CLIEは何を目指すのか?──拡張性で先行するソニー

新しいCLIEを見ていると,独自にPalm OSを拡張し,ほかのPalm OSライセンシーとは違った方向に発展させようとしているように見える。

【国内記事】 2001年3月15日更新

 ソニーは3月14日,新型「CLIE」を発表した(詳細記事)。新しいCLIEを見ていると,ザウルスやPocket PCと見間違いそうだ。ソニーはPalm OSをどこに持っていこうとしているのだろうか?

独自拡張の多いソニー

 今回のCLIEで特徴的なのは,同じくPalm OSのライセンシーであるHandspringの「Visor」シリーズや,IBMの「WorkPad」シリーズと異なり,積極的にPalm OSの拡張に取り組んでいることだ。もちろんVisorも「SpringBoardモジュール」などの拡張を独自に行ったが,ソニーが行った独自拡張は数多い。

  • メモリースティックのサポート
  • ジョグダイヤルのサポート
  • 4倍の解像度のディスプレイ
  • 音楽再生機能

 ソニーのパーソナルITネットワークカンパニー,インフォメーションテクノロジーカンパニーのプレジデントである木村敬治氏は,「PalmがPockt PCに向かっているのではないことは(Palm OS採用機メーカーの)共通認識」と語るが,“Palmが頑なに守ったシンプルさ”はスペック上からは完全に消えた。液晶の解像度は独自に拡張され,音楽再生の機能まで付いてしまった。

 しかも,高解像度ディスプレイなどの仕様は「(Palm OSの規格に盛り込むために)現在Palmと話をしている最中」だと,木村氏は語る。Palmが公式に表明している「Palm OS 5.0でディスプレイを高解像度化」に先駆けて,独自に実装を行った形だ。

 “ソニーらしい”拡張を施すことで,コンシューマーに向けた用途提案はしっかりと成された形だが,“音楽再生”や“テレビ映像の再生”“液晶の高解像度化”はザウルスが既に成し遂げていることばかり。

 実際,CLIEでは録画したテレビを視聴できるわけだが,MPEG-4動画を再生できるザウルス「MI-E1」に比べると,画質が見劣りすることは否めない。

Palm OSにこだわる理由とは?

 ザウルスのように独自のOSとハードウェアを使えば,動画再生も音楽再生も難なく搭載できただろう。ソニーが,標準のPalm OSを逸脱してまで苦労してPalm OSの拡張にこだわるのはなぜか。

 木村氏は,Palmのバランスのよさ,デベロッパーの数などを魅力として挙げるが,Palm OSを採用したことによるメリットとデメリットの狭間で揺れ動いている印象だ。Palm OSのブランドとシェアを活用しながら,いかにソニーらしい機能を盛り込んでいくか。そこに苦心がある。

 実際,CLIEには“Palm OS”という縛りがあるために,CPUもDragonballという時代遅れのものを使わなくてはならない。「○○の機能がどうして入っていないのですか?」という質問に,ソニーは「現在の非力なCPUでは……」と何度も苦々しく答えている。

 木村氏は「(WebClippingなど)いいものが出てくれば対応する」と,Palm OS対応機であることを目いっぱい活用する構えだが,新CLIEには“それを待ってはいられない”という焦りも感じられる。

Palmである限り,PCの存在は必須だが……

 今後のCLIEはどんな方向へ向かうのだろうか? 1つはCPU能力の向上だ。マルチメディア系の機能を充実させるには現在のCPUでは力不足。ATRAC3の音楽再生のためにDSPを搭載したように,動画の再生のためにMPEG-4デコードチップを搭載する手はある。しかし,それはさらなるPalm OSの独自拡張を意味している。

 もう1つは,CLIE単体での動作だ。Palm OSはPCと連携することで最大の使い勝手を実現する。CLIEも,動画を見るにも,音楽を聴くにもPCとの連携が必須だ。

 しかし,世界の潮流がアプライアンスに向かっている現在,“PCがなければ使えません”では時代遅れになるのは時間の問題。CLIEも当然単体でインターネットに接続し,PCなしでも活用できるツールになる必要がある。

 「(CLIEが)単体でネットにつながるというのは,我々が大きな目標として目指しているところだ」(木村氏)

 そのための第一歩として,CLIEが採用したのが,Bluetoothだった。

 しかし,単体でネットに接続できるデバイスとしては,日本では携帯電話がPalm OS機を遥かに凌ぐシェアを持っている。米国ではPalm OSに勝ち目もあるだろう。しかし,日本では遅れてきたPalm OS機が携帯電話に勝利できるのだろうか?

 新CLIEのライバルは何か? という質問に,木村氏は「携帯と言わせたいのだろうが……」と苦笑する。「携帯には携帯,Palmにはこのフォームファクター。2つは共存する」と語る木村氏。しかしそこには携帯を仮想敵として見据える表情があった。

 携帯電話に対するPalm OS機のメリットは,Palm OS自体の実績と,大きな液晶である。これを最大限に生かそうとした結果が,今回のCLIEの機能に表れている。

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[斎藤健二,ITmedia]

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