Mobile&Movie 第10回:
こころの湯「2〜3日したら帰る」

映画の中の名脇役として登場する“モバイル製品”をご紹介する「Mobile&Movie」。第10回は,携帯電話が急速に普及し始めている中国を舞台にした「こころの湯」。まだ携帯が珍しい地域を舞台にした心温まる人間ドラマ。

【国内記事】 2002年4月19日更新

作品名こころの湯 (SHOWER)
監督チャン・ヤン
制作年・製作国1999年中国作品


 携帯電話の加入者数では既に日本を上回っている中国ですが,人口の比率から見るとまだ1割程度です(4月9日の記事参照)。刻一刻と近代化が進んでいる北京の下町が,この映画の舞台になります。

 昔ながらの銭湯を営むリュウのもとに,南方で働く長男ターミンが突然帰ってきます。次男アミンが出したハガキを見て,父リュウが倒れたのではないかと心配して戻ってきたのです。元気に銭湯で働く姿を見て安心したものの,久しぶりの帰省でターミンは妻に

「2〜3日したら帰る」

と携帯電話で連絡します。携帯電話が珍しいアミンは,

「もしもし,アミンです」

と電話をかける真似をしてみせます。

 知的障害のあるアミンは銭湯の仕事を手伝いながらリュウと仲よく暮らしていました。

 そんなリュウとアミンに何となくなじめないでいるターミン。銭湯で大きいお風呂に入って疲れを癒すようリュウに勧められても,いつもの習慣通りシャワーだけで済ませてしまいます。

 ターミンはリュウの無事を知ってすぐに帰るつもりでいましたが,リュウが風邪をひいてしまい,代わりに仕事を手伝うようになります。アミンや銭湯にやってくる人々と心を通わせていくうちに,ターミンは居心地よく感じられるようになってきます。

 いつも同じ場所でコオロギ相撲をする老人たち。シャワーを浴びながら『オーソレミオ』を歌う青年,その歌を楽しそうに聞いているアミン。ケンカばかりしている夫婦,間をとりもつリュウ。

「うん,もうすぐ帰る」

 ターミンは,電話するたびに街へ戻る日を先延ばしにしていました。

 そんなある日,地域再開発工事のため,もうすぐこの銭湯が取り壊されることを知ります。銭湯があるうちは,リュウ,アミンとこの場所で過ごしたいと思うターミン。

 初めて3人でお風呂に入り,リュウの背中を流そうとすると,部屋の向こうで携帯電話の呼び出し音が。

「2〜3日したら帰る」

 と,また妻に話して銭湯に戻ったとき,3人の幸せな日々は過去のものになってしまったのです。

 ターミンの母親は1年に1度しかお風呂に入れない内陸の出身だったとリュウは話しました。銭湯に集う人々に満足して帰ってもらうことが,自分の何よりの幸せだと伝えたかったのでしょう。

 ターミンのようにシャワーだけですます人が増えて,ゆっくりと湯船につかることのありがたさも最近では薄れがちです。日本でも銭湯は年々減ってきていますが,この作品を見ると銭湯のあの大きいお風呂が恋しくなります。

 チャン・ヤン監督はこの『こころの湯』で“こころの洗濯”をしてもらいたいと言っていました。白い湯気に包まれて,心が芯まで暖かくなるような,そんな映画です。

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[本田亜友子,ITmedia]

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