TIの「OMAP」,NEC,松下,富士通が3G携帯に採用

国内でもTIのアプリケーションプロセッサ「OMAP」が第3世代携帯電話へ採用される。強力な汎用プロセッサではなく,DSPを組み込むことでマルチメディア処理性能を向上させたOMAPは,携帯電話搭載プロセッサのグローバルスタンダードを目指す。

【国内記事】 2002年3月18日更新

 米Texas Instruments(TI)は3月18日,同社のOMAPプロセッサがNEC,松下通信工業,富士通の第3世代携帯電話に採用されたと発表した。採用されたのはDSPをベースにした「OMAP1510」アプリケーションプロセッサで,第3世代携帯電話で動画再生やゲームなどマルチメディア処理を実行させるために利用される。

 TIによると既にソニー,Nokia,Ericsson,SendoなどがOMAP採用を表明しており,全世界の携帯電話市場におけるOMAPサポートは6割以上に達する。

 日本テキサス・インスツルメンツのワイヤレス・ターミナル・ビジネス・ユニットOMAPビジネスマーケティング担当の三根清主任によると,2002年の第3四半期にはOMAP1510の量産出荷が始まる予定だ。

リアルタイム処理に強いDSP

 OMAPプロセッサは,同社のDSP(Digital Signal Processor)「C55x」に,汎用プロセッサとしてARM9コア(2001年8月の記事参照)を組み合わせたもの。

 汎用プロセッサを高速化してすべての処理を行うよりも,機能分担を図ったほうがいいというのがTIの主張だ。特にMPEG-4などのリアルタイム・タスクについては,高速なRISCチップよりDSPを利用するOMAPのほうが「クロック面でも消費電力面でも有利だ」(三根氏)

 ただしDSP向けアプリケーション開発は,汎用プロセッサ向けより難度が高いのも事実。このためTIではOMAPのアプリ開発に対し「オープン化を進めている」(三根氏)という。

 TIでは,携帯電話のOSからOMAPにアクセスするための基本部分を提供しており,「例えばSymbian OSからDSPブリッジを通して,DSP機能を利用できるようになっている」(三根氏)。OMAPはSymbianのほか,Java,Windows Powered SmartPhone,Windows CE,DSP Linux(2001年11月の記事参照)など数多くのOSが対応している。

 「ただし,(今回採用を決定した)国内のメーカーは,これらのOSとは別のアプローチ」(三根氏)。各社は独自のOSでOMAP対応を図るもようだ。

ツインCPUに向かう各社第3世代携帯電話

 第3世代携帯電話では,通信部分のCPU(ベースバンド)とアプリケーション用のCPUを別個に搭載するのが一般的な流れになってきた。

 NECと松下は共同開発した基本アーキテクチャーとして2CPU方式を採用(2月28日の記事参照)。先日,第3世代携帯電話に関して提携した東芝と三菱電機も「当然,通信用とアプリケーションプロセッサは分ける」(東芝モバイルコミュニケーション社の溝口哲也社長)と話している(3月13日の記事参照)。

 ツインCPUを使う理由の1つは,開発の容易さだ。従来は通信用CPUの上でアプリケーションを動作させていたため,通信用CPUの機能拡張に伴ってアプリケーションも作り直す必要があることが多かった(1月18日の記事参照)。またアプリケーションの機能向上のために,ベースバンドチップを改良しなくてはならないという問題もある。「端末メーカーにとって,いったん動いたモデム(ベースバンドチップ)は触りたくないものだ」(三根氏)

 TIのOMAPは,通信用CPUとアプリケーション用CPUの両方に利用できる。今回採用されたOMAP1510はアプリケーション用だが,欧州向けにGSM/GPRSのベースバンドチップOMAP710も用意している。OMAP710はHPの「jornada 928 WDA」にも採用された。「日本のPDC向けにも,OMAP710に近いソリューションを開発中」(三根氏)

 将来的には,低コスト化が期待できる1チップソリューションも用意するが,開発が落ち着くまでは「3つくらいのセグメントで(各CPUを)提供するのがいいだろう」と三根氏は語る。


TIはアプリケーションプロセッサとベースバンドチップ(コミュニケーションエンジン)の両方に,OMAPコアを搭載する計画。どちらの分野でもDSPが威力を発揮すると考えている

PDAとの融合でIntelと勝負

 第3世代携帯電話のアプリケーションプロセッサの標準を狙う企業は数多い。PCに続き携帯電話市場を狙うIntelもその1つ。IntelはXScaleコアを使った「PXA150」というアプリケーションプロセッサを先日発表している(2月12日の記事参照)。

 XScaleでは汎用CPUのクロックを上げてさまざまな処理をさせようとしているが,OMAPではTIが得意とするDSP処理を前面に押し出している。「高クロックも1つのソリューションだが,機能を分担してクロックを下げ消費電力を下げるのもソリューションだ」(三根氏)

 両製品共に動画再生などのマルチメディア処理では十分な性能を発揮するが,今回各端末メーカーが選んだのはOMAP。「OMAPが選ばれたのはグローバルストラテジー。開発負担を減らすために海外で実績の高いOMAPを選んだのではないか」(三根氏)

 ただし,端末メーカー各社はOMAPだけをアプリケーションプロセッサとして採用した,というわけではない。「採用CPUをアナウンスしたのは初めてだが,OMAPだけを使うということではない」(松下通信工業)

 今後PDAと携帯電話が融合していく中では,XScaleとOMAPは競合せざるを得なくなる。PDAではPocket PCを中心にデファクトスタンダードはIntelのStrongARMとXScaleだ。Palm OS 5にはIntelもTIもCPUベンダーとして名乗りを挙げている。「jornadaへのOMAPの採用によって,Intelの牙城の一角を崩した。次に期待したいのはPalm」(三根氏)

 携帯電話に強いTIとPDAに強いIntel。両者は共に将来的にはPDAと携帯が融合したジャンルが登場すると見ている。「PDAと融合したところでは,Intelと勝負になる」(三根氏)

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関連リンク
▼ 日本テキサス・インスツルメンツ

[斎藤健二,ITmedia]

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