先の見えないFOMAの国際ローミング──立川社長基調講演NET&COM 2002でドコモの立川社長が基調講演を行い,今後モバイル通信のマーケットがどこにあるのかを分析した。その上でFOMAの多彩な可能性を語ったが,国際ローミングの開始に目処が立っていないということも明らかになった。
2月8日,千葉・幕張メッセで開催されているNET&COM 2002最終日の基調講演に,NTTドコモの立川敬二社長が登場。「モバイル・コミュニケーション革命 ーFOMAが切り拓く超高速ネットワーク新時代ー」と題した講演を行った。
21世紀,ドコモ発展のシナリオ先日のTCAの発表に見るとおり(2月7日の記事参照),国内の移動体通信契約者数は7000万を超え,そろそろ飽和しつつある。この状況を「新規需要は高まっていかない時代になってきた。これは(サービスの)母体ができあがってきたとも言える」と立川社長は形容する。 現状は「インフラとなる携帯電話ができあがり,そのサービスの1つであるiモードなどが順調に伸びている」というのが同社の認識だ。 では,21世紀のモバイルの発展方向はどこにあるのだろうか。立川氏は3つの軸を挙げる。 (1)モバイルコミュニケーションは,音声からノンボイスのデータ通信に移る (2)動くものすべてを対象とすればマーケットも拡大する (3)国内から海外へ展開する 現在でこそ,データ通信など非音声の割合は20%程度だが,2005年には50%を超えて音声を逆転。2010年には70〜80%に達するというのが立川氏の推測だ。 そうしてマーケットを拡大していくことで,モバイル通信機器の需要は2010年には5億7000万に達すると予想しているという。 その内訳は,人に1億2000万を見込み,自動車が1億,自転車が6000万と機械に通信機器が組み込まれることを想定。さらにテレビやデジタルカメラ,冷蔵庫などの家電機器にも1億8000万を想定している。また,小包や宅配便にも無線機を付けることで3000万の需要を予測する。「宅配物の数自体は3億ある。配達が終わったら通信機を回収するとして1年10回転。無線機の数としては3000万個が見込める」(立川氏)
先の見えないFOMAの国際ローミング立川氏は,昨年10月からサービスを開始したFOMAにも言及。映像の送受信も可能な高速データ通信によって,さまざまな新しいビジネスの可能性が開けることを,具体例を挙げて紹介した。 ただし,もう1つのFOMAの特徴である「国際ローミング」に関しては,トーンが変わってきた。「第3世代携帯電話の特徴は世界で標準化したということ」と話す一方で,「あいにく(ドコモのW-CDMAだけでなく)複数の規格が標準になってしまった。主要なものだけでも4つある(用語参照)。これからはそのうちのどれが世界的に普及するかの競争になっていく」と述べ,実質的には第3世代携帯電話でも方式の一本化は図れなかったという認識を示したからだ。 方式が統一されなければ,国際ローミングも実現できない。ドコモ自身はW-CDMA方式を世界中で普及させる意向を変えていないが,海外での第3世代携帯電話サービスの普及は一向に進まない。「相手が(W-CDMA方式でサービスを)始めてくれなければ国際ローミングは始められない」(立川氏) 「世界では,イギリス(のドコモ関連の通信オペレータ)が年内に(第3世代携帯電話サービスを)始めるか,と言っている。ほかには,まだ残念ながら計画をオープンにしているキャリアがない」(立川氏) 当初は「国際ローミングは2002年の春に実現を予定している」と説明されていたが,昨年10月にサービスを開始した直後には「5月から開催されるサッカーのワールドカップに間に合わなくて残念」と発言している(2001年9月の記事参照)。今回提示されたFOMAのロードマップでは,PDCとW-CDMAのデュアル端末よりも先,電子マネーを使ったモバイルECや位置情報サービスと並んで,国際ローミングの実現は時期の見えない先にまで遠のいてしまった。 ただし,国内でのFOMAのエリア展開は順調に進んでいる。「3月には人口カバー率60%になるように,かなり短期間で拡張していく。今年は(音楽や映像の配信サービスである)M-stageも始めようとしているし,映像メールも予定している」(立川氏) 世界的には,まだまだこれから,という状況の第3世代携帯電話だが,日本が世界の先を行っているのは確か。立川氏は第3世代携帯電話の可能性を改めて強調し,「第3世代携帯電話でのサービスはドコモだけが考えるのではない。むしろ利用者の方に考えてもらった方が普及する」と語った。 「日本は(欧米に)2年くらい先行している。(欧米でサービスが始まる)その間に日本が進んでおけば,グローバルにサービス展開できる」(立川氏)
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