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薄型テレビ用スピーカー、1万円台で選ぶなら本田雅一のTV Style

» 2011年12月12日 12時40分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 この連載は、主にそのとき時のトレンドや話題を取り上げてきたが、今回は特定の取材先を訪ねてみた。ネットでの口コミでブレイクし、“Olasonic”(オラソニック)というブランドのスピーカーが人気を博している東和電子である。

 おそらく、ネットでの評判に聞き耳を立てている人にとっては、「何を今さら……」という話題かもしれない。しかし、ネットの掲示板などを注視していない人にとっては、それがどんな出自の会社かも分からないはずだ。

 かくいう筆者も、まったく知らないメーカーだったが、知人(関係者ではなく、単なるオラソニック製品のユーザーである)があまりにも強く「一度、聴いてほしい」というので、それならばと同社に行って音を聴くとともに、製品のポイントをたずねてみたいと思ったのだ。

昨年春に発売された「TW-S7」。PCとUSB接続するだけで使えるアクティブスピーカーだ。背面にパッシブラジエーターが見える

 東和電子は、各種電子機器の設計を行う会社で、通常は最終製品のメーカーから発注を受けて電気設計を行うのが仕事だ。このため、例え一般消費者向けの製品を設計したとしても名前が世にでることはない。そんな東和電子が初めての自社ブランドで開発したのが、「TW-S7」という製品だった。これは1万円を切る価格と6センチの小径フルレンジユニット、そして同じく6センチのパッシブラジエーターという構成のUSBバスパワーで動作するアクティブスピーカーである。

 一番の特徴はUSBバスパワー(5ボルト/500mA)で動作するお手軽スピーカーながら、力強いサウンドを実現できたTW-S7は、またたく間に評判になった。給電能力の低いUSBでも高音質にするため、電源部には大容量コンデンサーを配置。元となる電源の最大供給能力が合計2.5ワットしかないUSBのバスパワーで、10ワット+10ワットのピークパワーを得られる「スーパーチャージドドライブシステム」(SCDS)を採用している。

 その後、発売されたウォークマン用のWMポート対応モデル、テレビ向けの光デジタル入力対応モデル、それに直近に発売されたiPodドック対応モデルといった後継モデルも登場したが、これらACアダプターから給電される製品でも、スーパーチャージドドライブシステムを引き続き採用し、瞬発力のある音を引き出している。電源部の電流供給能力が高ければ高いほど、純度の高い音を引き出せるからだ。

 さて、なぜこの製品をこの連載でと思い立ったかといえば、中型のテレビに見合う1万〜1万5000円という価格帯で、手軽かつ音のいい外部スピーカーとなると、オラソニックの「TW-D7OPT」が最右翼に来ると思ったからだ。

今年の春に発売された「TW-D7OPT」は、薄型テレビとの組み合わせを想定して開発された光デジタル入力対応モデル

 これが予算が10万円以上あるならば、薄型テレビにはヤマハの「YSP-5100」や「YSP-4100」といった製品を優れた定番製品としてプッシュしたいし、激戦区の5万円クラスならデノンの「DHT-S412」、も少しだけ出せるなら実勢価格の落ちてきているマランツ“CINEMARIUM”「ES7001」あたりをオススメする。

ヤマハの「YSP-5100」(左)とマランツ“CINEMARIUM”「ES7001」(右)。現在の実勢価格は、YSP-5100が17万円前後、ES7001は10万円前後だ

 一部には音質を重視したテレビも登場しているが、やはり市場では薄くデザイン性の高いテレビの受けが相変わらずいい上、すでにテレビを薄型のデジタル対応に買い換えた……という方が、音質向上のためにテレビを買い替えるのもナンセンスだろう。

 だからこそ、サウンドバーと呼ばれる薄型テレビの下に置いてデザインがマッチするスピーカーの出荷が伸びてきたのだが、さすがに1万円台となると、なかなか勧められる製品がなかった。

 TW-D7OPTに採用されているスピーカー(シリーズはすべて同じスピーカーユニットを使っている)は、書斎の机に置いて、近接で聴くと解像感や音場再現性に優れた気持ちの良い音を出してくれる。さすがに低音は豊かとはいえないが、それなりにミッドバスの領域までは伸びており、バランスの悪さを感じさせることはない。これ以上を求めるなら、もっとサイズの大きなスピーカーユニットが必要になる。

「TW-D7OPT」の本体側面と背面。光デジタル音声入力は背面にあり、音声信号がないときは自動的にオフになる。ほかにアナログピンジャックによる外部入力も備えているため、手持ちのポータブルプレーヤーなども接続できる

 テレビに両脇に置いて使うとなると、数メートルの距離を保ちながら聴くことになるため、てっきりこの製品の良さは失われると思った。しかし、確かに小型フルレンジスピーカー特有の定位感や解像感の高さといった要素は弱まるものの、今度は視聴位置に対する音の変化といった神経質な面がなくなり、リラックスして聴ける。

 中域の再現性が高く、歪みっぽさを感じさせないので、一般的なテレビ番組の音を余裕を持って楽しませてくれる。これで実勢価格が1万5000円を切っているのであれば、テレビの音声を強化するにはちょうどいい。すべての音が聴きやすくなるため、ムダにボリュームを上げて耳ざわりになることもなくなるはずだ。

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