ネットワーク時代はニーズに合わせたインフラの使い分けが重要──IBM竹村氏講演より

街には携帯電話があふれ,ホットスポットサービスもホテルやカフェなどを中心に増え始めている。日本IBMの竹村氏は,さまざまなネットワークの特徴を把握し,ニーズに合ったインフラを使い分けることがネットワーク社会に問われる資質であるという。

【国内記事】 2002年2月6日更新

 2月6日から8日まで開催されている日本印刷技術協会主催のイベント「PAGE 2002」のモバイルカンファレンスに,日本アイ・ビー・エム パーソナルシステム事業部の竹村譲氏が登壇,ワイヤレスLANやホットスポットの今後,それぞれのインフラを効率的に利用するための心得について語った。

“無免許”で使えるアクセスポイントが重要

 プロントやモスバーガーなどのファーストフード店舗やホテル,空港のラウンジなど,着々と広がりつつあるホットスポットサービスエリア (東京ホットスポット案内参照) 。サービスはどのような形で進化しようとしているのだろうか?

 竹村氏は,登録や申請の必要なく利用できること,インフラとしての料金は無料であること,を重要なポイントとして挙げる。その理念が活かされているのが,Mobileチャンネルでも話題になった秋葉原のブロードバンドカレー屋「東洋」だ (1月21日の記事11月15日の記事参照) 。ここは竹村氏行きつけの店で,今は「PHSや携帯電話の電波は届かないが,自分からは情報を発信できるシェルターになっている。守りも攻撃も万全だ」という貴重な場所だという。

 もともとは「社内無線LAN環境の便利さを,行きつけの店でも」という発想のもと,店長に話を持ちかけたという。「社内の無線LAN環境下では,ノートPCさえ持っていけば,会議中でも接客中でもワイヤレスで社内データやインターネットにアクセスできる。顧客が必要とするデータを遠隔操作でプリントアウトしたり,会議中,自分の出番以外の時に貯まったメールをこっそり処理したりもできる。こうしてパラレル処理を行うことで生産性が上がった。このような環境を行きつけの場所に作りたかった」

 IEEE802.11bのホットスポットは,あらかじめ申請や登録を必要としない「無免許で使える無線ワイヤレスアクセスポイントである」ことも重要だと竹村氏はいう (1月21日の記事参照) 。「各人が自宅に無線LANを導入することで,あちこちに (無免許で使える) 小さなホットスポットが増えていく。MITのNegroponte氏が『フリーアクセスポイント』として,無料で通りかかった人にアクセスを許可する目印を出そうという活動を始めようとしているなど,ホットスポットは面白い流れになってきている。もちろんセキュリティは万全にしておくことが前提」

 このような流れの中で,料金体系について竹村氏はどう考えているのだろうか? 「基本的にインターネットは無料という考え方が大前提。課金はコンテンツやサービスに対して行うことで,インフラは空気のような存在であることが望ましい。ブロードバンドカレー屋も,アクセスで収益を上げようとしているわけではなく,他店との差別化としてサービスしている。だから『日本のカレー屋全部がホットスポット化したら新しい策が必要だ』と店長にも話している」

携帯やPHSが無線LANにとって代わられることはない

 竹村氏は現在のネットワークを大きく分けて「携帯電話とPHS」「IEEE802.11b」「有線LAN」「Bluetooth」の4つに分けてそれぞれの特徴を説明。携帯電話とPHSは,エリアのカバー率は広いが速度は,現状,最高でも384Kbps。IEEE802.11bは,11Mbpsの高速通信が可能だが,利用するためにはアクセスポイントのエリア内にいなければならない。「有線LAN」は,100Mbpsから1Gbpsの高速通信を実現するが,線の届く範囲内に利用は限られる。Bluetoothはカバーエリアも狭く,速度も1Mbpsと低速だが消費電力が少なくて済む。

 これらのネットワークをうまく使いこなすには,自分にとって何が最重要なのかというプライオリティを把握することが大事だと竹村氏はいう。それぞれのネットワークは速度も異なれば,エリアの広さも,料金の体系も異なる。

 「文字情報がほしいだけなら携帯電話だけで十分だし,画像データやムービーデータがほしいなら有線LANを使えばいい。今では無線LANという選択肢もあり,ホットスポットに行けば外から大きなデータを受け取ることもできる。その時々で一番必要な情報が何か,最適な手段は何かが分かっていれば,仕事を効率化できる」

 最近では無線LANの急速な普及により,音声も無線LANの端末でやり取りしてしまおうという構想が語られることも多い。

 しかし,それぞれのネットワークの特性を理解し,適材適所で利用すれば,携帯電話やPHSが無線LANにとって代わられるというような誤解も解消されるのではないかと竹村氏は語った。

無線インフラがカルチャーや常識を変える

 利用者が固定電話から携帯電話にシフトすると,電波が入る範囲内ではどこからでも情報を得たりコミュニケーションをとることができるようになり,道徳感や常識,文化が変わっていくと竹村氏は話す。

 「固定電話では,自分以外の家族が電話に出る場合もあるが,携帯電話でそのようなことはない。個人と個人を結びつけたという意味で,携帯電話が果たした役割は大きい。時間や場所にしばられることなく連絡を取り合うことが可能となった今,いちいち事前に待ち合わせ場所を決めることは少なくなり,だいたいの場所と時間を決めておいて,具体的なことは着いてから連絡を取り合うというのが最近の風潮。このようなライフスタイルの変化を前進させる機動力になるのがモバイル機器だ」

 ネットワーク社会は人の行動や思想を変えてしまう影響力を持つ。変化する環境にどのように対応し,何を自分のライフスタイルに取り入れていくのかが重要になる。本当に必要なものや重要なことは何かを認識することがネットワーク時代に必要な素養なのかもしれない。

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[後藤祥子,ITmedia]

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