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グランプリ「山猫」の衝撃――ブルーレイ大賞の舞台裏(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/3 ページ)

» 2012年02月24日 16時12分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 2月15日にDEGジャパンが主催する「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」の受賞作発表と授賞式が開催された。グランプリに輝いたのは、1963年公開の「山猫」。AVファンにはよく知られた高画質ディスクだが、多くの新作をさしおいて半世紀も前の“旧作”がグランプリをとったことは各方面に驚きをも持って受けとめられた(→DEGジャパンのブルーレイ大賞発表、グランプリは“旧作”?)。審査委員長を務めるAV評論家・麻倉怜士氏に、選考の経緯や今年の傾向について詳しく話を聞いていこう。

グランプリを獲得した「山猫」と麻倉怜士氏

――今年も「DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」が決まりましたが、グランプリを取ったのが「山猫」というのは驚きです。授賞式に参加したコンテンツメーカーの方々も、かなり驚いていました

2011年にもっとも売れたBDは「スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX」(販売元:20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン)

麻倉氏:ブルーレイ大賞は、2011年に発売されたBlu-ray Discの中から、ディスクの特長を生かした作品を表彰するアワードです。私は審査員長として過去4回すべてを見てきましたが、実は今年から発表のシステムを少し変えています。これまでは受賞メーカーに対して事前に告知していたのですが、今回から事前報告をやめました。ですから、なおさら衝撃が大きかったということでしょう。

 20世紀フォックスは「スター・ウォーズ」6部作を収録した「スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX」で「審査員特別賞」を受賞しましたが、今回は担当の方も“茫然自失”といった状況でしたね。審査員特別賞というのは、“落選してしまったけれど、素晴らしいので受賞させたい”という、いわば残念賞(?)のようなもの。グランプリの直前に発表されるので、ここで作品名が挙がった瞬間、“グランプリを逃した”ことが分かってしまうのですね。

 スター・ウォーズのコンプリートBOXは、昨年9月に発売されて2011年の年間販売数で1位をとった作品です。20世紀フォックスとしては当然グランプリを狙っていたはず。授賞式でも「グランプリを受賞したときのために書いてきたあいさつの原稿が使えなかったので残念です」と話していましたね。

――最も売れたBlu-ray Discをさしおいてグランプリを受賞した「山猫」は、昨年末の「麻倉怜士のデジタルトップ10」で第7位に入った作品です

麻倉氏:そうです。「山猫」は、1963年製作のイタリア映画で、ルキーノ・ヴィスコンティ監督の世界的な遺産というべき名作です。しかし、グランプリといえば、常識的には新作が選ばれるものです。その年の最高の作品が表彰されるのが慣習だったはずです。DEGジャパン・アワードでも第1回が「ダークナイト」、第2回は「崖の上のポニョ」、第3回は「アバター」と、その年の代表作がグランプリを獲得しています。もちろん、山猫も「今年リリースされたBlu-ray Disc作品」という条件を満たしてはいますが、半世紀前に制作された作品がグランプリを獲得したのは、極めて異例です。

表彰式の様子

 山猫のグランプリ受賞は、(審査委員会で)ほとんど満場一致で決まりました。グランプリは、部門賞をとった作品の中から選ばれます。今年はそれが「ベストレストア/名作リバイバル賞」から選ばれたのです。ベストレストア賞はノミネート作が、「ベン・ハー」「ウェスト・サイド・ストーリー」「山猫」という強力なメンツでしたから、接戦になるかと思いきや、山猫が圧倒的に支持されました。

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