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一皮むけた4Kテレビ、東芝「55XS5」で“4Kの痕跡”を味わう山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2012年06月22日 12時00分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 家庭用として初めてQFHD(Quad Full High Definition)パネルを搭載した“4Kテレビ”、東芝レグザの「55X3」。昨年の暮れに登場したこのモデルの後継機「55XS5」が間もなく発売される。"Quad Full High Definition"というのはフルHD解像度の4倍という意味。フルHDの約207万画素(1920×1080ピクセル)に対し、約829万画素(3840×2160ピクセル)表示を行うテレビというわけだ。

フルHDの4倍にあたる3840×2160ピクセル(約829万画素)のQFHD液晶パネルを搭載した東芝「55XS5」。6月下旬発売予定で、価格はオープンプライス。店頭では75万円前後になる見込みだ

 どちらも同じ55インチの4K液晶テレビだが、初代機55X3と今回の55XS5の違いは大きく2つある。まず55X3が備えていた裸眼3D表示機能「大画面グラスレス3D」が省かれて2D専用機になったこと、そしてパネルが55X3の直下型バックライトから上下エッジバックライトに変更されたことの2つである。

「55XS5」の画面を入念にチェックする山本浩司氏

 実際に本機55XS5で、さまざまなBlu-ray Discの映画ソフトを観てみたが、4K表示ならではと思える高精細感とテクスチャー表現の豊かさが味わえ、これはまさに眼福だと思った。55X3では裸眼3D用にパネル表面に偏光切替えシートとレンチキュラーシートが貼られていたが、2D専用機の55XS5ではそれらを取り除くことができ、よりいっそう解像感が上がった気がした。

 ところで、さまざまな映画ソフトを観ていると、その4K高解像度効果が著しい作品と、さほどでもないものがあることに気づく。自分の視力が上がったのではないかと思えるほど高精細に見える前者のBD作品を列挙してみると、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「山猫」(1963年)、ロバート・ワイズ監督の「ウェストサイド物語(1961年)、パウエル&プレスバーガー監督、ジャック・カーディフ撮影の「赤い靴」(1948年)、ヒッチコック監督の「To Catch a THief(泥棒成金)」(1955年、米国盤)など、映画黄金時代の歴史的名作群がある。

画質の評価が高いリストア作品の代表格、Blu-ray Disc「山猫」(販売元:紀伊國屋書店)価格は7560円

 調べてみると、すべて65ミリ大判フィルムや三色法テクニカラーフィルムのマスターポジを4K(「山猫」は8K)スキャンし、デジタルデータ化したうえでレストレーション(修復)作業を行って4Kマスターを起こし、そこからブルーレイ化したものばかり。つまり、膨大な時間と予算を使ってていねいに4Kマスターが制作された作品というわけで、それらを55XS5で観ると、4Kの「痕跡」というか「残り香」が、濃厚に漂ってくるのである。

 例えば、「To Catch a THief(泥棒成金)」でケイリー・グラントの着るサマーウールやフラノのジャケットの毛羽立ちや顔のしわ、グレース・ケリーの着るシルクのドレスの微妙なテクスチャーの表現力は、4K表示機器の最適視距離とされる1.5H(画面高の1.5倍)近くまでにじり寄って観ると圧倒的というほかなく、隣に同サイズの液晶テレビを並べてごらんになれば、誰もが本機の4K表示能力の凄さを納得するのではないかと思う。

 では、なぜ本機で観る4Kマスタリング映画BDの画質は凄いのだろうか。55XS5に採用された「レグザエンジンCEVO Duo」の「4K2K超解像技術」にその秘密が隠されているのは間違いないはずだが……。その詳細を、今回の取材で同社技術陣に聞くことができたので、できるだけ分かりやすくその内容をご紹介したい。

今回、取材に応じてくれた東芝技術陣(右)。左から映像システム技術担当の住吉肇氏、画作り担当の永井賢一氏、そして東芝ソフトウェア技術センターの西岡竜大氏

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