KDDIのケータイ2001年戦略(下)──この秋に迫るcdma2000

ドコモが5月にIMT-2000を導入し,最大384Kbpsの通信速度を可能にするのに対し,KDDIは「1x MC」を使ってまずは144Kbpsのデータ通信を実現する。利点は,低コストでそれが実現できることだ。

【国内記事】 2001年1月24日更新

 前回は,Java,Bluetooth,液晶,着信メロディ,SIMカードなど今後の携帯電話の進化に大きく関わる技術を,KDDIがどう捉えているのかを紹介した(1月23日の記事参照)。続いて,これからの携帯電話の最大の変化であるデータ通信速度について,KDDIのロードマップを見ていこう。

 現在のケータイの通信速度は,とても高速とはいえない状況だ。回線交換と呼ばれる,データ通信中ずっと回線が占有される方式では,最大シェアを持つNTTドコモのPDC方式の携帯電話は9.6Kbps,PHSでも最大で64Kbpsと有線に比べると低速だ。今後の無線データ通信の主流と目されるパケット通信においても,iモードなどで利用されているDoPaは1チャンネルの場合で9.6Kbps,auがPacketOneとして64Kbpsを実現しているに留まる。

 携帯の技術的な最大の変化である通信速度の高速化。これが,IMT-2000の特徴の1つでもあり,第3世代といわれる要因でもある。IMT-2000時代のデータ通信について,KDDIのロードマップを見ていこう。

データ通信──まずは1x MCで144Kbps

 もともとcdmaOneはクリアな音声通話が最大のポイントだった。しかし,最近ではKDDIはその点をほとんどアピールしていない。評価のポイントは,各キャリアともデータ通信に移ったもようだ。

 データ通信では,KDDIは技術的に進んだ位置にいる。既に64Kbpsのパケット通信を実現済みであり,同社のコンテンツサービスであるEZwebでも高速な通信速度が魅力の1つとなっている。

 NTTドコモが,最大384KbpsといわれるIMT-2000のサービスを開始するのが2001年5月。対するKDDIはどのようにデータ通信を高速化していくのか。

 KDDIが予定しているcdma2000と呼ばれるサービスは,当初「1x MC」(用語解説)という方式で通信速度144Kbpsを実現する。2001年秋に,東名阪,京都で導入予定だ。周波数は現状と同じ,800MHz帯を利用する。「2002年の末までに,全国95%をカバーできるくらいのスケジュールで作業を進める。一年と少々で全国展開できるはず」(KDDI)

 ほかのキャリアと大きく違うのは,サービス提供地域外での扱いだ。例えば,ドコモの「FOMA」(200年11月30日の記事参照)の場合,PDCとのデュアル端末でない限り,IMT-2000のサービス外に出てしまうと利用できなくなる。1X MC対応の端末の場合,最低でもcdmaOneとして64Kbpsのサービスが利用可能だ。KDDIではシームレスなネットワーク展開ができるのが強みだという。

 もう1つの1x MCの利点は,比較的安価に導入できることだ。ドコモの場合,IMT-2000はDS-CDMAと呼ばれる,これまでのPDCとは全く異なる方式で用いるため,新たに基地局を設置するところから始めなければならない。1x MCの場合,現在あるcdmaOneの基地局の改造で済む。「イメージ的には,基地局に1x MCのボードを追加するようなもの」(KDDI)

 設置コストは,最終的にユーザーに跳ね返ってくるものだ。ドコモの場合,IMT-2000への設備投資に1兆円ほど必要になるといわれている。「cdma2000の場合,5000億円くらいで済む。ほかに比べると安価にアップグレードでき,柔軟性が高い」(KDDI)

その後は最大2.4Mbpsまで──1x HDRは?

 ちなみに,KDDIが言うところのcdma2000は,IMT-2000とは違う。IMT-2000では2GHz帯を利用することになっており,KDDIでは2002年秋に1x MCを2GHz帯で利用することでIMT-2000へと移行する。「(cdma2000は)IMT-2000ではないが,次世代サービスであることには間違いない」(KDDI)

 もう1つ,非常に高速なデータ通信形式をKDDIは検討中だ。「HDR」と呼ばれるこの方式は,データ通信に特化し,最大2.4Mbpsのデータ通信速度を実現するといわれている(用語解説)。

 KDDIでは,HDRの導入を決めてはいないとしながらも昨年から実証実験を行っている。「HDRは入れるとしても2003年くらいになる。近いうちに,採用する,しないという発表はできるはず」(KDDI)

 HDR自体はデータ通信専用の技術だ。携帯電話に搭載するとしたら,cdmaOneとのデュアルモード端末を使うか,音声通話自体をIP化してVoIPという形をとるしかない。「ドコモの384Kbpsには,1x MCの144Kbpsでまだ競争できる」(KDDI)

位置情報の利用──「gpsOne」利用も2001年中

 KDDIは,「EZナビゲーション」という名称で位置情報を利用したコンテンツサービスを提供している。PHSでは多くのキャリアが位置情報関連のサービスを行っているが,携帯電話では数少ない。

 EZナビゲーションでは,現在基地局の情報で位置情報を出している。ただし,基地局は都市部と郊外では設置密度が違うので,場合によっては100メートルくらいの誤差が出ることもある。KDDIでは,2001年中にクアルコムのチップに載っている「gpsOne」という機能を使い,GPS衛星からの情報も使って誤差が10〜10数メートルの位置情報を提供していく予定という。「GPSの情報と携帯の基地局の情報を両方使う。衛星が見えない場合は,基地局を衛星と見立てて位置を計算する」(KDDI)

互換性?先進性?──auはどこへ向かう?

 CDMA技術をいち早く導入したことを生かし,IMT-2000に関しても現在の設備を増強する形で,KDDIは漸進的に進んでいく。では,ドコモを追い抜く算段はどうなのだろうか。「FOMA(ドコモのIMT-2000)と同じ形でやっていたのでは,事業者として勝てない。ユーザーに迷惑をかけない形で面白い機能を付け加え,差別化を計っていきたい」(KDDI)

 auの端末は,自社のパンフレットで「面白いほうの携帯」と呼ぶように,次々と新しい技術を取り入れてきている。その反面,新端末が出るたびに「これまでと互換性がない」と批判されることもたびたびあった。「着信音などはコンテンツプロバイダとのやり取りの中で負担になっている部分もあるかもしれない。だが,できるだけ上位互換という形で最新の技術を入れて,斬新性を高めていきたい」(KDDI)

 IMT-2000時代はもうすぐ始まる。設備技術の面ではKDDIはこれまでの資産を生かしつつ,柔軟なアップグレードを考えている。逆にコンテンツサービスの面では,たとえこれまでのものと互換性が減少しても,最新の技術を導入していく構えだ。データ通信速度が高速になったとき,ユーザーから支持されるのはコストなのか,コンテンツなのか。

関連リンク
▼ au KDDI

[斎藤健二,ITmedia]

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