることに相当する画面サイズ」という例えは直感的に想像できないものの、少なくともわが家のミニマムシアターで比較したところ、100インチスクリーンをおおよそ2.5メートルの場所で見たサイズに近似値だった。普段は3メートル弱の場所で試聴しているので、HMZ-T1の画面サイズは、それよりも大きいことになる。

 だいたい6畳間で100インチというサイズが大きすぎるくらいだし、45度という視野角はフルHDを見るのに理想的、というか、これ以上近づいても迫力は増さないぞー、という数値なので、サイズ的には充分過ぎるほど。過去の製品とは、ケタ違いの大画面ぷりだ(グラストロンは、うたい文句が“2メートル先に52型の画面”だったので、ホントにケタが違う)。

HMD本体のサイズは、ヘッドバンド部などを含めて210(幅)×126(高さ)×257(奥行き)ミリ。重量は約420グラム。プロセッサーユニット部は、180(幅)×36(高さ)×168(奥行き)ミリ。3.5メートルの専用ケーブルで接続する

 それに加えて、有機ELによる映像が素晴らしい。確かに黒の沈み込みがよく(黒がちゃんと黒く表示されるため当たり前なのだが)画面全体が締まって見えるため、階調表現がとても幅広く、それでいて丁寧。720PパネルでフルHDではないが、解像度感も決して悪くない。ドットの間隔は多少見えるものの、映像のクリアさ、シャープさに関してはフルHDの液晶パネルに引けを取らない印象だ。そのため、リアリティーが格段に向上した映像が楽しめる。例えていうなら、プラズマディスプレイの階調性と、液晶パネルのキレの良さを“いいとこ取り”した感じだろうか。レベルはかなり高い。

 HMZ-T1では、有機ELパネルが持つ本来の特長(この場合メリットといっていいだろう)を生かした、画質向上のための工夫もいくつか施されている。例えば、地上デジタル放送やBlu-ray Discを14ビット相当の階調表現(本来は8ビット)にアップする「SBMV」、映像を解析しオートでコントラスト補正を行う「コントラストリマスター」、映像全体の陰影を損なわずつややかな黒を再現する「クリアブラック」など。自発光式の有機ELパネルならではの黒を最大限に生かしたチューニングであり、液晶のような黒浮きのない映像を楽しめる。また動画性能に関しても、応答性の高さに定評ある有機ELはならではのなめらかな映像を実現していた。そればかりか、コントラストの明快さ、階調の細やかさにより、2D映像でも奥行き感すら感じる。

 そして注目の3D映像。こちらに関しては、まさに素晴らしいの一言だ。クロストークがないことはもちろん、3Dグラスのような液晶シャッターの動作がないため、目の疲れが格段に低減される。これはいい。Blu-ray 3Dの高画質を堪能するのはもちろん、プレイステーション3と接続して3Dゲームに没頭するのも良いだろう。まさに3D映像向きのシステムといえる。

 一方の音声の方はというと、高音質とまではいえないものの、それなりに良好な印象を持った。HMZ-T1では、ヘッドマウントユニットに位置調整機構付きのヘッドフォンが付属しており、5.1chのバーチャルサラウンド機能を搭載するなど、迫力や空間表現に工夫を凝らした仕様だ。そのため音場表現はなかなか。前方から両サイドにかけて、広がりのあるサラウンド空間が楽しめる。

 「シネマ」モードなどはちょいと効果があからさまにも感じたが(とくに位相のコントロール)、セッティングが異なる5つのモードが用意されているので、自分好みのものを選んで使えばよい。なかでも筆者のオススメは「ゲーム」モード。音の解像度感はそれほど落ちず、サラウンド感も適度な効き具合なので、幅広いコンテンツに利用できる。

 このように、HMZ-T1は、手軽に映画館並みの大迫力を楽しめるという、メーカーのアピール通りのなかなかに優れた製品だと判断できる。そればかりか、有機ELの持つ新たなる可能性を知ることができる貴重な製品ともいえる。大きなスクリーンをかけられない映画ファンは、まずこのあたりから「大画面」をスタートしてはいかがだろうか。

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