Pocket PCで疑似的常時接続を可能にするNECのWake On Ringシステムとは

「Wake On Ring」は，Pocket PCなどのPDAにデータ通信カードを挿しておくだけで，携帯電話のようにメールなどの情報着信を知らせてくれるシステム。日本ではアイコンがシステムを開発しているが，NECでも同様のソリューションを開発している。

【国内記事】

2001年12月13日更新

　NECが来年1月以降に発売するPocket PC「PocketGear」には，Pocket PCなどのPDAにCF型データ通信カードを挿しておくだけで，携帯電話のメールのように着信を知らせてくれる「Wake On Ring」というシステムに対応するハードウェア回路とミドルウェアがあらかじめ搭載されている。サーバ側に情報をプッシュするためのミドルウェアが搭載されていれば，CFカード型データ通信カードを挿したPocket Gearで，携帯電話のメールを受けるように情報の通知を受けることが可能だ。

NECのWake On Ringシステムはクライアントにサーバ的役割を持たせる

　現在，PDA向けプッシュ型システムを開発しているのがアイコン (11月16日の記事参照) とNEC。両社の開発するシステムの違いについてNECネットワークスの有賀健一氏とNECソリューションズの廣瀬剛司氏に話を聞いた。

　NECが開発するWake On Ringシステムは，電波状態をユーザーが気にせずに情報の送受信が行えることを目的として開発されているという。「電波はどこでも通じているわけではない。しかし，見かけ上いつもつながっているような感覚で利用できるようにしたい」 (廣瀬氏)

　そのために同社がサーバとクライアント用に開発中なのが「Pocket Cache」 (仮称) というミドルウェアだ。これはクライアント側のキャッシュにデータを入れておくと電波の状態がよいときに自動的にデータをサーバ側に送信したり，サーバ内にクライアントに送るデータがある場合には，ユーザーが受信操作を行うことなく自動的にキャッシュにデータを送ったりすることができる。

　例えば電波が入っていないときでもメールを書いて送信ボタンを押しておけば，電波が入る状態の場所に出たときに自動的にメールが送信される。メールの受信についても，送信されたメールを端末が自動的にキャッシュ内に保存，電子メールソフト (サードパーティ製のものも含む) を設定しておけば，意識的にインターネットにアクセスすることなくメールを閲覧できる。

　これは，自動的に電波状況をクライアントが認知して受信を行うわけではない。サーバ側の設定で，送信の際のリトライの感覚を短くすることで，自動に近い状態を実現している。また，大きなファイルをダウンロードしている最中に電波障害により中断されても，次回アクセス時には続きからダウンロードされるため，料金のムダをなくせるという。セキュリティには「SSLと同等のものが用意されている」 (有賀氏)

　開発中の同システムで，現在利用できるのはメールの送受信に関わるプッシュ機能のみ。「既にシステムとしての根幹部分はできあがっている。Web情報や在庫管理，株価情報の取得といった機能も実装できるが，そこは製品のターゲットとなるISPやASP，企業との話し合いの中でカスタマイズすることになる。それぞれの機能に対応した追加モジュールがサーバ側にもクライアント側にも必要になる」 (廣瀬氏)

　このシステムを利用するには，デバイスとPHSカードがハードウェアとして対応している必要があるという。NECのPocetGearはあらかじめ対応しているが，NECによれば，「NTTドコモのsigmarion IIなど，ほかの携帯情報端末にもこの回路が組み込まれているものがある」といい，ほかのデバイスでも同様のサービスを受けられる可能性もある。対応しているPHSは，NTTドコモの「P-in Comp@ct」「P-in m@ster」，DDIポケットの「AirH"Card petit」 (NECインフロンティア製) 。

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[後藤祥子，ITmedia]

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