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BDレンタルを増やせ! 「ブルーレイ拡大会議」開催

» 2012年02月02日 19時04分 公開
[ITmedia]

 「Blu-ray Discの認知度は上がったが、その魅力が十分に理解されているとはいえない」。「普及のカギは、レンタル店の在庫が握っている」。2月2日にDEGジャパンとBDAが開催した「ブルーレイ拡大会議」では、Blu-ray Discを取り巻く環境の客観的な分析とともに、その普及に向けたアクションプランが示された。

DEG(Digital Entertainment Group)ジャパンの会長を務めるウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンゼネラルマネージャーの塚越隆行氏。DEGジャパンは、映像ソフトメーカーや映像機器メーカーなど38社(2011年8月時点)から構成されるデジタルエンターテイメントの普及促進団体だ

 DVDに代わる映像パッケージメディアとして2006年に登場(第1弾ソフトの発売)したBlu-ray Discだが、出荷金額シェアではDVDの76.9%に対して、BDは23.1%といまだに3倍以上の開きがある(2011年実績)。販売数のシェアでは11%とさらに少ない。

 しかし、BDの再生環境は、昨年7月のアナログ停波を経て確実に普及している。GFKジャパン、コンシューマーテクノロジー事業部アナリストの山形雄策氏によると、「アナログ停波でレコーダーの買い替えも必要になり、BD機器は急速なジャンプアップを遂げた。出荷ベースの構成比では2011年末に95%と、ほぼすべてがBDレコーダー」という。累計出荷台数では、2011年までにBD再生機は3400万台も出荷されている。「もちろん複数持ちの世帯も多いと思われるが、日本の総世帯数を考えると30〜40%と一定の普及を遂げた」(山形氏)。

 またアナログ停波後に大型テレビへの“揺りもどし”が起きていることや、Blu-ray 3D対応機の広がりも追い風になっているという。「40インチ以上の大きなテレビが数量を伸ばし、50V型以上もじわじわと拡大している。BDの性能を発揮できる大画面テレビが増えることは、BDにとってポジティブな要因といえる」(山形氏)。

BD再生機を持っていてもDVDを選ぶ人たち

キネマ旬報映画総合研究所の小池正樹主任研究員

 ただし、冒頭で触れたように映像ソフトとしてのBDは対応機器ほど浸透していない。それはレンタル市場で顕著だ。キネマ旬報映画総合研究所がDVDレンタル店で実施したアンケート調査によると、男女ともに90%前後の人がBDを認知していたものの、“BDソフトのレンタル意欲”をたずねると、決して高いとはいえなかった。

 「2011年の調査では、BDプレーヤー/レコーダーを所有している人が51.8%いた。しかし、BD再生機を所有していても『DVDしか借りたくない』という人が5.6%、『なるべくDVDを借りたい』が13.9%もいる」(同研究所の小池正樹主任研究員)。これらの回答をした人に理由をたずねると、“作品数の少なさ”や“レンタル料金”を挙げるケースが多かった。

 「確かにレンタルBDの登場からしばらくはDVDと料金差はあったが、最近ではほとんど変わらない。それでも以前のイメージを持ち続けている人が多いようだ。また、店頭でDVDとBDの在庫数に差があるため、BDを探す手間を惜しむ人が多いのではないか」(同氏)。

レンタルユーザーへのアンケート結果。レンタルするソフトで最も多いのは「BD/DVD、どちらでもいい」54.2%

 もう1つ分かったのは、店頭で借りたい作品のBDが見あたらなかった場合、6割を超える人が同じ作品のDVDを借りていくこと。「皆さん、黙ってDVDを借りてしまう。BDのニーズが少ないように見えてしまう理由が、ここにあるのではないか」(小池氏)。

「借りたい作品のBDが発売されていなかったら?」。男女とも6割以上が同じ作品のDVDを借りるという(右)

 小池氏によると、一般ユーザーを集めてBDとDVDの画質比較を見せながらグループインタビューを行うと、「これほど違うとは思わなかった」「BDが見られるならDVDは選ばない」という人が目立ったという。「認知度が9割を超えているにも関わらず、見せると『すごい』と言われるのは、BDのポテンシャルが理解されていない証拠」と指摘する。

 では、本当の意味で認知度を上げるにはどうしたらよいか。カギを握るのは、やはりレンタル店だという。「国内におけるパッケージ視聴回数は年間17〜18億回。このうちレンタルが12〜13億回を占めている。一般ユーザーの認知を上げ、BDのファンを増やすには、BDレンタル店の在庫を増やして経験してもらうことが一番だ」(小池氏)。

旧作を含めレンタルBDの拡大を推進

 DEGでは、DVDからBDへの移行を促進するため、いくつかの対策を講じてきた。店頭でのBlu-ray 3D体験デモなどに加え、DVDとBDのコンボパッケージを訴求している。これは、BDをよく知らないDVD購入層にBDの画質を体験してもらうため。「どこでもDVD+高画質なブルーレイ」「おうちでブルーレイ、車や外でDVD」「大画面で高画質なブルーレイ、手軽にどこでもDVD」といったキャチーなコピーとともに各社統一のロゴを添付して訴求する。

 レンタル店へのアプローチも開始した。まずは前段階としてアンケート調査を通じた現状把握に努め、「今後、これに基づく具体的なアクションを企画・実行していく」(ワーナーエンターテイメントジャパンの福田太一氏)。また優れたBDを表彰する「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」のコーナーを店頭に設置したり、DEG作成のパンフレットを配布するといった販促作も行ってきた。

VHSからDVDへ移行したときの状況(左)。さまざまな販促作を展開(中、右)

 もちろん、コンテンツ自体の拡充も積極的に進める。例えばワーナーは、コンボ商品や3Dタイトルを増やすことに加え、海外テレビドラマシリーズのBD化や旧作のBD化を進めることを表明した。「今年は旧作のBDを100タイトル以上リリースする」(ワーナーの福田氏)。

ワーナー、東宝など加盟メーカー各社の取り組み

 また東宝では、レンタルBDを昨年の9作品から今年は23作品に拡大。このうち20作品が劇場用映画作品だという。旧作では、伊丹十三監督作品やアカデミー賞受賞作など注目作のBD化を進める。「邦画のレンタルは、BDの比率が13%程度と低いが、(これまでの活動によって)今年は邦画メーカー全体でレンタルにも魅力的なコンテンツを提供していける。2011年は23タイトルだったが、2012年は57タイトルをレンタル向けに提供し、BDの比率を30%まで上げたい」(東宝)。

DEGの目標。2013年度に構成比でDVDを逆転する

 DEGが掲げた目標は、2012年度にパッケージソフトの構成比でBDが40%超となること。「それができれば、2013年度に構成比でDVDを逆転することも可能。2014年度にはシェア70%超として、メディアの切り替えを完了したい」とワーナーの福田氏。「パッケージコンテンツ市場はまだまだ大きな可能性を持っている。全力を挙げて取り組んでいく」と意欲を示した。

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