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復権!? 今年は 3Dプロジェクターが面白い本田雅一のTV Style

» 2011年11月21日 12時41分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 ここ数年、テレビの話題にすっかり隠れていた家庭向けプロジェクター。エコポイントや地上デジタル放送への移行などでテレビの売上げが上がった一方、プロジェクターはかつての勢いを失っていた。

 プロジェクターについては、使いこなしが難しい、設置が面倒といったイメージもあるのだろうが、もっとも大きな理由は大型テレビの低価格化だった(他にも姉歯問題以降、住宅着工のペースが落ちたのも原因という説もある)。しかし、製品としては毎年、改善が続いている。

 そもそも、映画やスポーツ中継、音楽ライブなどを大画面・高画質で見るためにプロジェクターがあるのであり、テレビとは全く用途が違うのだが、テレビも新しくするのに、プロジェクターも一緒に……とはなりにくいのは致し方ないところだ。

 しかし今年のプロジェクター市場は実に面白い。高級モデルからエントリー機種まで、あらゆる製品が、それぞれに長所を備え、色々なニーズに応えてくれると思う。以前、コンテンツによってテレビとプロジェクターを使い分ける“2Wayシアター”を本コラムで提案したこともあったが、映画好きの人ならその価値はあるだろう。

劇場を凌駕するソニー「VPL-VW1000ES」の画質

 改めて2011年年末の状況を見ていこう。高級機の目玉は、ソニーの「VPL-VW1000ES」。168万円という価格を見ると、誰も驚くかもしれないが、高性能プロジェクターを長年見てきた人ならば、このモデルの映像を見るだけで、思わず「安い」というに違いない。4K×2Kの圧倒的な高解像度パネルはもちろん、階調表現や4K×2Kへのアップコンバート映像などのスペックがスゴイだけでない。

ソニーの「VPL-VW1000ES」と4K対応のSXRDパネル

 見比べずとも、単独で視聴しただけで明らかに高画質さが伝わってくる機種は、他にそうそう存在するものではない。まだ未完成とはいうものの、現段階でも現存するあらゆるプロジェクターの画質を凌駕する。単に高精細、高コントラストというだけでなく、奥行き感、立体感、色の深み、質感表現の明瞭さなど、感覚的な画質が素晴らしい。

 ソニーは、「劇場用4K×2Kプロジェクターの感動を家庭に」と話しているが、まったくとんでもない話だ。家庭向けのスクリーンサイズならば、劇場用の4K×2Kプロジェクターより、本機の方がずっと高画質だ。入力ソースがフルHDならば、なおさらである。業務用の4Kアップコンバーターは、こんなにキレイではないからだ。

 さて、思わず力が入ってしまったが、もう少し一般的な価格帯においては、エプソンと三菱電機。この2社の製品に個人的に注目している。

Wireless HD受信機を内蔵したエプソン

 エプソンは今年、D9と呼ばれる新しい透過型液晶パネルの製造プロセスを開発した。D9は開口率を上げるとともに、小型パネルの応答性の良さを生かして書き換えサイクルが480Hzと高速化したのが特長。3D表示の際に明るくクロストークの少ない映像を実現できる。

 このテクノロジーを搭載した機種が、「EP-TW8000」シリーズと「EP-TW6000」シリーズ。両者ともシリーズと書いたのは、末尾にWが入るWireless HD対応モデルが存在するからだ。それぞれ予算に応じてコントラスト比のや絵作り、色再現行きが異なる2つのシリーズについては、発表記事を読んでいただくとして、注目すべきはWireless HD受信機の内蔵である(→新駆動技術で“明るい3D”、エプソンが初の3Dプロジェクター)。

「EH-TW8000W」。末尾に“W”が付くモデルは「Wireless HD」を標準搭載。同梱のトランスミッターをBDプレーヤーなどと接続すれば、プロジェクター本体に内蔵された受信機との間で非圧縮のワイヤレス伝送が可能になる

 Wireless HDがあれば、配線工事をしなくても電波でHDMIの映像を伝送できるため、部屋の後ろ側に電源さえ確保すれば、天吊設置などが簡単に行える。エントリーユーザーにもお勧めだが、高品位なプロジェクターをすでに所有していて、それを買い換えたくないけれど、3D映画には興味がある。そんな方は、新たにケーブル追加の必要のないWireless HDが役立つだろう。

 3D映像はテレビ放送が行われていないこともあり、普段使いのテレビではあまり重視していないという読者が大半だと思う。しかし、映画は違う。ディズニーが積極的に3Dでのアニメーションを増やし、過去作品も3D変換にしているように、映像表現の新しい手段として定着し始めている。

 確かに3D実写映画の中には、3Dである必要性もなければ、2Dで見る方がずっとマシという作品もあることは確かだ。しかしアニメーションの3Dはここ数年で飛躍的に進化しており、実写映画へとCG制作で開拓された3D演出のテクニックがフィードバックされつつある。快適で、なおかつ効果的に3Dを使う映画が、今後は増えてくるだろう。

 それに3D効果は大画面ほど大きい。テレビよりもプロジェクター向きだ。

ナンバーワン3D画質の三菱電機「LVP-HC7800D」

 エプソンのD9を用いた両機種は、3D画質の面でも今年発売されたプロジェクターの中でトップクラスの品位だが、3D品位の面で誰もが認めるナンバーワンといえるのは三菱電機の「LVP-HC7800D」である。この製品が採用するDLP方式は、もともと3D映像の品位を高めやすいが、明るさの面で問題があった。しかし、本機は超高速シャッターが切り替わる強誘電型液晶パネルを3Dメガネに採用。明るさと極低クロストークを両立させた。

三菱電機の三菱「LVP-HC7800D/DW」と付属3Dメガネ

 衝撃に弱い強誘電型液晶パネルを守るため、メガネが大きく重いのはやや難点だが、そこはフレームを工夫することでうまく凌いでいる。なによりクロストーク、フリッカーが少なく明るい3D映像は圧倒的。2D映像も絶対的な黒沈みでは反射型液晶プロジェクターにやや遅れは取るが、三菱の映画的絵作りの巧みさは毎度のことで、その点も抜かりはない。

 ということで、今年のプロジェクターは、色々調べて見比べて……と楽しみが多い。映画好きなら、是非とも時間を作ってホームシアター専門店で見比べてみてはいかがだろう。テレビとは全く違う世界観が見えるはずだ。

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