ライセンシーとともにPalmは成長する──PalmSouce CEO，David Nagel氏に聞く

この1年はPalmにとって勝負の年。台頭するPocket PCに対してPalm OSならではの優位点をアピールすることで，トップシェアを守ることが大命題となる。Palm Source CEO，David Nagel氏は，ライセンシーとの協力で乗り切る構えだ。

【国内記事】

2002年3月28日更新

　PalmSource Japan Forum開催に合わせて来日したPalm Source CEOのDavid Nagel氏。変動の激しいモバイル市場でトップのシェアを維持するために，どのようなビジョンで望もうとしているのかを聞いた。

PalmSource CEO，David Nagel氏。m505やHandspringのTreoを始め，京セラ製，サムソン製，ソニー製などのPalmデバイスを利用しているという

Palm OS 5.0でのマルチタスク・スレッドなど機能拡張の実現が順次に

　Palm OS 5.0は，近年の通信・ネットワークに対する要望に対応すべく，新たにARMプロセッサを採用し，OSのシステムレベルで大幅な改良が施された次世代のOSである。

　OSレベルでARMネイティブコードに対応し，最大320×320ピクセルの解像度，高度なセキュリティ，マルチタスク・スレッドなどもサポート。法人ユースでの通信・ネットワークにも対応できる大幅な強化がシステムレベルで施されている。

　アプリケーション面では現在のPalm OS 4.xベースである68000コードを採用することで互換性を保ち，次期OS6までの段階的なARMシステムへの移行を図っている。

　通信・ネットワーク環境を活用する上では，複数のタスクを管理し安定した実行環境を実現するマルチタスク・スレッド環境は重要な機能となるが，実際のサポート スケジュールは，初期リリースの後ということになるようだ。

　Nagel氏によれば，Palm OS 5.0は，今年の初夏に予定されているリリースでARMプロセッサへの対応が行われ，その後のリリースで開発者および，ライセンシーがマルチタスク・スレッドを利用できる環境が提供されるという。

　Palm Sourceでは，OS 5.0からOS 6にかけて，拡張機能などの新機能の実装を修正パッチで提供することにより，対応を早めていく計画。セキュリティの改善，マルチメディア，ネットワーク，パフォーマンスの向上などに迅速に対応できる体制をとっていく。こうした体制は，ARM対応を実質6カ月前倒したことなどで，既に実行に移されている。また，Nagel氏は，現時点では公表できないが「ユーザーがびっくりするような仕様も用意している」と語った。

　マルチタスクは，今後の通信ネットワークをサポートする端末には避けて通れない機能であるだけでなく，Palm OS自体のシステムが安定するためにも重要な仕様だ。「Palm Sourceはこうした拡張機能に対し，積極的なサポートを行う用意があり，実際に準備している」（Nagel氏）。これは，PalmがOS部門を子会社化した大きな成果ともいえる。

Palmの強みは，PDAであること

　ARM対応で高機能化を図るPalmにとって，気になる存在がMicrosoftのPocket PCだ。

　ネットワーク環境ではPalm OS 5.0以上と言われるPocket PCだが，Nagel氏はこの点に関するPalm OSの優位性について，スマートフォン市場という新しい市場を例に挙げて説明した。

　「全く新しい市場であるスマートフォン市場において，Palm OSは製品に既に採用されているが，Pocket PCは未だに製品が登場していない。現在あるものをダウンサイジングするのではなく，ゼロから作り上げられる柔軟性がPalmにはある」（Nagel氏）。

　Nagel氏はさらに，通信環境の標準であるARMプロセッサを採用したことにより，新たなメーカーとの交渉が可能なポジションを手に入れたとし，今後のスマートフォン市場での展開も拡大できるようになったと述べた。

　また，Nagel氏は携帯電話とPDAのありかたについての見解も披露した。「小型化が進む携帯電話は多機能をサポートすることが困難になってくる。そうした状況下では，携帯電話と強力なPDAを接続して通信するといった利用法も想定できる。そのときに，Palm OSの優位性も生まれてくる」（Nagel氏）

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[庄司恒雄，ITmedia]

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