ケータイの日本語入力は進化する──T9日本語版に新バージョン

ケータイの文字入力は面倒? 欧米では「T9」という入力方式を使い簡単に文字が入力できる端末がある。世界標準を名乗るT9は,日本語版の投入を着々と進めている。

【国内記事】 2001年2月6日更新

 iモードの月当たりの平均パケット通信料は,1人2000円を超えるという。ドコモの発表によると,1日に7通あまりの電子メールを送受信するのが平均的iモードユーザーだ。

 こういった数値を挙げなくても,携帯電話でメールをやり取りするのは一般的になってきた。電車の中,街角で,通話するのではなく携帯を“操作”している光景を見かけることは多い。

 “ケータイ最先端の国”として,世界の先頭を走ると思われている日本だが,携帯電話でメールを書くことにかけては,欧米のほうがはるかに進んだ面があることをご存じだろうか?

世界中で使われる「T9 Text Input」

 テジックコミュニケーションズが開発した「T9 Text Input」は,もともとは身体の不自由な人が文字を入力するために開発されたものだ。転じて,携帯のようなキーの少ないデバイスでも快適に文字入力ができる機能として,1998年に欧州で携帯電話に採用された。

 その後,欧米の言葉はもちろん中国語,アラビア語など約20カ国語に対応し,日本語版も登場している。約28社の携帯電話メーカーにライセンスし,テジックによると「対応端末は欧州で35%くらいのシェア」だという。

 T9のシステムは,文字の入力回数を極力減らそうとするもの。「健二」と入力するには,「カ」「ワ」「サ」「¨」という順に入力すれば,入力された語の取り得る組み合わせを辞書が判断し,「ケンジ」「カンジ」……などと候補が表示される。そこから漢字変換を経て「健二」にたどり着く。「け」を入力するのに4回もキーを叩いていたが,T9なら1回押せば済むわけだ。

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 実際に,BenefonのGSM端末に組み込まれたT9を試したが,驚くほど快適な入力だった。何しろ一文字につき,キーを押すのは1回でいいのだ。「欧米から日本に帰ってきて“日本の携帯は文字の入力が面倒”と嘆く人もいる」とテジックが言うのもうなずける。

採用にはカベがあるが……

 その利便性にもかかわらず,日本ではT9を搭載した端末は発売されていない。学習機能やユーザー辞書のメンテナンスなどインプットメソッドの基本をきっちり押さえてきたにもかかわらず,端末メーカーは採用を渋る。

 「携帯電話では,各機能がメモリの奪い合いをしている」(テジック)。現在の携帯電話は多機能化が進み,4Mバイト程度のフラッシュROMは普通に搭載してきている。しかし,そのメモリ容量をアドレス帳や着信音データ,Webのブックマークなどで奪い合っている状態だ。503iシリーズから搭載されたJavaなどの新機能も,メモリをたくさん必要とする。

 T9は約6万5000語を収録した辞書を持ち,ROMとして1Mバイト,RAMを約20Kバイト,学習結果の記録用に10Kバイトのメモリが必要だ。さまざまな機能がメモリを取り合っているなか,T9は現在のところ分け前にはありつけていない。

日本語入力に対する需要は?

 とはいえ,快適な日本語入力に対する需要は確実にある。そして,携帯電話のCPUの速度向上と搭載メモリの増大によって,高性能なインプットメソッドの採用が可能になってきた。

 すでに実用化されているケータイ向けインプットメソッドだけでも,これだけある。auのC406Sに採用されているソニーの「POBox」(2月1日の記事参照),Palmなどで製品化された信濃富士通の「SH-Key」,PC用として製品化されているミサワホームの「CutKey」(ミサワホーム)。

 ライバルが多いなか,T9の有利な点も多い。1つはすでに欧米を中心に多くの実績があること。そして,採用に当たってキートップの変更がいらないことだ。CutKeyやSH-Keyは魅力的な入力法なのだが,キーの刻印が従来のものと異なっている。「印刷を変えるだけ」と言えばそのとおりなのだが,プログラムを入れるだけで動作するT9のアドバンテージは大きい。

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▼ C406SのPOBox

[斎藤健二,ITmedia]

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