“5倍長持ち”ニッケル乾電池は,PDA,携帯にも!?

東芝電池の5倍長持ちする新電池,ニッケル乾電池が“デジカメが!”と謳っているのには訳がある。携帯やPDAで5倍の時間使えるわけではない。ただし携帯やPDAでも,そろそろ1次電池的な発想が出てきてもいいのかもしれない。

【国内記事】 2001年12月5日更新

 東芝電池が発表したニッケル乾電池「GigaEnergy」は,アルカリ乾電池に比べて“5倍長持ち”することを謳った製品だ(12月5日の記事参照)。では,「PDAやポータブルオーディオプレーヤーも5倍長持ちするのか?」と期待したくなるが,話はそう簡単ではない。

“デジカメに特化”の意味

 GigaEnergyは,そもそも単三電池が最も多く使われているデジタルカメラ向けに特化して作られた。その意味を簡単にいうと「デジカメで使った場合,持っているエネルギーをうまく引き出すことに成功した」(東芝電池)ということ。

 デジカメなどで使い切った電池でも,時計などに入れると何日も利用できた……という経験はないだろうか。こういった乾電池は,実は容量が尽きて使えなくなるわけではない。使っていくうちに,最初は1.5ボルト以上あった電圧が徐々に下がっていき,ある一定の電圧を下回った時点でその機器が動かなくなる。

 動かなくなる電圧──終止電圧は,機器によって異なっている。デジカメは終止電圧が比較的高く,東芝電池の資料によると電圧が1ボルトあたりまで下がったところで動作しなくなる。一方,ゲーム機やMDプレーヤーなどはそもそも低電圧でも動作するように作られており,デジカメで使えなくなった電池──電圧が1ボルト以下にまで下がった電池でも動くわけだ。

 数々の新技術が使われているGigaEnergyだが,実はエネルギー密度自体はアルカリ乾電池と大差ないという。異なるのは,放電電圧が安定しており,容量が残り少なくなるまで高い電圧を維持できる点にある。

 つまりGigaEnergyでは持っているエネルギーを最後まで絞り出せるわけだ。逆にいうとアルカリ乾電池は,デジカメではエネルギーをすべて使い切れない。


東芝のデジタルカメラ「Allegretto PDR-M60」を使用した場合の,GigaEnergyとアルカリ乾電池の放電特性の違い。アルカリ乾電池が約81枚撮影した時点で1ボルト程度まで電圧が落ちてしまったのに対し,GigaEnergyではなかなか電圧は下がらない。約419枚を撮影してやっと1ボルト程度まで落ちた

PDAでGigaEnergyは効果を発揮できるか?

 東芝電池はまず単三型から製品を投入し,デジカメでの利用を見込んでいる。今後は単四型の製品も考えているようだ。

 もしも単四型が登場すれば,最もメリットを享受できるのはデジカメメーカーだろう。デジカメの部品の中でもっとも大きさに制約があるのは電池。角形のリチウムイオン電池を使い,小型化を計ったデジカメもあるが,そういった電池は入手性,価格などの面で問題もあった。

 GigaEnergyは「アルカリ乾電池の1.5倍程度の価格」(東芝電池)で,生産量は月産1000万個からスタート。同社のアルカリ乾電池は月産3000万個程度だというから,当初からかなりの数が市場に出回りそうだ。

 低価格で入手しやすい単4型のGigaEnergyが登場すれば,小型デジカメという市場も本格的に立ち上がるかもしれない。

 では,PDAや携帯電話での利用はどうか? 残念ながらこちらは少々厳しそうだ。電池の容量自体は変わらないので,アルカリ電池を利用した場合に比べて,特に長時間利用できるようにはならない。これはポータブルのMDプレーヤーやCDプレーヤーでも状況は同じだ。

先の見えない2次電池に代わるものは?

 携帯電話ではGigaEnergyは効果を発揮できなそうだが,リチウムイオンに代わる“携帯電話用の1次電池”にも需要はあるだろう。

 高機能化に伴って,電池寿命の問題に悩まされている製品は少なくない。NTTドコモの第3世代携帯電話FOMAの端末は,740mAhという大容量のリチウムイオン電池を採用しながら,連続待ち受け時間はたったの55時間(9月25日の記事参照)。しかも,携帯電話の買い換えの理由には,上位に必ず“バッテリーのもちが悪くなったから”が入る。

 しかしリチウムイオン電池にはもう大きなブレイクスルーはなさそうだ。エネルギー密度の向上は,年率10%程度とゆっくりとしか進まない。そろそろ次世代の電源が求められる時期にきている。

 解決法の1つとして,リチウムイオンのような高価な2次電池(充電可能な電池)ではなく,乾電池のような1次電池(使い切りの電池)を使うという方法もあるかもしれない。リチウムイオンよりも長時間利用できる,安価な1次電池がコンビニなどで気軽に買えるなら,リチウムイオンに代わるものになれるかもしれない。

 次世代のエネルギー源として開発が進んでいる燃料電池も,“電池”と名前が付いているものの,充電するものではなく燃料を入れて電気を起こす仕組みのことを指す。

 携帯機器向けにどうやって燃料を提供するかはさまざまな仕組みが考えられているようだが,1つには燃料を封入したカプセルを機器に入れ,燃料が終わったら新しいカプセルに交換するというやり方がある(4月5日の記事参照)。カプセル入りの燃料は,コンビニなどで買えるようになることが見込まれている。

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[斎藤健二,ITmedia]

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