MRAM? FeRAM? IntelがOUMに注力する理由

MRAM,FeRAM,OUMといった不揮発性のRAMは,次世代メモリとして大きな期待を集めている。この中でもIntelはOUMに力を注ぐ。

【国内記事】 2001年12月11日更新

 21世紀のメモリを探って,各社の研究が進んでいる。米Intelの技術・製造本部副社長兼カリフォルニア技術・製造部門ディレクタのStefan K.Lai博士が来日し,Intelのメモリへの取り組みについて語った。


米Intelの技術・製造本部副社長兼カリフォルニア技術・製造部門ディレクタのStefan K.Lai博士

今日のメモリ技術の限界

 Intelが特化するのは,携帯電話,モバイルPCなどに向けたメモリだ。この分野に使われるメモリは,低価格で低消費電力,不揮発性,ロジック回路との混載などといった特性を要求される。

 「(電流を流すことなく内容を保持できる)不揮発性メモリなら,低消費電力を実現できる。小型で低コストを実現するにはロジック回路との混載が必要だ」(Lai博士)

 現在の携帯電話やPDAなどでは,DRAMやSRAM,フラッシュなどのメモリを組み合わせて利用している。揮発性のメモリは読み書きの速度が高速だが,「DRAMは,ロジック回路との混載が難しい。SRAMは混載するのは簡単だが,6つのトランジスタで1つのメモリセルを構成するためコストが高い」。また,「不揮発性のフラッシュは書き込み・読み出し速度が遅く,どちらかというと読み出しのみのメモリ」だと,Lai博士は,それぞれのメモリの問題点を説明する。

 これらの問題を解消できるのではないかと期待されているのが,Intelが7月から研究を続けているOUM(Ovonics Unified Memory)だ(7月13日の記事参照)。

IntelがOUMに注力する理由

 OUMは不揮発性で,かつ書き換え速度が高速。不揮発性のフラッシュと,速度は速いが揮発性のDRAM,SRAMの間のギャップを埋めるメモリとして期待しているとLai博士は言う。

 ただし不揮発性で高速なのはOUMだけではない。IBMやMotorola,Infineonなどが取り組むMRAM(2000年12月の記事参照),NECや日立,富士通,松下,Micronなどが取り組むFeRAMもある。FeRAMは非接触ICカード向けに既に出荷されている。

次世代不揮発性RAMの特徴

MRAMFeRAMOUM
最も高速な読み出しと書き換え高速な読み出しと書き換え高速な読み出しと書き換え
書き込み回数無限書き込み回数10の12乗サイクル書き込み回数10の12乗サイクル
非破壊的読み出し破壊的読み出し非破壊的読み出し
特別なプロセス特別なプロセス混載に適したプロセス
セルサイズ大セルサイズ大セルサイズ小

 3種類のメモリはそれぞれ異なった特徴を持つが,「(Intelは)モバイル系に使えそうなテクノロジーにフォーカスした」と,Lai博士はOUMへ期待を示す。

 MRAMは高速だがコストが高く,ロジック回路との混載にも向かない。FeRAMは既に実用化されているが,コストが高く,データを読み出す際にその値に影響を与える「破壊的な読み出し」を行うためメインメモリには向いていない。

 「例を挙げるなら,スマートカードには(3つの内で)低消費電力のFeRAMが向いているし,ハイパフォーマンスのサーバなどでスピードの速いキャッシュメモリとして使うにはMRAMが最適だ」(Lai博士)

 多くの半導体メーカーが取り組むMRAMやFeRAMではなく,IntelがOUMに注力する理由は2つあるだろう。1つは,得意とするロジック回路との相性がいいことだ。StrongARMやXScale(2000年8月の記事参照)で,モバイル機器のCPUでも覇権を狙うIntelとしてはロジック回路と組み合わせやすい不揮発性メモリは大きな武器になる。

 もう1つは,競争過多で最近撤退が相次ぐDRAMの後継メモリ競争に足を踏み入れるよりも,好調なフラッシュメモリのビジネスモデルを引き継げるメモリをやりたかったということだ。

2003年以降に期待

 Intelは今年の7月に,OUMを中心とした次世代メモリの研究を進めていることを明らかにした。現在は基本的なセルの性能と特性を理解するための基礎データを収集している段階だ。既に0.18マイクロメートルプロセスで製造した4Mビットテストチップを製造済みで,続いて0.13マイクロメートルプロセスへの移行を進めている。

 期待の新メモリが登場する時期に関しては明らかにされなかったが,「(現行のフラッシュメモリである)ETOXは1983年に開発を始めて,製品化できたのは1987年。ストラタフラッシュも製品化には3年以上かかっている。OUMは完全に新しい材質を使うのでさらに難易度が高い」とLai博士は言う。

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[斎藤健二,ITmedia]

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