キャリアとコンテンツを切り離す時期がきた?

通信キャリアが端末もコンテンツも握っていることで,成功を収めた日本の携帯電話ビジネス。だが,それもそろそろ変化が必要なのかもしれない。

【国内記事】 2002年3月26日更新

 日本で携帯電話のビジネスが成功した背景には,通信キャリアがインフラ,端末,コンテンツを一手に握る垂直統合型のビジネスモデルを展開してきたことによるところが大きい(7月18日の記事参照)。端末のインセンティブ(3月18日の記事参照),コンテンツの課金システムなどは,この垂直統合があってこそ実現したもの。通信キャリアの庇護の元,端末開発やコンテンツ開発を行えるため,事業に参入しやすいというメリットがあった。

 しかし,市場がすでに育った現在,2.5G,3Gといった携帯技術の進化に対応し,携帯ビジネスが海外に展開していく際にも,このビジネスモデルは有効なのだろうか。3月26日に開催された「国際市場をにらむモバイルビジネスの行方」(主催・日刊工業新聞社)と題するフォーラムのパネルディスカッションでも,そのことが議論の大きなテーマの1つになった。

世界を狙うためには,オープンな競争が必要?

 「善し悪しは別として」と前置きした上で,このテーマについて問いかけを発したのは,日本通信の上席執行役員兼CTO,中井純氏だ。「垂直統合に基づいたビジネスモデルではなく,キャリアに縛られることなくコンテンツを発信できる水平分離の仕組みが必要になっているのではないか」


日本通信上席執行役員兼CTO,中井純氏

 同氏が現状の問題点として指摘したのは,日本では,2.5世代,第3世代とネットワークは世界に先駆けた進化を遂げているにも関わらず,それに見合った形でコンテンツプロバイダが利益を上げていないことだ。「日本はネットワーク層の進化は進んでいるが,コンテンツがネットワークの下に吸い取られている気がする」(中井氏)

 欧米と比較して,確かに日本のコンテンツビジネスは発展したが,ユーザーがコンテンツを取得する際のパケット代や通信料がコンテンツプロバイダに配分されるわけではない。

 「モバイルがブロードバンド化したときに大事なのはコンテンツ。これまでの垂直統合型のモデルを2.5G,3Gで続けることは,日本のモバイルビジネスの発展を鈍らせる可能性もある。例えばiモードに参画するコンテンツプロバイダの中で,黒字の会社はどれぐらいあるのだろう」(中井氏)

 一方,垂直モデルの良さを一定評価したのは,海外展開も果たしているコンテンツプロバイダ,インデックス代表取締役副社長の小川善美氏だ。「パケット料金や通信料を配分してもらえたらとも思うが,課金システムがあるだけでもありがたい。それがないと,インターネットのWebビジネスと同じことをしなければならなかった」


インデックス代表取締役副社長小川善美氏

 携帯ビジネスの立ち上げ時に,通信キャリアによって仕様の統一や課金の仕組みなどが進められた。それが参入を容易にしたことを評価したいというわけだ。

 技術の進歩が速い携帯電話業界で,水平分離モデルを構築するのは,確かに難しい面もある。実際,海外の携帯ビジネスは立ち上げ時に水平分離モデルを採用したが,日本ほどの発展を遂げられずにいる。新しい技術やサービスを導入する際に旗振り役が不在では,メーカーやコンテンツプロバイダの足並みが揃いにくく,サービスインが遅れるという弊害もある。

 ただ,その同氏も,携帯ビジネスの海外展開が見えてきており,水平分離への移行の可能性を探る時期にきているという点では,中井氏とその意見を一にしていた。市場が育った日本では,自由な競争によって利益を得られる水平分離というモデルへの移行が,そろそろ真剣に論じられる時が来ているのかもしれない。

関連記事
▼ iモードのオープン化を巡る議論

[後藤祥子,ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!