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年に一度の総決算! 2011年「麻倉怜士のデジタルトップ10」(後編)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/4 ページ)

» 2011年12月21日 15時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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第3位:オリンパス「OLYMPUS PEN E-P3」

「OLYMPUS PEN」シリーズの最上位機「E-P3」

麻倉氏:私は初代機からオリンパスの「PEN」を使っていますが、「E-P3」になって中味がとても良くなりましたね。まさに熟成です。メタルで高級感を演出するボディーは非常に質感が高く、ヘアラインとマット調のバランスやアールの付け方などにも“日本人ならではの職人芸”を感じます。またシャッターも幕引きシャッターを思わせる官能的な触感と音を体験できます。従来のアナログPENをほうふつとさせる、とてもエモーショナルなカメラです。

 中身も良くなりました。使いやすくなったGUIに加え、例えばアートフィルターの「ポップアート」も素晴らしい。ポップアートは、原色を強調するような彩度調整を行うもので、緑がより緑に、青がより青くなるフィルター。写真としては邪道ですが、アートとして表現するには感情的で良いですね。とくにRAWで撮影しておけば、後加工でポップアートにできる点も評価できます。

 私は常時、標準レンズとして12mm/F2.0を使い、人物撮影には45mm/F1.8と使い分けています。先日、河口湖の「着物博物館」という紅葉の名所で撮影してきたのですが、実にエモーショナルな赤が撮れました。45mm/F1.8は描写力が高く、ボケ味も美しい。ズームレンズの機能性も良いのですが、短焦点レンズにはズームにないものがあります。特にこのレンズは出来が良く、「このレンズでなければ撮れない」というクリアさと伸びやかさが素晴らしいと思いました。PENの素晴らしいところは、自分の感情をクリアに撮影して自分に見せてくれること。オリンパスは今、大変な状況にありますが、あれは経営が悪かっただけ。もの作りの現場はがんばってほしいと思います。

第2位:ソニー「HMZ-T1」

 ソニーの3Dヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」が2位にランクインです。HMZ-T1は、画質を徹底的に極め、3Dの本質を突いた楽しみ方の提案をしています。

麻倉氏:3Dのテクノロジーは、これまで3つの問題を抱えていました。それは、画面が暗いこと、クロストーク(二重像)、そしてフリッカー。液晶シャッター方式メガネを使う3Dテレビは多かれ少なかれ問題を抱えていて、それを解消するためには相当な労力が必要になります。三菱電機のDLPプロジェクター「LVP-HC7800D/DW」が強誘電液晶をメガネに採用したことを見ても明らかでしょう。

ソニー「HMZ-T1」

 しかし、HMZ-T1では、裸眼で立体物を見ているように3Dの効果が得られます。それはなぜかといえば、左右の目に専用のディスプレイを持っているからです。3Dテレビと異なり、1つの画面に左右の映像を交互に映す必要はありませんし、液晶シャッターで視界を遮ることもありません。

 ソニーは1990年代に「グラストロン」で失敗を経験しました。あのときは「2メートル先に52インチの大画面」をうたいましたが、今回は「約20メートルの距離で750インチスクリーン」と大きく飛躍しています。小型化にも成功し、トータルな技術開発で3Dの魅力を提案することができたと思います。

 HMZ-T1は、発売してすぐに最初の出荷分が売り切れ、銀座ソニービルで行った展示では、ビルを囲むほどの行列ができたそうです。やはり皆さん3Dには興味があるのでしょう。最近、ソニーは他社の後追いが多いと言われますが、今回は完全に世界初。しかもすべて自社内で開発したものです。“ソニーのもの作りの復活”という文脈でも、これからの時代を象徴する製品になったと思います。

 ただ、まだまだ進化の余地はあります。ヘッドマウントディスプレイは重く、ヘッドフォンの音もいまひとつ。今後の進化と新しい方向性にも期待したいですね。

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