携帯からPDA,PCまで──ネットワークで同期するプーマテック「Sync-itサービス」プーマテックが構想する「Sync-itサービス」は,ISPやキャリア,デバイスメーカーやソフトメーカーを巻き込み,ユーザーにデバイスやソフトウェアに依存しない,データの共有化を実現しようとするものだ。
プーマテックジャパンは12月12日,さまざまなデバイスで情報共有を可能にする「Sync-it」サーバ技術を核としたネットワークビジネスシステム,「Sync-itサービス」を発表した。 Sync-itは,ネットワークを介して各種デバイスやソフトウェアのPIMデータを同期させる技術。プーマテックは,課金システムを持ったパートナーに有料でSync-it技術をライセンスし,パートナーがエンドユーザーに有料でサービスを提供する。 Sync-itサービスは,オープンなインタフェースを持っており,デバイスメーカーやソフトウェアメーカーは無償提供されるSDKを利用し,Sync-itへ対応することが可能。さらにWeb上のコンテンツプロバイダには,イベントの情報やレストラン情報などをユーザーのPIMに送り込める「Sync-itボタン」技術を提供。コンテンツプロバイダは無償でSync-itボタンを設置することができる。 プーマテックの狙いは,Sync-it技術の普及にある。対応機器やソフトウェア,対応Webサイトを増やすことで,インターネット上の同期技術の標準化を目指す。
すべてのPIMは同期されるSync-itサーバが中心となり,インターネットを介して携帯電話やPDA,PC,さらには企業内のNotesやExchangeやWeb上のPIMまでが接続され,相互にPIMデータが同期される。それがSync-itアーキテクチャの概要だ。 これまで個人情報は,ネット上のPIMサービスをはじめ,携帯電話のPIM,PDA,OutlookなどPC上のPIMソフトと,デバイスやソフトウェアごとに,バラバラに管理されていた。これらをオープンなインタフェースで接続し,どのデバイスにデータを入力しても,データが共有できる──これがSync-itサービスがもたらす世界だ。 プーマテックの荒井真成社長は「結果としてすべてのPIMがシンクロ(同期)される」と表現する。
この仕組みを1社で構築しようと思ったらたいへんなことだ。プーマテックは,自社ですべてのシステムを用意するわけではなく,多くのパートナーと共にシステムを構築する道を選んだ。 この仕組み──Sync-itサービスは,ISPやポータル,キャリアなどの会員保有組織,携帯電話やPDAなどのハードウェアメーカー,グループウェアやPIMソフトなどのソフトウェアベンダー,チケット販売やニュースサイトなどの各種情報提供サイトといったパートナーによって成り立つ。 それぞれの役割は以下の通りだ。
プーマテックは基本的にSync-itサーバの運営のみを行い,エンドユーザーにサービスを提供するのは会員保有組織となる。Sync-itサービスを提供する最初の会員保有組織となるのは,「SharpSpaceTown」(SST)を運営するシャープ。シャープは「ホッとPIM」というサービスを会員に対して月額500円で提供し,プーマテックはシャープからライセンス料を受け取る。 ハードウェアメーカーやソフトウェアメーカーは,無償で提供されるSDKを用いて自由に自社のハードをSync-it対応にすることができる。 各種情報提供サイトは,仕様が公開されている「Sync-itボタンをサイトに設置することで,ユーザーがそのボタンを押すとサイト内の情報をユーザーのPIMに登録することができる。例えばイベント情報サイトを訪れたユーザーは,Sync-itボタンを押すだけで自動的にPIMに目的のイベントの日時や場所が登録される。 Sync-itサービスに参加する企業にしてみれば,自社ですべてを開発する必要はなく,Sync-itサーバに接続する部分のみ開発すればいい。ハード,ソフトメーカーでは“データの共有化”というメリットを,情報提供サイトも,情報をプリントアウトしたり手帳に書き写す手間を省けるというメリットをユーザーに提供できることになる。 しかも新規に参入する組織は,既存の組織が提供しているデバイスやソフトウェアという資産をすぐに活用できる。
キーとなるのは対応機器,ソフトの数Sync-itサービスが順調に参加組織を伸ばすには,利用ユーザーの数と,対応機器および対応ソフトウェアの増加が不可欠だ。 シャープのSSTは会員数30万人。シャープSST推進センターの谷口実所長は「今後1年で会員数を50万人に伸ばし,うち10万人を目処に「ホッとPIM」会員を確保していきたい」と語る。 プーマテックはシャープ以外の会員保有組織にもサービスを売り込んでいく。法人もそのターゲットの1つだ。「携帯キャリアも含めて戦略的に提携を進める」(荒井社長) 対応端末の増加にも積極的だ。現在のところ,携帯端末としてザウルス「MI-E21」「MI-L1」「M1-E1」「MI-C1」「MI-P10」「MI-EX1」が対応済み。パームコンピューティングは発表会にこそ現れなかったが「プーマテックと密接な協業を進めていく」とコメントしている。「今後,PalmデバイスやPocketPCにも対応していく」と荒井社長。 圧倒的な端末数を持つ携帯電話については,キャリアへの導入を狙うと共に,個別の端末についても対応を進める。携帯向けのJavaで技術力を誇るケイ・ラボラトリーは,携帯Java版のSync-it対応ソフトウェアを開発中だ。ケイ・ラボラトリーの真田哲弥社長は,現在携帯向けのJavaにはキャリアによって「(Javaアプリケーションから)直接電話できないなどの制約がある」としながらも,2002年春にはJava版をリリース,2002年中にはフル機能を備えた組み込み用ソフトウェアも端末メーカー向けにリリースする予定だ。 PC上のPIMソフトについては,現在Outlook 98/2000/2002に対応。またクレオは年賀状ソフト「筆まめ」へ対応を行っている。 Sync-itサービスが思惑通り業界標準のデータ同期システムとなれば,ユーザーはどんなデバイス,どんなソフトウェアを利用していても,同じデータを利用できることになる。さらにWeb上の情報も,別途入力し直すことなくPIMに登録できる。 同じようなサービスを実現しようとしているMicrosoftについては,「.NETの構想自体がまだ始まったばかり。プーマテックはデータの同期技術について長年の経験と実績がある」と荒井社長はコメントする。また「MicrosoftのActiveSyncエンジンは,Microsoftの持っているプラットフォーム同士を結びつけていこうというものだ。サービスが成功するカギは,“いつでもどこもでも誰とでも”にある」と,特定のプラットフォームに限らないSync-it技術の優位性を強調した。
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