携帯動画配信,ezmovieがちょっと優勢?

「iモーション」と「ezmovie」。2つのキャリアが2種類の動画配信サービスを開始して数カ月。立ち上がりはどんな状況なのだろうか。数多くの動画配信を手がけるソニー・ミュージックに聞いた。

【国内記事】 2002年1月21日更新

 昨年11月にNTTドコモが動画配信サービス「iモーション」を,12月にはKDDIが「ezmovie」をスタートさせた。動画配信といえば,“次世代携帯電話でできること”の筆頭に挙げられるサービスである。

 スタートから数カ月。携帯向けの動画配信の現状は? そして将来はどうなっていくのか。iモーションならびにezmovieに動画コンテンツを提供しているソニー・ミュージックエンタテインメントに話を聞いた。

iモーション vs. ezmovie

 現在,動画が閲覧できる携帯電話は2機種。ドコモの第3世代携帯電話「FOMA N2002」と,KDDIの“ムービーケータイ”こと「C5001T」だ。

 動画の配信はそれぞれ異なる方式で行われ,互いに互換性はない。

サービス名iモーションezmovie
対応機種FOMA N2002C5001T
ムービーサイズ最大100Kバイト最大240Kバイト(ダウンロード)
動画サイズSub-QCIF(128×96ピクセル)QCIF(176×144ピクセル),Sub-QCIF(128×96ピクセル)
動画コーデックMPEG-4MPEG-4
音声コーデックAMRMP3(ステレオ),QCELP
フォーマットASFMP4

 技術的な面でいえば,動画ファイルサイズを大きく取れるezmovieのほうが「多少,長い尺のものができるから。いろいろなことがやれる」と,ソニー・ミュージックエンタテインメントのデジタルネットワークグループSME Netowork企画制作課の天野明弘プロデューサーは説明する。

 逆にFOMAのほうは単なる動画だけではなく,「静止画コマ送り」「静止画+音声」といった見せ方も可能だ。「パラパラ系の静止画コマ送りは,放送系のコンテンツでは使い勝手がいいのではないか。工夫のしようがある」(天野氏)。

 ただしアーティスト情報やプロモーションムービーを提供するソニー・ミュージックが重要視するのは“ステレオかどうか”だ。「“音”という意味ではステレオでやりたい」(天野氏)

 iモーションでは携帯電話の通話にも使うAMRという音声コーデックを使うため,ステレオ楽曲は再生できない。一方のezmovieはステレオ。動画コンテンツの種類によってはステレオの意義は大きく,「どうしてもステレオにしたかった」とKDDIは説明する。

 またそれを意識してかどうか,端末のスピーカーもC5001Tのほうが優秀なようだ。同じようなコンテンツを再生してもC5001Tから流れる音のほうが美しい。

現状はezmovie対応端末の数が圧倒的

 コンテンツサービスで忘れてはいけないのは,プラットフォームの規模だ。首都圏および東海・関西のみでしか使えないFOMAはいまだ2万7000契約(1月10日の記事参照)。うちiモーションを再生できるN2002は半数以下と推測される。

 対してezmovie対応のC5001Tは当初から全国で利用可能。1万9800円(新規・都内量販店。ZDNet調べ)と低価格なのも手伝ってか,十数万台が稼働しているようだ。

 この数の違いがコンテンツに与える影響も小さくないだろう。ソニー・ミュージックの場合,今のところプロモーションおよびユーザーサービスが目的であり,「3キャリアに同じように,同じようなものを提供していく」(天野氏)という。だがコンテンツビジネスとして動画を提供する場合は数の違いを考えざるを得ないからだ。

 ただし,ドコモは今後登場するFOMA端末のほとんどをiモーションに対応させていく予定。KDDIは“動画対応端末はハイエンド”という位置づけだ。ezmovieの調子がいいことから,動画対応端末のラインアップを増強する可能性もあるが,今後の両者の数の争いがどうなるかは微妙だ。

“メモリ容量”という課題

 動画配信サービスを実際に利用してみて不満に思う点の1つは,端末内に保存できる動画が少ないことだ。N2002は約500Kバイト,C5001Tは約800Kバイトと,ほんの数本でいっぱいになってしまう。

 この解決策としては,端末なんらかのメモリカードのスロットを設け,メモリカードに動画を保存するというやり方がある。しかし「(コンテンツが)端末の外へ出ないということが,iモードがうまく立ち上がった理由の1つ」と天野氏が言う通り,著作権という微妙な問題を抱えている。

 著作権への配慮もiモーションとezmovieで異なる部分だ。ダウンロードした動画ファイルを「保存できる/保存できない」という設定しかできないiモーションと異なり,ezmovieでは「○回まで見られる/○日間見られる」など詳細な設定が可能。ソニー・ミュージックでもダウンロードした動画ファイルは「3回まで見られる」という設定になっている。

携帯の動画配信は花開くのか?

 新しい対応端末が出ず,FOMAへの対応も見送りになった動画配信サービス「M-stage visual」などに比べると,iモーションもezmovieもなかなか好調なスタートを切ったようだ。この流れは2002年はどうなるのだろうか。

 「昨年,駆け込みで動画サービスが始まった。本格的な展開は今年だが,特に大きな変動があるとは思えない」と天野氏は言う。「絵も音もメモリ容量も(現状の仕様はコンテンツ提供サイドから見て)満足できるものではない。これらが改善されたら,よりコンテンツを作る側の自由度が高まる」(天野氏)

 ただし,携帯への動画配信が着実に根付きつつあるのは確かだろう。「動画がどんどんきれいになることはあっても,後戻りはしない。(携帯で)ビジュアルに楽しむことが広がるのは間違いないと思う」(天野氏)

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関連リンク
▼ Soyn Music Online Japan

[斎藤健二,ITmedia]

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